「年金14万円」の伯母が“賃貸の入居審査”に落ちたと聞き衝撃!「家賃6万円」でも“高齢者”だと借りられない? 65歳以上の“入居拒否リスク”と対策を解説
本記事では、65歳以上が賃貸契約で直面するリスクと、スムーズに入居するための対策について解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
高齢者が賃貸契約を断られる主な理由と大家が抱く不安
資金に余裕があっても、高齢者が賃貸物件を借りにくい状況は実際に存在します。大家や管理会社が二の足をふむ背景には、高齢者特有のリスクへの懸念があります。
貸主がもっとも懸念するのは、居室内での孤独死です。単身の高齢者が居室内で亡くなると、次の入居者が決まりにくい「事故物件」として扱われるおそれがあり、経営的な打撃にもつながりかねないと考える心理が働きます。
国土交通省の資料によると、大家が単身高齢者の入居を拒む理由としては、「家賃の滞納」以上に「居室内での死亡事故などへの不安」が、高い割合を占めている現状があります。さらに、連帯保証人の確保も大きな課題です。
賃貸契約では一般的に連帯保証人が求められますが、本人が高齢であれば兄弟姉妹などの親族も同年代である場合が多く、保証人として認められないことも少なくありません。保証会社を利用するという手もありますが、高齢者の場合は緊急連絡先が必須となるなど、利用条件が厳しく設定されているのが一般的です。
「年金14万円で家賃6万円」は審査において厳しいのが現実
「年金が14万円あり、家賃が6万円なら支払い能力は十分だ」と考えるかもしれませんが、それは早計かもしれません。一般的な入居審査では、家賃は「月収の3分の1以下」が目安とされています。
月収14万円に対して家賃6万円は、収入の約43%にあたります。現役世代であれば将来的な昇給やボーナスが見込めますが、年金生活者は収入が増える見込みがほとんどありません。むしろ、年齢とともに医療費や介護費用が増加し、生活費を圧迫する可能性もあります。
年金が14万円あったとしても、その他に収入や資産がない場合、家賃を引いた残りの8万円で食費、光熱費、通信費、医療費、交際費などをまかなわなければなりません。突発的な出費に対応できる余裕は少ないと言えるでしょう。貸主側は現在の収支だけでなく、こういった将来的に支払い能力を維持できるかという点も厳しくチェックするのです。
毎月の年金収入だけで審査に通るのが難しい場合、預貯金の残高証明を求められるときがあります。十分な備えがあれば家賃滞納のリスクが低いとみなされ、審査にプラスへ働くからです。
ただし、どれだけ資産があっても、健康リスクや保証人の問題が解決されなければ、入居を断られる可能性は残ります。お金があるから大丈夫、と過信せずシビアな現実を理解しておく必要があるでしょう。
入居審査を通過して希望の住まいを確保するための具体策
高齢者がスムーズに賃貸物件を借りるためには、リスクをカバーする対策や高齢者を受け入れている物件を選ぶ工夫が必要です。
独立行政法人都市再生機構が管理する「UR賃貸住宅」は、高齢者にとって借りやすい選択肢と言えます。礼金や仲介手数料、更新料が不要であるほか、保証人も原則不要です。一定の貯蓄があれば収入要件の特例を利用できる制度も整っています。
また、バリアフリー化された物件が多いことや高齢者相談窓口に相談できることなど、高齢者が安心して暮らせる環境が整備されているのが特徴です。
また、公的な支援を活用するのも有効でしょう。国は、高齢者や障がい者など住宅の確保が難しい人を対象とした「住宅セーフティネット制度」を推進しています。
この制度に登録された「セーフティネット住宅」は、一定の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅です。貸主側も最初から高齢の入居者を前提としているため、審査における年齢のハードルは低いでしょう。
民間の賃貸住宅を希望する場合は、貸主の不安を解消する材料を提示するのが効果的です。
例えば、警備会社や自治体が提供する「見守りサービス」への加入を、入居の条件とする形で交渉する方法があります。一定時間室内のセンサーに反応がない場合や電気の使用状態に変化がない場合に安否確認を行うサービスです。
万が一の事態に早期対応できる体制を整える姿勢を示せば貸主の安心感につながり、入居を許可される可能性が高まります。
早めの情報収集と対策で老後の住まいの不安を解消する
高齢者の賃貸契約が、現役世代に比べてハードルが高いのは事実です。十分な年金収入があっても、健康リスクや保証人の有無で審査に落ちるケースは珍しくありません。しかし、UR賃貸住宅やセーフティネット住宅など、高齢者を受け入れる仕組みは確実に整いつつあります。
今の住まいに不便を感じている場合や将来的に住み替えを検討している場合は、元気なうちから情報収集を始めるのが良いでしょう。あらかじめ選択肢を知っておく方が、いざというときにあわてずに希望に合った住まいを見つけやすくなります。
出典
国土交通省 住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討状況について
UR賃貸住宅 高齢者向け賃貸住宅
執筆者 : 山口克雄
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
