夫婦2人の老後生活に最低限必要な生活費は月額「約24万円」。年金だけでカバーできる人の割合はどれくらい? ゆとりある老後生活にはいくら必要?
公益財団法人生命保険文化センターの2025年度の調査では、夫婦2人で老後に必要と考える最低限の生活費は月額約24万円とされています。一方で、公的年金をどの程度受け取れるかは家庭によって大きく異なり、年金収入のみに依存する世帯も少なくありません。
本記事では、最新の調査データをもとに、老後に必要な生活費と年金だけでの生活の実態、さらに「ゆとりある老後」にはどの程度の費用が求められるのかを整理します。
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目次
老後に必要な最低生活費――夫婦2人で「月額23.9万円」
公益財団法人生命保険文化センターが公表した「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査≪速報版≫」によれば、夫婦2人が老後生活を送る上で必要と考える最低限の日常生活費は、平均で月額23.9万円となっています。
もっとも、この金額はあくまで「必要最低限」であり、旅行、趣味、交際費などを含む“ゆとり”を求めれば水準はさらに上がります。後述のとおり、同調査では「ゆとりある老後生活費」は平均で月額39.1万円と示されており、最低生活費との差は15万円以上に広がります。
標準的な夫婦の年金額――令和7年度のモデルケースでは月額「23万2784円」
日本年金機構が公表している令和7年度の年金額の例によれば、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な厚生年金の支給額は月額23万2784円とされています。
この金額は、あくまで「平均的な収入で40年間就労した場合に受け取り始める老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額)」のモデルケースであり、すべての世帯がこの金額を受け取れるわけではありません。
前述の最低生活費の平均「月額23.9万円」に対して、標準的な年金額「月23.3万円」はほぼ同水準となります。つまり、平均的なケースでは「年金だけで最低限の生活費はほぼカバーできる」計算になりますが、医療費や突発的支出などを考えれば、年金収入のみで十分かどうかは各世帯の状況によって変わります。
年金だけで生活する世帯の割合――約4割が“公的年金のみ”で暮らしている
厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査」によれば、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、「総所得に占める公的年金・恩給の割合が100%」の世帯は43.4%を占めています。
つまり、約4割の高齢者世帯は年金以外に所得がなく、年金だけで生活していることになります。裏を返せば、残りの6割近くは、就労収入や資産所得など、年金以外の収入源を組み合わせて生活を維持しているということです。
このデータは、老後の家計が年金だけでは必ずしも安定しないことを示しており、最低限の生活費が年金でカバーできる水準であっても、実際には追加の収入や預貯金が不可欠である世帯が多い現状がうかがえます。
ゆとりある老後生活にはいくら必要?――平均「月額39.1万円」
公益財団法人生命保険文化センターの同調査では、夫婦2人が「ゆとりある老後生活」を送るために必要と考える金額は平均で月額39.1万円とされています。
この金額には旅行・趣味などを楽しむ費用や交際費なども含まれており、単に生活を維持するだけではなく、老後を積極的に楽しむための支出が含まれています。最低生活費23.9万円との差は15万円以上であり、標準的な金額の公的年金だけでは到底カバーできない水準といえます。
標準的な年金額がおよそ23.3万円であることを踏まえると、ゆとりある老後生活には毎月15万円以上を貯蓄などから補う必要があります。20年間の老後を想定すると、単純計算で3600万円以上が必要となり、老後資金の準備が重要である理由がよく分かります。
まとめ
最新の調査では、夫婦2人の最低生活費は月額23.9万円とされ、標準的な年金額23.3万円とほぼ一致します。しかし、実際には多くの高齢者世帯が年金以外の収入に頼っており、年金だけで生活している世帯は約4割にとどまっています。
また、ゆとりある老後生活費は月額39.1万円と、年金額との差が大きく、老後資金の準備状況によって生活の質が変わりやすい点も特徴です。年金だけでは不足する可能性を前提に、資産形成や家計管理を早めに検討しておくことが安心につながるでしょう。
出典
公益財団法人生命保険文化センター 2025(令和7)年度 生活保障に関する調査≪速報版≫第III章 老後保障 2.老後生活に対する意識 (2)老後の最低日常生活費(53ページ)、(5)ゆとりある老後生活費(56ページ)
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
厚生労働省 2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況 結果の概要 II 各種世帯の所得等の状況 4 所得の種類別の状況(11ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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