60代の夫が「退職金でカフェを始めたい」と言っています。開業資金に「500万円」は必要でしょうか? シニア起業の平均資金を解説!
ただし、退職金を使って始める場合は慎重な判断が必要です。趣味の延長で始めたつもりでも、家賃や仕入れ、人件費などの支払いは毎月発生します。この記事では、開業資金500万円でカフェを始められるのか、シニア起業の平均資金とあわせて解説します。
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シニア起業でも開業資金500万円は少なすぎるとは限らない
日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査によると、開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円です。平均値とは全体をならした金額で、中央値とは金額順に並べたときに真ん中にくる金額です。大きな金額で開業する人がいると平均値は高くなりやすいため、実感に近い目安としては中央値も参考になります。
同調査では、開業費用が250万円未満の人が20.1%、250万〜500万円未満の人が21.7%です。つまり、500万円未満で開業している人も4割以上います。この点だけを見ると、500万円は決して非常識な金額ではありません。
ただし、これはすべての業種を含んだ数字です。自宅でできる仕事や、設備が少ない仕事なら少額で始めやすい一方、カフェのような店舗型ビジネスは費用がかかりやすくなります。物件を借り、内装を整え、厨房機器をそろえ、営業許可を取る必要があるからです。
そのため、「シニア起業全体では500万円でも可能性があるが、カフェでは工夫が必要」と考えるのが現実的です。
カフェ開業では物件と内装で資金が大きく変わる
カフェの開業資金は、どのような店を出すかで大きく変わります。駅前の路面店を借りて、内装も一から作る場合は、500万円では足りない可能性があります。家賃の保証金、敷金、礼金、内装工事、厨房設備、テーブルや椅子、レジ、食器、看板、広告費などが必要になるためです。
カフェ開業支援を行う事業者の情報では、小規模なカフェでも総額500万〜1000万円程度が目安とされています。厨房設備だけで数百万円かかることもあり、さらに開業後すぐに黒字になるとは限らないため、数ヶ月分の運転資金も必要です。運転資金とは、家賃や仕入れ、人件費、水道光熱費など、店を続けるためのお金です。
500万円で始めたいなら、初期費用を抑える工夫が欠かせません。たとえば、前の店の内装や設備を使える居抜き物件を選ぶ、自宅の一部を活用する、席数を少なくする、メニューをしぼる、最初は一人で運営するなどです。
特に、軽食や焼き菓子まで広げると、設備や仕入れが増えやすくなります。最初はコーヒーと数種類のメニューにしぼるほうが、資金管理はしやすくなります。
退職金を全額使う開業は老後資金の不安につながる
60代で起業する場合、最も注意したいのは退職金を使い切ってしまうことです。若い世代なら失敗しても再就職や長期の返済で立て直す時間がありますが、60代では収入を回復する選択肢が限られやすくなります。カフェがうまくいかなかったときに、生活費や医療費に使うお金まで減ってしまうと、老後の安心に影響します。
そのため、500万円が用意できるとしても、全額を開業資金に使うのは避けたほうが無難です。まずは、生活費の1〜2年分、医療費や家の修繕費などを別に確保しましょう。そのうえで、失っても生活が崩れない範囲を開業資金にする考え方が大切です。
また、借入を使う場合も慎重に考える必要があります。日本政策金融公庫には、女性、35歳未満、55歳以上などを対象にした起業支援の融資制度があります。60代の旦那さまも対象になり得ますが、借りられることと返せることは別です。売上が思うように伸びない時期でも返済は続くため、月々いくらなら無理なく返せるかを事前に計算しましょう。
まとめ
シニア起業全体で見ると、開業費用の中央値は600万円で、500万円未満で開業する人も少なくありません。そのため、500万円という金額自体は、起業資金として極端に少ないわけではありません。ただし、カフェは店舗や設備にお金がかかるため、一般的な店舗を借りて本格的に始めるなら不足する可能性があります。
退職金でカフェを始めるなら、最初から大きな店を構えるより、小さく始めることをおすすめします。居抜き物件を探す、自宅や週末営業から始める、イベント出店や間借りカフェで試すなど、失敗したときの損失を抑える方法があります。実際にお客さんが来るか、無理なく続けられるかを確認してから本格的な店舗に進むほうが安心です。
家族としては、夢を否定するのではなく、事業計画を一緒に確認する姿勢が大切です。開業費、毎月の固定費、必要な売上、赤字になった場合の対応を紙に書き出してみましょう。
500万円を使う価値があるかどうかは、金額だけでなく、老後資金を守りながら続けられる計画になっているかで判断する必要があります。無理のない規模で始めれば、カフェ起業は退職後のやりがいや地域とのつながりを生む前向きな選択肢になります。
出典
日本政策金融公庫 総合研究所 2025年度新規開業実態調査
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
