コロナ禍で苦悩が続く介護事業者。現場の厳しい現実とは

配信日: 2020.08.15

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コロナ禍で苦悩が続く介護事業者。現場の厳しい現実とは
高齢者のデイサービスや訪問介護を担う介護事業者が、新型コロナ危機が続くなか、利用者の手控えや介護ヘルパーの不足に悩まされ、苦境に立たされています。
 
常にコロナウイルスからの感染リスクに直面しているため、介護現場からは悲痛な叫びが聞こえてきます。適正な価格で介護サービスを受けたいときに、受けられなくなるかもしれません。
黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

デイサービスや訪問介護への不安感

デイサービスや訪問介護の現場は、コロナ危機が発生以降、苦しい事態に見舞われています。新型コロナは、特に高齢者が感染すると重症化しやすく、時には死にいたることもあります。そのためこれらの事業所では、職員の感染防止に万全を期しながら、介護サービスの提供を懸命に進めています。
 
しかしデイサービスの場合、ある程度の人数が集まり密になるため、感染することを恐れ、通所を躊躇する高齢者が増えています。
 
また訪問介護の現場では、介護ヘルパーとの直接接触することに対する不安から、訪問介護を断る高齢者も多くなっています。こうした不安感をもつ高齢者の行動が、介護サービスの提供機会を減少させています。
 
訪問介護の事業所職員や介護ヘルパーなどに、もし1人でも新型コロナの陽性者が出たりすれば、休業を余儀なくされます。介護ヘルパーが在宅介護に出向く家庭に、濃厚接触者として自宅待機をしている家族がいれば大変です。
 
また在宅勤務が増えたために、ヘルパーの派遣依頼をキャンセルし、家族介護を選択する家庭もあります。
 
介護ヘルパーの側でも、訪問先での感染リスクを恐れ、勤務日数を減らす人や、全面的に休業する人もおり、ヘルパー不足が起こっています。そのため、確保できた限られた人員で、勤務時間を短縮して乗り切ろうとする事業者の努力が続きます。

サービス機会が減れば経営に影響

こうした事業者では、提供するサービス機会が減少すると、すぐに経営にも影響します。
 
老人ホームなど入居が前提の施設介護の場合は、入居者が減少しない限り、すぐに経営への影響はありませんが、デイサービスや訪問介護を中心に提供している事業者は、サービスを受ける利用者の減少が経営を大きく圧迫します。
 
このタイプの事業者は、これまでも介護報酬の面で切り詰められてきており、ある程度の利用者の確保が事業継続の不可欠な条件となります。
 
これまで比較的低コストで開業ができたため、デイサービスや訪問介護の事業者数は、増加傾向にありました。そのため介護サービスを受ける利用者の減少は、大きな打撃です。こうした苦境に立たされたなかで、感染予防対策の徹底と、ヘルパーの確保などを進める必要に迫られているのです。
 
特に訪問介護の現場では、ヘルパーの確保ができないために、事業の継続が困難となり、廃業に追い込まれるところも増えてきそうです。高齢者の介護サービスを支えてきた1つの柱が、危機に見舞われていることは間違いありません。

在宅が長いと高齢者の病状悪化も

介護施設の利用を控えている高齢者には、別の問題も起こります。新型コロナへの感染を恐れるあまり、デイサービスには出かけない、ヘルパーの訪問看護も断る、といった行動の結果、人との接触機会が減り、長時間自宅に引きこもることが多くなります。
 
すると、持病が悪化する、うつなど不安定な精神状態になる、軽かった認知症が重症化する、といった新たな問題が出てきます。
 
特に何らかの持病をもった高齢者は、感染リスクを極度に警戒する傾向が強く、外出の機会も極端に減ります。すると健康状態が悪化しやすくなり、家族による介護では限界が見えてきます。
 
もし在宅介護の限界を超えると、病院への入院が必要になり、医療費も増えます。新型コロナにも対応している病院も多いため、コロナへの感染不安が増す、病状によっては期待する医療行為が受けられない、といった困った事態も出てきます。
 
高度の医療行為を受けなくても済むときは、多少のコストがかかっても、老人ホームなどの施設入居を検討することをお勧めします。

施設介護の現場でも厳しい現実が

老人ホームなどの施設介護の現場でも課題はあります。最大の課題は、新型コロナへ向けた感染症対策の徹底です。職員の感染は即入居者の感染につながります。職員の健康管理、施設内へ入る際の体温チェックはもとより、入居者の感染も絶対に防がなければなりません。
 
不幸にして感染者が出るとクラスターが発生し、周囲の多くの入居者に感染する危険があります。感染者を病院に入院させるだけでなく、未感染の入居者の安全を守るための方法も考えなくてはなりません。
 
多くの老人ホームでは、感染症対策の一環として、入居者の家族との面会を禁止してきました。感染を防ぐという面では、非常に効果がありましたが、このことにより、認知症の症状がある入居者の病状が悪化するなどが起こるようになりました。
 
家族に会うことができない理由を理解できないまま、不安感・焦燥感だけが増幅してしまうのです。そのため、転倒事故を起こしけがをするなど、別のリスクが生まれています。
 
デイサービスや訪問看護の事業者のような事態とはなっていませんが、最大の注意を払い、入居者の健康面の観察を注意深く進める必要があります。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。


 

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