更新日: 2020.08.23 セカンドライフ
忘れがちなデジタル終活。大事なID・パスワード管理はどうすればいい?
そんな背景もあり、「デジタル資産」や「デジタル終活」という言葉がときどき話題となっています。
ここでは、デジタル資産を持った人の終活、デジタル終活とID・パスワード管理について学んでみましょう。
ファイナンシャルプランナー CFP
家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。
デジタル資産の分類
まず、「デジタル資産」とはどういったものを指すのかというと、一つは経済的価値のあるプラスのデジタル資産、もう一つは支払い義務のあるマイナスのデジタル資産(デジタル負債)に2分類されるのではないでしょうか。
例えば、図表1のようなものになります。
【図表1】
(筆者が作成)
プラスとマイナスのデジタル資産について代表的な例を挙げましたが、これ以外にもプラス資産・マイナス資産ともに、さまざまなものがあると考えられます。
また、ここには含めませんでしたが、無価値のデジタル資産(放置されることになるFacebookやLineなどのアカウント)も、終活時には考慮を要するものの一つでしょう。
所有者亡き後のデジタル資産
それでは、もし所有者が亡くなったら、デジタル資産はどうなるのでしょうか。
通常の銀行預金や証券会社の口座を開設した人が、ネット取引を併用している場合は、その銀行などの店舗に行くと、所有者が死去した場合でも継承や解約の手続きは可能となります。
一方、ネット銀行やネット証券などの場合は、リアルの支店がないことと、本社などは近くにはないことが普通ですから、所有者が死去した後では継承や解約の手続きは相当難しくなることが想定されます。
ただ、ネット預金やネット証券の有価証券などの口座に、実際の残高がある場合は、口座アカウント(ID)とパスワードが分かれば、手続きに時間を要しても、相続する人に戻ることは間違いありません。
このとき、口座のIDとパスワードが分かることが決定的に重要です。
一方で、マイナスのデジタル資産(デジタル負債)の場合、請求書が相続人などに届かず、ネット上で決済されることも多く、金額はそれほど大きくないかもしれませんが、さらに面倒といえるでしょう。
図表1に記載したようなものが挙げられますが、本人の死亡後、引き落とし口座が凍結された場合は、支払いはストップしますが、支払い義務は残ります。
従って、実際の残高のある資産同様に、タイムリーな継承や解約の手続きが必要となります。残された家族が困らないためにも、デジタル資産を所有する人には「デジタル終活」が必要といえるでしょう。
デジタル資産の日常管理で絶対しなければならないこと
万一のときに限らず、日常のネット活用の際に、ID・パスワードの保存漏れや変更手続きで困った経験のある人は多いと思われます。
これからもデジタル資産は増えて行くことが想定されますが、デジタル資産の日常管理で絶対にしなければならないことを挙げてみましょう。
経産省所管の独立行政法人、情報処理推進機構(IPA)が、IDとパスワードの適切な管理について、ここ数年来啓蒙をしています(※2)。
その中で、パスワードの保存の強化について触れられていますので、大切と思われる項目を挙げてみます。以下の4つです。
1)適切に保管する。記憶するのが大変なパスワードの場合は、紙にメモしても良いが、IDとパスワードは別々の紙にメモするなどした方が良い。
2)使用できる文字種(大小英文字、数字、記号)全てを組み合わせ、8文字以上にする。
3)ネットカフェなどのパソコンでは、インターネットサービスにログインしないようする。
4)パスワードの使い回しをしない。
2)以降はいずれも、新規にパスワードを設定される際に要求されることですが、最初の「メモにする」のところが、管理という点においては最も大切なポイントではないでしょうか。
日常のID・パスワード管理とデジタル終活
毎日のパソコン・ネット活用をスムーズにするために必要なのは、ID・パスワードの適切な保管に尽きるのではないでしょうか。
適切にIDとパスワードを保管しておくことは、日常のネット利用の場面に限らず、利用者の死去後にデジタル資産の手続きをする家族のための、「デジタル終活」にもつながります。
メモに残すことに不安を感じる向きもあるかもしれませんが、実際的には上記の留意事項にあるように、IDとパスワードを別々にメモしたり、「エンディングノートに書いておく、Excelで作成したデータで残す、スマホに保存する」などさまざまな方法が考えられます。
ID・パスワードの保管・呼び出しについては、セキュリティー会社が発売している有料アプリもありますので、それを使用するという選択もあります。
日常、さらに死去後にも困らないために大切なことは、個人が家族と自分自身のために最良の方法を考え、それを伝えておくということではないでしょうか。
「デジタル終活」のポイントは、IDとパスワードをいかにのこすかに尽きるといって良いでしょう。
まとめ
デジタル機器を使いこなしていた人が突然亡くなると、家族が後始末に大変苦労をしたという話は良く聞きます。
「デジタル終活」は、ID・パスワードさえ適切に保管されていれば、問題は簡単に解決できるともいえます。
まして、それが日常のネット活用にも便利ということであれば、まさに一石二鳥ではないでしょうか。
[出典]
(※1)総務省「情報通信白書平成30年版 概要」(平成30年7月)10P
(※2)独立行政法人 情報処理推進機構「IDとパスワードは適切に管理しましょう」
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP