注目されている年金繰り下げ 加給年金も対象になるの?

配信日: 2018.07.20 更新日: 2020.04.07

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注目されている年金繰り下げ 加給年金も対象になるの?
人生100年時代に注目されているのが公的年金の繰下げ支給です。70歳まで繰下げると1.42倍の年金が生涯支給されます。
 
今後も支給条件が変わらなければ損益分岐点は11年11カ月です。82歳になればそれ以降は得をする計算になります。
 
でも繰下げをしている間は「加給年金」がもらえません。これはちょっともったいない。繰下げしてかつ加給年金がもらえる方法はないのでしょうか?
 
北山茂治

執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)

高度年金・将来設計コンサルタント

1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。

人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。

HP: https://www.kitayamafpsr.com

繰下げ支給のメリット・デメリット

公的年金は65歳から支給されますが、66歳から70歳まで支給を遅らせると、1月当たり0.7%増額されます。70歳から支給となると1.42倍の支給になります。
 
繰下げ支給は繰上げ支給と違い老齢厚生年金と老齢基礎年金別々に繰下げできますので、自分に合った繰下げができます。
 
問題になるのは配偶者加給年金です。老齢厚生年金を繰下げている間は、配偶者加給年金の支給はされないのです。
 

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加給年金とは

厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人で、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合に支給されます。(18歳到達年度の3月31日までの間にある子、または20歳未満であって障害等級1級または2級に該当する状態にある子にも支給されます。)
 
加給年金の額は配偶者の場合、特別加算も加算されますので38万9800円となります。加給年金は「ねんきん定期便」には印字されないので注意が必要です。
 

例えば

夫65歳(厚生年金の被保険者期間が20年以上ある)で老齢厚生年金120万円・老齢基礎年金70万円、妻60歳(専業主婦)で老齢厚生年金なし・65歳から老齢基礎年金70万円という夫婦がいた場合、(万未満切り捨て・税込)
 
(1)夫が繰下げをしなければ、公的年金は65歳から5年間毎年228万円(老齢基礎年金70万円と老齢厚生年金120万円と加給年金38万円)支給されます。70歳からは加給年金は支給されなくなるので190万円(老齢基礎年金70万円と老齢厚生年金120万円)となります。
 
(2)70歳まで繰下げをすると、65歳からの5年間は当然なにも支給されず、加給年金も支給されません。70歳から毎年269万円(老齢基礎年金99万円と老齢厚生年金170万円)支給されます。
 
(3)老齢厚生年金だけ繰下げすると、65歳から老齢基礎年金70万円の年金給付がありますが、加給年金は支給されません。70歳から240万円(老齢基礎年金70万円と老齢厚生年金170万円)支給されます。
 
(4)老齢基礎年金だけ繰下げると、65歳から158万円(老齢厚生年金120万円と加給年金38万円)、70歳から219万円(老齢基礎年金99万円と老齢厚生年金120万円)支給があります。
※なんと老齢基礎年金だけ繰下げした場合のみ加給年金が支給されます。
 
妻が年下で年が離れていると、加給年金が長く支給されますので(この例の場合5年分194万9000円)、これをもらわないのはもったいない。そうなると繰下げをしない(上記(1)のケース)かまたは老齢基礎年金だけを繰下げる(上記(4)のケース)方法がいいと思います。
 
この例の場合、夫が70歳になったとき、妻が65歳で老齢基礎年金70万円を受けることができます。
 
ここで妻が70歳までの繰下げをすると、99万円となります。女性のほうが長生きの可能性が高いので、妻は82歳の損益分岐点を越えて得になる可能性が高くなります。さらに公的年金等控除で65歳以降は年間120万円まで税金がかかりません。これもいい点です。
 
夫が亡くなられたら妻に遺族厚生年金として老齢厚生年金の75%が支給されますが、これも税金がかかりません。
 
企業年金がある場合でも最近では終身年金を支給する企業は少なくなり、長くても20年間の年金となっています。60歳からだと80歳前までとなります。公的年金は終身年金ですから、企業年金をもらっている間に公的年金の額を少しでも増やして80歳以降に備えたいものですね。
 
TEXT 北山茂治  「北山FP社会保険労務士事務所」所長
1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、
健康マスターエキスパート、高度年金・将来設計コンサルタント


 

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