更新日: 2019.06.28 その他年金

男女間でこんなにも違う!?知っておきたい遺族年金制度

男女間でこんなにも違う!?知っておきたい遺族年金制度
国民年金、厚生年金加入者が死亡すると、残された遺族には、遺族年金が支給されます。しかし、遺族年金は男性と女性では支給される条件が異なります。男性に支給される遺族年金は、女性に支給される年金より、はるかに金額が少ないのです。
 
夫は死亡を保障する生命保険に加入しているけれど、妻は加入していないという方は少なくありません。共働き世帯が増える中、妻の収入が途絶え、しかも遺族年金が少ないとなると、家庭への影響は大きいものです。ですから、まずは遺族年金の制度を知った上で生命保険の必要性を判断しましょう。
 
前田菜緒

執筆者:前田菜緒(まえだ なお)

FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士

保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)

https://www.andasset.net/

遺族基礎年金の支給対象者

「遺族年金」と言っても、その種類は大きく分けて2種類あります。「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」です。まず、遺族基礎年金についてお話します。
 
遺族基礎年金の支給対象者は、死亡した者によって生計を維持されていた子のある配偶者、子です。なお、ここで言う「子」とは、高校3年生までの子(18歳になってから3月31日を迎えていない子)、20歳未満で障害等級1級、2級の子を指します。
 
さて、「生計を維持されていた」とは何をもって判断するのでしょうか? それは、死亡した者と生計が同じであること、そして配偶者の年収が850万円未満(所得が655万5千円未満)であることです。内縁関係にあっても夫婦として共同生活をしており、生計維持基準を満たせば遺族基礎年金受給対象者として認定されます。
 

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遺族厚生年金の支給対象者

厚生年金に加入している人によって生計を維持されていた妻、子・孫、55歳以上の夫、父母、祖父母が遺族厚生年金の支給対象者です。自営業者は厚生年金に加入していませんが、過去に加入しており、条件を満たせば支給対象となります。
 
ここで注意したいのが、妻には年齢要件がないのに対し、夫には年齢要件があることです。しかも、妻死亡当時、夫が55歳以上だったとしても受給できるのは60歳になってからです。このように遺族が夫であるか妻であるかで遺族厚生年金の支給要件が異なるため、その年金額も大きく変わってきます。
 

ケースで考える遺族年金額

では、男女間で遺族年金の金額にどれほどの違いがあるのか、確認してみましょう。夫・妻ともに40歳、子8歳の家族を例に考えます。夫婦は2人共22歳から会社員として働き、その間の平均年収が夫400万円、妻300万円とします。
 
・夫が亡くなった場合
遺族基礎年金・・・子どもが高校を卒業するまで支給されます。年金額は「78万円+子の加算額」です。子の加算額は、子ども2人までは約22万円、3人目からは約7万5千円です。よって、年金額は78万円+22万円=100万円となります。現在、子どもは8歳ですから、高校を卒業するまで10年間、毎年100万円が支給されるということです。
 
遺族厚生年金・・・妻に対して生涯支給されます。年金額は、夫の年収をベースに計算し、約40万円となります。さらに、65歳まで中高齢寡婦加算という、女性だけに支給される手当金も上乗せされます。
 
これは、夫死亡当時、40歳以上65歳未満で生計が同じ子がいない妻、あるいは、遺族基礎年金を受けていた妻が、子どもが高校を卒業したため遺族基礎年金を受給できなくなったとき、支給される遺族厚生年金の上乗せ支給です。年金額は約60万円です。
 
遺族年金の支給イメージは下記の図のとおりです。
 

 
65歳までの遺族基礎年金、遺族厚生年金、中高齢寡婦加算を合計すると2,900万円になります。
 
・妻が亡くなった場合
遺族基礎年金・・・夫がなくなった場合同様、支給されます。
 
遺族厚生年金・・・夫は55歳未満なので、受け取ることはできません。子に対して支給されます。金額は、妻の年収をベースに計算し、約30万円となります。支給される期間は、遺族基礎年金と同じ、子どもが高校を卒業するまでです。
 
遺族年金の支給イメージは下記の図のとおりです。
 

 
遺族基礎年金と遺族厚生年金の総支給額は1,300万円です。
 

男女で違う遺族年金額

夫が死亡した場合、妻に支給される遺族年金は2,900万円、一方、妻が死亡した場合に、支給される遺族年金は1,300万円です。
 
今回は、妻が65歳になるまで支給される遺族年金しか計算していません。妻自信の老齢厚生年金の支給が始まると遺族厚生年金が調整され、計算が複雑になるためです。しかし、調整されるとしても妻は遺族厚生年金を生涯受け取ることができます。
 
一方、夫が生涯受け取ることができるケースは、妻が死亡時55歳以上だった場合です。
 
このように、遺族年金は支給対象者が夫か妻かによって大きく金額が異なります。ですから、妻の生命保険を考える際は、夫が受け取れる遺族年金はいくらか、理解しておくことが大切です。その上で、必要保障額を補えるような保険金を設定すれば、見直す必要のない生命保険の加入ができるでしょう。
 
執筆者:前田菜緒(まえだ なお)
CFP(R)認定者
 

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