年金記録に漏れが見つかったらどうなる?(1)年金を受け取り始めた後に判明した場合

配信日: 2020.09.02

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年金記録に漏れが見つかったらどうなる?(1)年金を受け取り始めた後に判明した場合
「ねんきん定期便」を見て、自身の年金加入記録に漏れがないかどうか確認することができます。
 
かつて勤めたことがある会社とその期間などで、定期便に載ってないものがある場合については、日本年金機構などに年金の加入記録を調査してもらい、もし判明すれば、当該記録を追加できます。年金の受給前にすべて記録が整えば、すべての記録に基づいた年金が受け始められることになります。
 
もし、年金を受給する年齢になって、以降に昔の加入記録が判明した場合はどのように取り扱われるのでしょうか。年金記録の訂正と年金の受給について、全2回にわたって取り上げます。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

年金の加入記録が見つかるとその分の年金が増える

年金は、自身のそれまでの年金の加入記録に応じて計算されます。老齢年金を受け取る年齢になった時点で、受給資格期間(10年以上、2017年7月以前の場合は25年以上必要)が足りず、年金が受け取れないと思って諦めていても、他に記録があると後でわかり、その結果受給資格を満たして受給できることがあります。
 
また、支給開始年齢(生年月日に応じて60~65歳)時点で受給資格を満たし、年金を受けられる人についても、実際に年金を受け始めて以降に記録に漏れがあるとわかり、見つかった他の年金記録が追加された場合は、その分年金も再計算されて年金は増えます。

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特例により5年を超えた分も支給

本来、年金は受給権発生から5年を超えると、5年より前の分の受け取っていない年金については時効で消滅し、受け取れません。受給権が発生してから5年を超えてから手続きをすると、このままでは5年以内の分はさかのぼって受給できるものの、それより前の分は受け取れないということになってしまいます。
 
しかし、「宙に浮いた5000万件の年金記録」の問題を受けて、2007年7月に施行された年金時効特例法により、年金記録が追加、訂正されたことによって受けられる年金については5年の時効がありません。
 
過去に加入した年金の記録が見つかって、その記録を足したことによって初めて受給資格期間を満たした場合は、過去にさかのぼって受給権が発生しますが、受給権が発生した日から5年を超えている場合、過去5年分だけでなく、5年を超えた分の年金を受給できます(【図表1】)。

例えば、現在68歳で受給資格期間が足りずに年金を受給していない人に年金記録が見つかり、記録を訂正した結果、60歳時点で受給資格期間を満たしていた場合、60歳で受給権が発生します。この場合、過去の63歳から68歳までの5年分だけでなく、60歳から63歳までの5年を過ぎた分の年金も受給が可能となります。もちろん、今後68歳以降についても年金の受給が可能です。
 
一方、すでに年金を受け取っている人で、後になって加入記録が見つかった場合についても、過去5年分のほか、特例により5年より前の記録訂正にかかる部分についても支給されます。そして、将来の年金も訂正後の記録で受給できます(【図表2】)。

もし、60歳で老齢年金の受給権が発生し、受給し始めた人が80歳時点で記録が判明した場合、追加記録分の年金は75歳から80歳までの5年分だけでなく、5年を過ぎている、60歳から75歳までの15年分も受けられることになります。
 
追加される記録について計算された年金が年間2万円であれば、過去5年分10万円(2万円×5年)、特例法によってさかのぼる30万円(2万円×15年)が受けられ、今後の年金についても年間2万円多い額で受給できます。

遅延特別加算金も加算

年金が受給権発生当時にさかのぼるだけではありません。2010年4月より、年金記録の訂正によって特例で支給される年金の場合、5年より前の年金については遅延特別加算金が加算されることになっています(【図表1】【図表2】)。この加算金は、現在価値に見合うよう、物価状況を勘案の上で算定された額として加算されることになります。
 
以上のように、後になって記録が判明しても時効も適用されることなく、遅延特別加算金が加算されることもあり、受給には不利にはならないような制度といえるでしょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー


 

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