障害年金ヒント集(4) 裁定請求時に額改定請求も
配信日: 2021.01.27
しかし、取り組み方をちょっと変えると、うまくハードルを越えられる場合もあります。悩んでいる人たちへの受給のためのヒント集です。第4回は「裁定請求時に額改定請求も」です。
執筆者:和田隆(わだ たかし)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。
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目次
裁定請求をこれからする人にも関係がある
障害年金の請求方法の1つとして額改定請求があります。障害年金を受給している人が、自身の障害の程度がより重くなった場合に、障害等級を3級から2級に、あるいは、2級から1級に、というように上げてもらうために行うものです。
そのため、すでに障害年金を受給している人が知っておけばよい請求方法と思われるかもしれませんが、実は、障害年金の裁定請求をこれからする人にも大いに関係があるものなのです。
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現在のほうが重症化していると思われる場合に
それは、請求日が障害認定日から1年以上経過している人が障害認定日請求をする場合で、障害認定日当時より現在のほうが重症化していると思われる場合です。
障害認定日請求では、診断書は1つの傷病で2通提出します。障害認定日当時のものと現在のものです。この2通を基にして「障害認定日は〇級、現在は〇級」と認定されるわけです。
障害認定日当時より現在のほうが重症化した人の場合、「障害認定日は3級、現在は2級」とか「障害認定日は2級、現在は1級」ならば納得できるでしょうが、「障害認定日も現在も3級」や「障害認定日も現在も2級」など重症化を認めてもらえない場合は、不満を感じることになるかもしれません。
額改定請求もしておけば、すぐに「審査請求」が可能
それならば、額改定請求をすればよいようなものですが、額改定請求をするには、それなりに準備が必要ですし、手間もかかります。ところが、もしも、裁定請求をするときに併せて額改定請求もしておけば、「審査請求」と呼ばれる不服申し立てがすぐにできるのです。
併せて額改定請求もすることのメリットとデメリット
裁定請求に併せて額改定請求もすることのメリットをまとめると、次のとおりです。
- ▽審査請求で額改定が認められた場合に、上位等級の年金が早く取得できます。裁定請求の結果が分かってから、大急ぎで額改定請求をする場合と比べると、年金受給額に少なくとも3カ月分以上の差が生じます。
- ▽裁定請求の結果が分かってから額改定請求をする場合は、再び、新しい診断書を提出する必要があり、診断書代などが余分にかかります。
一方、デメリットといえば、裁定請求時に書類(名称は「障害給付額改定請求書」です)を1枚多く作成して提出しなければならないことくらいです。
2015年に改められ、お墨付きに
裁定請求と額改定請求を同時に行う方法は、かつては認められていませんでしたが、2015年に改められ、厚生労働省が日本年金機構からの「疑義照会」に回答するという形で公表されました。
なお、額改定請求で提出する診断書は、かつては「請求日前1カ月以内の障害の状態を記入したもの」が必要でしたが、2019年8月以降は「請求日前3カ月以内の障害の状態を記入したもの」に変更されています。
自ら主張しなければ、期待どおりにはならない
裁定請求をするときには、障害認定日当時の障害等級も未定ですから、早々と額改定請求をすることに疑問を感じるかもしれません。しかし、裁定請求の書類を年金事務所に提出するときに、職員から「額改定請求もされてはどうですか」と勧められることは、まずありません。
障害年金に関しては、自ら権利を主張しなければ、期待どおりにはなりません。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士