更新日: 2021.05.21 厚生年金

厚生年金はどれくらいの規模の企業なら加入できる? 個人事務所では無理?

執筆者 : 辻章嗣

厚生年金はどれくらいの規模の企業なら加入できる? 個人事務所では無理?
厚生年金が適用される事業所には、強制適用事業所と任意適用事業所があります。また、一定の条件を満たすパートタイマーの方が被保険者となる特定適用事業所があります。今回は、これら事業所の区分と要件について解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

強制適用事業所とは

1.強制適用事業所となる事業所とは

厚生年金が強制的に適用される事業所は、以下のとおりです(※1、2)。
 

(1)株式会社などの法人の事業所
(2)従業員が常時5人以上いる、法律で定める16業種の個人の事業所

 
従って、常時5人未満の個人の事業所は強制適用事業所とはなりません。
 

2.16種類の適用業種とは

従業員が常時5人以上の個人の事業所で強制適用事業所となる業種は、厚生年金法で以下の16業種に定められています(※1、3)。
 

(1)物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業
(2)土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
(3)鉱物の採掘又は採取の事業
(4)電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業
(5)貨物又は旅客の運送の事業
(6)貨物積みおろしの事業
(7)焼却、清掃又はと殺の事業
(8)物の販売又は配給の事業
(9)金融又は保険の事業
(10)物の保管又は賃貸の事業
(11)媒介周旋の事業
(12)集金、案内又は広告の事業
(13)教育、研究又は調査の事業
(14)疾病の治療、助産その他医療の事業
(15)通信又は報道の事業
(16)社会福祉法に定める社会福祉事業及び更生保護事業法に定める更生保護事業

 
従って、農業、漁業、サービス業などは対象となりません。
 

3.適用業種の拡大

厚生年金法の改正に伴い、2022年10月1日からは5人以上の個人事業所に係る適用業種に弁護士、税理士、社会保険労務士などの資格を有する者が行う法律または会計事務を取り扱う業務、いわゆる士業が追加されます(※3)。
 

任意適用事業所とは

1.任意適用事業所になるためには

強制適用事業所以外の事業所であっても、以下の2点を満たせば任意適用事業所となることができます(※2)。
 

(1)従業員の半数以上が厚生年金の適用事業所となることに同意していること
(2)事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けること

 

2.任意適用事業所になると

任意適用事業所になると強制適用事業所と同様に、事業所に勤務する正社員と条件を満たすパートタイマーは厚生年金の被保険者となることができます(※2)。
 

一定の条件を満たすパートタイマーが被保険者となる特定適用事業所とは

1.厚生年金の被保険者とは

厚生年金に加入している事業所で正社員として働く70歳未満の方は、厚生年金の被保険者となります(※2)。
 

 

2.パートタイマーが被保険者となるには

パートタイマーでも1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上である方も被保険者となります。
 
また、パートタイマーで1週間の所定労働時間が正社員の4分の3未満、1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3未満、またはその両方の場合でも、次の要件を全て満たすことで被保険者になります(※2)。なお、学生は対象とはなりません。
 

(1)週の所定労働時間が20時間以上あること
(2)雇用期間が1年以上見込まれること
(3)賃金の月額が8万8000円以上であること
(4)常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めていること

 

3.特定適用事業所の適用範囲の拡大

一定の条件を満たすパートタイマーを厚生年金の被保険者としなければならない特定適用事業所の企業規模要件は、今後段階的に引き下げられ、最終的には常時51人以上の企業が対象となります(※2、3、4)。
 

 
また、特定適用事業所以外の適用事業所が労使の合意に基づいて、任意特定適用事業所の申し出を行うこともできます(※4)。
 

まとめ

厚生年金が適用される事業所には、法定の強制適用事業所や特定適用事業所があります。一方、労使の合意に基づいて申請し、厚生労働大臣の承認を得ることができれば、任意適用事業所や任意特定適用事業所になることができます。
 
厚生年金の適用事業所になることによって、従業員が厚生年金の被保険者となり、老後や万が一のときの備えを充実させることができます。
 
出典
(※1)e-Gov法令検索 厚生年金保険法 第六条(適用事業所)
(※2)日本年金機構 適用事業所と被保険者
(※3)厚生労働省 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要
(※4)日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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