更新日: 2021.07.13 その他年金

障害年金受給者に家族がいると年金額は変わる?(2)配偶者が年金を受け始めていると減ることも

執筆者 : 井内義典

障害年金受給者に家族がいると年金額は変わる?(2)配偶者が年金を受け始めていると減ることも
障害年金を受けている人に一定の家族がいると受給額が変わることがあります。
 
「障害年金受給者に家族がいると年金額はどうなる?(1)」では、配偶者・子どもがいることでの加算について取り上げました。
 
一方、障害年金を受け取っている人の家族が年金受給者である場合、その家族が受給する年金が調整されることがあります。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

配偶者が年金を受け始めていると注意

障害年金を受ける人の配偶者がすでに年金を受ける場合は、その配偶者の年金が減ることがあります。老齢厚生年金、障害厚生年金には配偶者加給年金制度があります。
 
老齢厚生年金の配偶者加給年金(特別加算額込み)が39万500円(2021年度の年額)、そして前回取り上げた障害厚生年金の配偶者加給年金は22万4700円(2021年度の年額)です。
 
もし、夫自身が老齢厚生年金や障害厚生年金を受けて、妻がいることによって加給年金が加算される場合、本来であれば妻が65歳になるまで加算されるところ、その夫から見ての配偶者である妻が障害基礎年金や障害厚生年金を受け始めると、当該夫の加給年金がそれ以降支給停止になります。
 
【図表1】の例のように、妻自身は障害年金を請求して受給できるようになりますが、たとえ妻の障害年金が3級の障害厚生年金(障害基礎年金なし)であっても、それ以降夫の老齢厚生年金の加給年金がつかなくなります。
 


 

障害年金の支給決定には時間がかかることも

【図表2】のように、障害年金の請求には「認定日請求」と「事後重症請求」があります。そして、実際に請求をして診断書の内容を元に障害状態の審査がされ、受給の可否や障害等級、受給額が決まります。
 
受給権があると支給が決定され、受給権発生日の翌月分から支給されますが、障害年金を請求し、その審査を経て支給の決定がされるには3~6ヶ月、障害の内容によっては1年近くかかることもあります。
 


 
その結果、障害年金の請求者(先述の例での妻)が障害年金の受給権発生後に請求してその年金の決定がされるまでに、すでに配偶者(先述の例での夫)に加算されていた加給年金については、過払いとなってその返納が発生することもあります。
 
初診日から1年6ヶ月(原則)経過した障害認定日に障害等級に該当している場合の障害認定日請求は、障害認定日から月日が経過していても、障害認定日の翌月分からさかのぼって受給できます(ただし時効によりさかのぼれるのは5年まで)。
 
しかし、受給権発生日の翌月からその障害年金の決定までの期間に配偶者に加算されていた加給年金が返納となります。
 
妻の障害年金が数年分さかのぼって受給できることもある一方、当該期間に夫に加算されていた加給年金もさかのぼって返納することにもつながります。
 
加給年金の年額は先述のとおりですので、これが数年分あると返納額が100万円を超えることもあるでしょう。
 
初診日から1年6ヶ月経過後になって初めて障害が悪化して障害等級に該当した場合では、65歳未満であれば事後重症請求ができます。
 
事後重症請求の場合は障害年金の請求をした日が受給権発生日となり、請求者(先述の例での妻)は請求日の翌月分から障害年金が受けられる一方で、配偶者(先述の例での夫)の加給年金は障害年金請求日の翌月分から支給停止となります。
 
請求月以前にはさかのぼりませんが、障害年金の請求から決定までには時間がかかることから、請求の翌月から決定までにすでに加算されていた配偶者の加給年金が過払いで返納対象となるでしょう。
 

配偶者が年金受給中の場合の夫婦の年金

以上のように、障害年金を請求した人の配偶者が年金受給者で加給年金が加算され始めるようになる場合は、配偶者側の年金が調整されることになります。
 
障害年金請求者本人が何年何月分から障害年金が支給対象になるかで変わってくることにもなりますので、障害年金の支給対象となる月を把握しておいたほうがよいでしょう。
 
そして、その点も踏まえて今後の夫婦の年金収入を計算する必要があるでしょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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