共働き夫婦のタイプ別に見る、 年金の保険料と受給額
配信日: 2021.03.19
では実際、共働きによってどのくらい年金の保険料が発生し、どのくらい受給額が増えるのでしょうか。共働き夫婦のタイプ別に簡単にシミュレーションしてみました。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
年金の計算は複雑である
年金の計算は非常に複雑であり、個別の事情によって内容が大きく変わります。そのため、今回は次のような共通条件を基にシミュレーションします。
・年金の受給開始時期の繰り下げや繰り上げは行わない
・特に記載がない限り、年金保険料の支払期間は40年(480ヶ月)
・厚生年金の受給額の算出時期に当たっての乗率は5.481/1000で統一
・国民年金の年間の受給額は満額で1人当たり78万1692円とする
・その他、特例などは考慮しない
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夫婦ともに定年まで会社員を続けた場合
ではまず、夫婦ともに定年まで勤め、国民年金と厚生年金を最大の加入期間で受給できる場合です。夫の平均年収は600万円、妻の平均年収は480万円とします。
夫 | 妻 | |
---|---|---|
国民年金加入期間 | 480ヶ月 | 480ヶ月 |
厚生年金加入期間 | 480ヶ月 | 480ヶ月 |
在職中の平均年収 | 600万円 | 480万円 |
平均標準報酬月額 (在職中の平均年収を12で割った数値) |
50万円 | 40万円 |
※筆者作成
老齢基礎年金は夫婦双方480ヶ月加入しているので、それぞれが満額(年間78万1692円)を受け取ることができます。
老齢厚生年金の受取額について、平均標準報酬月額に5.481/1000の乗率と年金保険料の支払期間である480ヶ月をかけて算出すると夫は年間で131万5440円、妻は105万2352円となります。
よって夫婦合計の金額は厚生年金と国民年金で393万1176円となり、ライフスタイルにもよりますが、年金収入だけでも老後の生活をある程度安定して送ることができそうです。
なお、上記表の平均標準報酬月額が定年までの標準報酬月額の平均値だと仮定して、令和2年9月分からの保険料額を例に厚生年金保険料の総額について大まかに推測すると、夫が支払った保険料は2196万円程度、妻が支払った保険料は1800万7200円程度と想定されます(それぞれの標準報酬月額に対する保険料の本人負担分を480ヶ月支払った仮定で計算)。
夫が会社員で妻が専業主婦、または扶養内で働く場合
続いて、妻が専業主婦、または夫の扶養の範囲内で働いていたため、厚生年金の加入記録が一切ない場合で計算してみましょう。
夫 | 妻 | |
---|---|---|
国民年金加入期間 | 480ヶ月 | 480ヶ月 |
厚生年金加入期間 | 480ヶ月 | 0ヶ月 |
在職中の平均年収 | 600万円 | 0円 |
平均標準報酬月額 (在職中の平均年収を12で割った数値) |
50万円 | 0円 |
※筆者作成
この場合の夫婦の年金収入は、国民年金156万3384円と、夫の厚生年金131万5440円の合計で287万8824円となります。月額に換算すると23万9902円となり、ライフスタイルにもよりますが、生活していくこと自体はさほど難しくはなさそうです。
厚生年金に加入している夫の扶養に入って専業主婦をしていた、あるいは扶養の範囲内で働いていた妻は国民年金第3号被保険者となっていたので保険料は発生しません。保険料の総支払額は夫のみの2196万円程度と想定されます。
夫が自営業者で、妻は専業主婦か自営業者
夫が自営業者で妻は専業主婦、あるいは妻も自営業者というケースで考えてみましょう。この場合、夫婦ともに国民年金に加入します。
仮に夫婦ともに国民年金の保険料を480ヶ月支払っていたという場合、受け取れる国民年金の額は夫婦合わせて156万3384 円(78万1692円×2人分)となります。
月換算すると約13万円程であり、これだけで生活するのは少々難しいかもしれません。さらに、国民年金には扶養という概念がありません。国民年金の保険料の総支払額は、夫婦2人で1587万8400円 となります(月々の保険料を1万6540円で計算)。
年金の保険料は夫婦の働き方によって大きく変わる
ひと口に共働きといっても、夫婦ともに会社員で働くのか、一方の扶養内で働くとするか、はたまた自営業者なのか、働き方によって収入が同じでも年金の保険料と将来の受取額は大きく変わります。
夫婦で共働きをする際は、自分たちの年金保険料と受給額がどれくらいになるのか検討し、それを基に働き方を考えていくのも1つの方法でしょう。
出典
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表
日本年金機構 令和2年4月分からの年金額等について
執筆者:柘植輝
行政書士