更新日: 2024.07.29 その他年金
失敗したかも…年金を60歳で繰り上げ受給した人に共通する3つの後悔とは?
その大切な年金の受給で失敗しないよう、今回は「年金の繰り上げ受給」について説明します。
年金の繰り上げ・繰り下げ受給とは
年金の受給は、国民年金・厚生年金ともに原則65歳からとなっており、この原則65歳の受給開始年齢を、60~64歳に早めることを「繰り上げ受給」、66~70歳に遅らせることを「繰り下げ受給」といいます。
年金の繰り上げには、「全部繰り入れ」と「一部繰り入れ」があり、特別支給の老齢厚生年金をもらっている人は老齢基礎年金を「一部繰り入れ」とすることができます。
「繰り上げ受給」をする場合は年金の受給額が減額されます。減額率はひと月「-0.5%」です。一方、「繰り下げ受給」する場合は受給額が増額され、増額率はひと月「+0.7%」で計算します。
ただし令和4年4月1日より以下の点が変更になる予定です。
(1)「繰り下げ受給」の開始年齢を70歳から75歳に引き上げることにより、各自60~75歳の間で受給開始年齢を決めることができます。
(2)令和4年4月1日以降に60歳になる人が、繰り上げ受給を受ける場合は、減額率がひと月「-0.5%」からひと月「-0.4%」となります。
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年金の受給額を具体例で見ると
厚生年金保険(第1号)の受給者の平均受給額を年180万円(ひと月約15万円)として、受給額を比較してみましょう。
(1)繰り上げ受給の減額率をひと月「-0.5%」、繰り下げ受給の増額率をひと月「+0.7%」で年間の受給額(万単位)を計算すると、
60歳から繰り上げ受給した場合 年126万円 (原則比-54万円)
65歳で原則通り受給した場合 年180万円
70歳まで繰り下げ受給した場合 年256万円 (原則比+76万円)
そして繰り上げ受給の減額率を令和4年4月からのひと月「-0.4%」で計算すると
60歳から繰り上げ受給した場合 年137万円 (原則比-43万円)
になります。
(2)平均寿命85歳(男女の単純平均)までの累計受給額(万単位)を計算すると、
60歳から繰り上げ受給した場合 126万円×25年=3150万円(原則比-450万円)
65歳で原則通り受給した場合 180万円×20年=3600万円
70歳まで繰り下げ受給した場合 256万円×15年=3840円(原則比+240万円)
になります。
そして平均寿命(男女平均)85歳までの累計受給金額を、令和4年4月からの繰り上げ受給の減額率ひと月「-0.4%」で計算すると、
60歳から繰り上げ受給した場合 137万円×25年=3425万円(原則比- 175万円)
となります。
(3)「繰り上げ受給」と「原則65歳で受給」の累計受給額を比較すると、ひと月「-0.5%」で計算した場合は76歳、ひと月「-0.4%」で計算した場合は80歳で、受給開始からの累計の年金額がほぼ同額になります。
繰り上げ受給の利点と注意点は
繰り上げ受給した場合の利点は、以下のことが挙げられます。
(1)早い場合60歳から年金受給できる
一方、繰り上げ受給した場合の主な注意点は、以下の通りです。
(1)繰り上げ受給の減額は一生続き、取り消しができない
繰り上げ受給の変更はできず、65歳以降でも一度減額された金額は戻りません。
ただし、「振替加算」は65歳からの受給で変わりません。
(2)年金の受給権者は国民年金の「任意加入被保険者」になれない
国民年金の加入期間が40年未満の人が年金を増やそうとして、60歳以降に任意加入しようとしても、繰り上げ受給で既に年金を受給している場合は加入できません。
(3)他の年金への影響としては、
●「寡婦年金の受給権者」が、老齢基礎年金を繰り上げ請求すると、寡婦年金は失効する
●「障害基礎年金」は、受給権発生後初診日がある場合受け取れない
●65歳以前に遺族年金の受給権が発生した場合、老齢基礎年金と遺族年金のどちらかを選択をする
などがあります。
年金の繰り上げ受給は、一度選択すると変更はできないため、上記の(1)~(3)のような点で後悔することがないよう、よく検討する必要があります。
まとめ
年金の繰り上げ支給・繰り下げ支給とも、それぞれメリット・デメリットがあります。特に繰り上げ受給を考えている人は、減額率は変更されるとはいえ、前項で記述したように注意すべき点があり、慎重に対応する必要があります。
そして金融資産を含め、誰とどこで住むのかなどいろいろな角度から各人のライフプランを作成し、それに合わせた年金の受け取り方を考えてみてください。
出典
厚生労働省 令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
日本年金機構 年金の繰上げ受給
執筆者:小久保輝司
幸プランナー 代表