更新日: 2024.07.29 その他年金
年金の受給は「70歳まで待つのがお得」って本当?「65歳・70歳・75歳」で比較
できることなら早く受け取りたい年金ですが、実際のところ「繰下げ受給」は本当にお得なのか気になるところです。
本記事では「繰下げ受給」のメリット・デメリットや、日本人の平均寿命をもとに、何歳まで繰下げ受給すればお得になるかについて解説します。
執筆者:辻本剛士(つじもと つよし)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種
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目次
年金の「繰下げ受給」とは?
公的年金は原則65歳となっている受給開始を65歳前に繰り上げたり、75歳まで繰り下げたりすることが可能です。
「繰上げ受給」は年金の受け取りを65歳より前に開始することです。「繰上げ受給」をすれば、通常より早く年金を受給できますが、その分受給額は減ってしまいます。
「繰下げ受給」は年金の受け取りを65歳より後に開始することです。「繰下げ受給」をすれば、通常より遅く年金を受給することになりますが、その分受給額は増えます。
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「繰下げ受給」のメリット・デメリット
「繰下げ受給」には次のメリット・デメリットがあり、両方とも「繰り下げるか」それとも「しないか」の決定を大きく左右するのでこれから説明していきます。
<メリット>75歳まで繰り下げた場合は増額率が最大84%
繰下げ受給のメリットは、1ヶ月当たりの年金受給額が増えることです。先述の通り、2022年4月からは75歳まで繰り下げが可能となり、増額率はこれまでと変わらず、1ヶ月当たり0.7%。最大で84%増額されます。
<デメリット>繰り下げ中に亡くなると繰り下げ損をする
繰下げ受給のデメリットは、繰り下げ中、もしくは繰り下げ期間終了後に受給を開始してすぐに亡くなってしまうと、年金をほとんど受け取れずに「繰り下げ損」をしてしまうことです。長年払い続けてきた年金を、ほとんど受け取れないということになります。
65歳、70歳、75歳で比較した場合の損益分岐点は何歳?
ここからは、繰下げ受給せずに65歳から受給を開始した場合と、70歳まで繰下げ受給した場合、75歳まで繰下げ受給した場合の「損益分岐点」を説明します。ここでの「損益分岐点」とは、異なる受給開始年齢を比較し「総受給額が同額になるのは何歳になったときか」を示します。
70歳に繰り下げた場合
70歳まで繰下げ受給した場合は42%年金が増額します。この場合、65歳から受給を開始したケースと同額になるのは81歳以降です。
75歳に繰り下げた場合
75歳まで繰下げ受給した場合は84%年金が増額します。この場合、86歳以降に65歳受給開始のケースと同額になり、91歳以降になれば、70歳まで繰下げ受給したケースと同額になります。
平均寿命を目安とした場合は70歳まで繰下げ受給した方がお得
「日本人の平均寿命85歳」を目安として設定した場合、70歳から受給するパターンが一番お得だと分かります。70歳から受給する場合は、65歳から受給するケースを81歳で同額になり、75歳から受給するケースには平均寿命の85歳を超えた、91歳まで同額になることはありません。
繰下げ受給せずに、受給した年金を貯蓄しておくのも一つの選択肢
ここまで、70歳、75歳と年金を繰り下げた場合の損益分岐点を紹介し、70歳まで繰り下げをした方がお得だと解説してきました。
しかし、65歳になっても労働を続ける意思がある人は、労働をしながら、年金受給を開始する選択肢もあります。退職するまでなるべく年金を使わずに貯蓄し、現金で持っていれば、「病気」や「介護」などの不測の事態にも対応できます。
例えば、年金を毎年200万円受給できる人が、65歳から5年間は労働収入で生活し、その5年間の年金をすべて貯蓄しておくとします。そうすれば5年後に1000万円の現金を残せることになります。
このように手元に現金として残しておきたい人は、労働期間中は年金を使わずに、なるべく貯蓄しておくことも選択肢の一つでしょう。
年金の繰下げ受給に関しては、結局のところ何歳まで生きられるかで、損するか得するかが変わってきます。紹介した分岐点を参考に受給開始年齢を判断してください。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
厚生労働省 令和3年簡易生命表の概況
執筆者:辻本剛士
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士、証券外務員二種