無職の兄が「年金」を払っていないようです。大学生のわたしに影響はありますか?
配信日: 2025.05.15

特に大学生のように収入が限られており、かつ、これから将来の道を決めていく身では、なおさら気になるでしょう。
この記事では、家族の年金未納が大学生にどのような影響を及ぼす可能性があるのか、「兄が国民年金保険料を滞納している」という事例を例に解説します。

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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
兄の年金未納が自身に直接影響する可能性は基本的にはない
まず基本的には、大学生である相談者自身に、未納となっている兄の年金の支払い義務はないのが原則です。なぜなら、年金の支払い義務は本人に課されており、家族が未納の場合でも、大学生である相談者に直接的な支払い義務が生じることがないからです。
日本年金機構によれば、「国民年金第1号被保険者の世帯主および配偶者は国民年金保険料を連帯して納付する義務」がありますが、今回のケースでは、大学生である相談者の生活費や収入が、そのまま差し押さえられるということはないでしょう。
ただし、兄の未納が長期間続くと、家計全体への負担が増える可能性があります。例えば、親が兄の未納分を補てんしようとする場合、その費用が家計を圧迫し、結果的に仕送りや学費に影響が及ぶことがあるかもしれません。
兄が年金を未納にするリスク
兄の年金滞納は、直接的には他者に影響を及ぼさないとはいえ、間接的に影響する可能性は十分にあります。
例えば、老齢基礎年金を受け取るためには10年以上の受給資格期間が必要です。未納期間が長引くと、この条件を満たせなくなり、将来年金を受け取れなくなるリスクがあります。
加えて、年金を払っていないと、障害を負った場合の「障害基礎年金」や、万が一兄が亡くなった際に遺族が受け取る「遺族基礎年金」を、1円も受け取ることができないかもしれません。そうなった場合、兄の遺族を家族が支援せざるを得ず、負担が増える可能性もあります。
また、年金の未納が続くと、兄のもとに日本年金機構から催告状が届きます。その上で、長期間にわたり未納が改善されない場合、財産の差し押さえなどの強制執行が行われることもあります。
もちろんここでいう差し押さえは原則兄に対してのみ行われるため、相談者はじめほかの家族の財産や生活には直接的には影響しません。
しかし、兄に前述の連帯納付義務者(世帯主および配偶者)がいる場合は連帯納付義務者に対しても財産の差し押さえが行われるケースがあり、さらに財産を失った兄を家族が支援することになれば、間接的に相談者自身にも影響が及ぶかもしれません。家族全体には精神的な問題として大きな負担がかかるでしょう。
なお、年金は支払いが遅れれば遅れるほど延滞金が発生し、本来よりも高い額で支払うことになります。
家族として何ができるか
兄が無職である場合、おそらく「収入がないので年金の支払いが難しい」という状況にあるでしょう。この場合、「国民年金保険料の免除・納付猶予制度」を利用することができるかもしれません。
日本年金機構によると、国民年金保険料の免除・納付猶予制度とは、本人・世帯主・配偶者(納付猶予制度の場合は本人・配偶者)の前年所得などが一定以下であるなど所定の条件を満たす場合に、年金保険料の納付について免除や猶予がなされる制度です。
免除や猶予を受けることで、年金を払っていない期間も「未納期間」としては扱われず、将来の年金受給資格期間に算入できます。
猶予されている間に兄含めた家族で一緒に話し合い、適宜最寄りの年金事務所と相談しつつ、対応を考え進めていくことが重要です。そうすることで、家族として兄の年金未納問題を解決に導ける可能性があります。
まとめ
無職の兄が年金を払っていなかったとしても、原則として年金の負担が家族へ及ぶことはありません。しかし、その兄の支払いを家族が支援すると、間接的に自分に負担が及ぶかもしれません。
年金への対応は早い方が望ましいです。できるだけ早いうちに、何らかの対応を取るようにしてください。
出典
日本年金機構 日本年金機構の取り組み(国民年金保険料の強制徴収)
日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
執筆者:柘植輝
行政書士