60歳から繰り上げて「年金」をもらっていましたが、妻がパートを始めました。途中から繰上げ受給の「取り消し」はできるのでしょうか?

配信日: 2025.06.09

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60歳から繰り上げて「年金」をもらっていましたが、妻がパートを始めました。途中から繰上げ受給の「取り消し」はできるのでしょうか?
年金制度には「繰上げ受給」と呼ばれる仕組みがあります。年金は原則、65歳から受給できるものですが、加入者は受給タイミングを調整することが可能です。
 
今回のケースでは、定年後に60歳から年金の繰上げ受給をしている人が、その取り消しについて検討し始めているようです。
 
本記事では、繰上げ受給申請後に取り消すことはできるのか、また繰り上げ受給することにより年金受給額にはどのような影響が出るのかを解説します。
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繰上げ受給の概要

繰上げ受給は、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の受給開始タイミングを前倒しできる仕組みです。希望すれば60歳から受給開始できます。受給者は年金を早く受け取ることで、生活資金に余裕を持たせやすくなります。
 
60歳で定年を迎える労働者であれば、年金の受け取りまで通常5年間待つ必要があり、その間は無収入になってしまうかもしれません。
 
退職金やこれまでの貯蓄を切り崩しながら生活する方法もありますが、それがうまくいかない場合は、繰上げ受給が頼みの綱になることもあるでしょう。
 
なお老齢基礎年金と老齢厚生年金は、同じタイミングで請求しなければなりません。「共済組合」の加入期間がある場合は、やはり同時に繰り上げの手続きが行われます。
 

繰上げ受給の取り消しはできない

繰上げ受給を申請した後に取り消せるかどうかですが、結論からいうと「不可」です。日本年金機構は、繰り上げ請求の注意点として、以下のように明言しています。
 
「老齢年金を繰上げ請求した後は、繰上げ請求を取消しすることはできません。」
 
一度申請した場合は、生涯にわたって繰上げ請求した状態が続きます。そのため、申請前にしっかり検討の時間を取る必要があります。
 
また別の注意点として、老齢年金の繰上げ請求後は、国民年金の任意加入や保険料の追納も不可です。
 

繰り上げ受給による減額はどれくらい?

繰上げ受給する場合、受け取れる年金額が「減額」されます。どれくらい減額されるかは、繰上げ受給をしたタイミングに左右されます。
 
減額率は最大24%(昭和37年4月1日以前生まれの人は最大30%)で、計算方法は以下の通りです。
 
0.4%(昭和37年4月1日以前生まれの人は0.5%)×繰り上げ請求した月から65歳に達する日の前月までの月数
 
繰上げ受給のタイミングがひと月早まるごとに、0.4%減額されます。この減額率は一生変わりません。
 
今回のケースでは60歳から繰上げ受給しています。仮に、最も早いタイミングで申請しているとすれば、24%が減額される計算です。
 
例えば、65歳から毎月10万円受給する予定だった人が24%減額される場合、7万6000円を受け取ることになります。
 

老後収支改善の方法

繰上げ受給の取り消しができないということは、減額された年金月額は生涯変わらないということです。もし家計に不安がある場合、少しでも今後の収支を改善するには、以下のような工夫が求められます。

●働いて収入を増やす
●配偶者の年金を繰下げ受給して増額させる
●固定費を見直すなど支出を減らす
●健康的な生活を心がけ、医療費や介護費の将来リスクを減らす
●NISA(少額投資非課税制度)など投資を利用して資産を増やす

今回のケースでは妻がパートを始めていますが、場合によっては相談者本人が再就職できるか視野に入れられるかもしれません。
 

繰上げ受給の取り消しはできない

繰上げ受給を一度申請すると、取り消すことはできません。また、適用された減額率は一生涯続きます。申請タイミングが早ければ早いほど、減額率は上がることになります。
 
そのため繰上げ受給を申請するか否かは慎重に判断する必要があります。もし申請済みで老後の家計状況に不安があるならば、働いて収入源を増やしたり、現在の支出を減らしたりなども検討してみましょう。
 

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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