定年を迎えた夫が「年金だけでは不安だから」と週3日のパートを始めたところ、「働きすぎると年金が減る」と友人から忠告を受けました。本当に“働き損”になることはあるのでしょうか?

配信日: 2026.02.27
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定年を迎えた夫が「年金だけでは不安だから」と週3日のパートを始めたところ、「働きすぎると年金が減る」と友人から忠告を受けました。本当に“働き損”になることはあるのでしょうか?
老齢年金を受給しながら会社員として働くと、在職老齢年金制度により、年金と給与収入の合計額が一定額を超えた場合、老齢年金の一部または全部が支給停止になります。
 
今回は、在職老齢年金制度の仕組みを説明するとともに、年金額と給与収入に応じて停止される年金額を詳しく解説します。
辻章嗣

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

在職老齢年金制度とは

在職老齢年金制度とは、老齢厚生年金を受給しながら厚生年金の被保険者として働く場合に、受給している「老齢厚生年金の基本月額」と「総報酬月額相当額」に応じて、年金額が支給停止となる制度です(※1)。
 
老齢厚生年金の基本月額とは、加給年金を除いた老齢厚生年金(比例報酬部分)の月額で、年金額を12で除した額となります。
 
基本月額=老齢厚生年金額(報酬比例部分)÷12
 
総報酬月額相当額とは、その月の標準報酬月額(社会保険料の算定根拠となる報酬月額)に、その月以前1年間の標準賞与額(賞与額の1000円未満を切り捨てた額)の合計額を12で除した額を加えたものです。
 
総報酬月額相当額=その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12
 
在職老齢年金制度による基本月額に対する支給停止額は、下式によって算出されます。
 
支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-支給停止調整額)×1/2
 
令和7年度の支給停止調整額は51万円、令和8年度の支給停止調整額は65万円(※2)になっています。
 
したがって、令和8年度であれば、基本月額と総報酬月額相当額が65万円を超えなければ、老齢厚生年金は全額支給されることになります。
 
なお、老齢厚生年金が一部または全部支給停止されていても、老齢基礎年金は全額受給することができます。また、70歳以降も厚生年金が適用される事業所で働いていても、厚生年金保険の加入対象にはなりませんが、在職中の収入に応じた年金の支給調整(支給停止)は行われます。
 

支給停止額を確認しよう

令和8年度の支給停止調整額65万円を用いて、年金額と総報酬月額相当額に応じた支給停止額を計算すると、図表1のとおりとなります。
 
図表1

図表1

 
例えば、基本月額15万円(年金額180万円)の方の場合、総報酬月額相当額が50万円までであれば年金は全額支給されますが、総報酬月額相当額が50万円を超えると支給停止が始まり、総報酬月額相当額が80万円になると全額支給停止となります。
 
なお、総報酬月額相当額は、額面の年収を12で除することで概算することができます。
 

老齢厚生年金を繰下げたらよいのでは?

年金が支給停止されるならば、年金を受給せずに繰下げたらよいのではないかと考える方もいることでしょう。
 
しかし、支給停止される年金を繰下げても、支給停止される部分は繰下げの対象とはならず、支給停止されない部分のみ繰下げられ、将来、繰下げ割合に応じて増額された年金を受給することになります(※3)。
 
したがって、全額支給停止される老齢厚生年金を繰下げても、将来受け取ることはできません。
 

老齢厚生年金が全額支給停止されると……

厚生年金保険の加入期間が20年以上ある人で、65歳になった時点で生計を維持している配偶者がいる場合には、特別加算額を含めて41万5900円(令和7年度額)の加給年金が加算されます(※4)。
 
しかしながら、本人が受給する老齢厚生年金が全額支給停止されると、加給年金の支給も停止されます。なお、老齢厚生年金が一部支給されている場合には、加給年金は全額支給されます。
 

まとめ

老齢厚生年金を受給しながら会社員として働くと、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が65万円(令和8年度額)を超えた場合、超えた額の半分が支給停止となります。
 
特に、老齢厚生年金が全額支給停止されると、配偶者の加給年金も支給停止となりますので、注意する必要があります。
 

出典

(※1)日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
(※2)厚生労働省 令和8年度の年金額改定についてお知らせします
(※3)日本年金機構 年金の繰下げ受給
(※4)日本年金機構 加給年金額と振替加算
 
執筆者 : 辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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