夫は「年収800万円」で40歳の専業主婦…万一の際は「遺族年金で生活できる」と思っていましたが、制度改正で“支給は5年だけになる”って本当ですか? 受給額も試算
本記事では、遺族年金の基本的な仕組みと、制度改正の内容、実際にどれくらい受け取れるのかについて、夫が年収800万円、妻は専業主婦という家庭を事例に解説します。
2級ファイナンシャルプランニング技能士/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など
遺族年金の仕組みとは?
遺族年金には、大きく分けて「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つがあります。
遺族基礎年金は、原則として亡くなった人によって生計を維持されていた子どもか、子どもがいる配偶者に支給される年金です。「子ども」とは原則として18歳到達年度末までの子(または障害のある20歳未満の子)を指します。
一方、遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた人が亡くなった場合に支給されるもので、亡くなった人の配偶者などが対象となります。会社員である夫が亡くなった場合、遺された妻は条件を満たせば、この2つを受け取れます。
現状ではいくらもらえる?
まずは現状の制度において、遺族年金がいくら受け取れるのか見ていきましょう。前提は次の通りとします。
・夫:会社員
・年収:800万円(生涯の平均年収が800万円)
・厚生年金加入:20年(240月分だが、制度上300月分で計算)
・妻:専業主婦
・子:2人
まず遺族基礎年金ですが、基本額(84万7300円)に加えて子ども2人分の加算(各24万3800円)がありますので、受け取れる金額は年間でおよそ130万円です。
続いて遺族厚生年金ですが、これは亡くなった人の報酬や加入期間によって変わります。そして、今回の前提で計算すると約80万円となります。
合計約210万円が遺族年金受給額の目安になりますので、「ある程度の生活はできる」と考える人もいるでしょう。
2028年の制度改正で何が変わる?
近年、遺族厚生年金制度の見直しが議論されており、2028年以降に段階的な改正が予定されています。見直しの背景には、男女格差の是正があります。
現状の遺族厚生年金において、遺された配偶者の性別・年齢による基本的な受給期間の違いは次の通りです。
・30歳未満:5年間
・30歳以上:無期給付
・55歳未満:給付なし
・55歳以上:60歳から無期給付
このような男女格差解消を目的として、制度が完全移行した際には、男女ともに次の支給期間となることが予定されています。
・60歳未満:5年間(配慮が必要な場合は5年目以降も給付が継続)
・60歳以上:無期給付(現状通り)
このように、これまで無期給付となったケースでも、制度の見直しによって、一定期間で給付が終了する可能性があります。
とは言え、実は遺族厚生年金の制度が変わっても、現状の運用から変更がない人もいます。具体的には、次のような場合です。
・60歳以上で死別した人
・子どもを養育する間にある人の給付内容
・改正前から遺族厚生年金を受け取っていた人
・2028年度に40歳以上になる女性
つまり、本記事のように現在40歳で対象の年齢の子を養育している女性は、制度が変わっても従来の制度通りの遺族年金を受け取ることが可能だと考えられます。
制度は徐々に変わる
さらに、この改正は段階的に行われる予定であり、すぐに対象となる全ての人が「5年間の有期給付」になるわけではありません。また、有期給付の額は、新たに加算が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の約1.3倍となる措置なども実施される見込みです。
そのため、「今すぐ遺族年金が大幅に減る」と過度に不安になる必要はありません。ただ、将来的に制度が変わる可能性は理解しておくことが重要です。
まとめ
遺族年金は、万一の際の重要な生活保障ですが、制度は社会の変化に合わせて見直しが進められています。現状では、子どもがいる家庭であれば、遺族基礎年金と遺族厚生年金を合わせて一定の収入を確保できる可能性があります。
一方で、今後は遺族厚生年金の一部が有期化される見込みです。とは言え、すぐに制度が切り替わるわけではありません。制度を正確に理解したうえで、貯蓄や保険、働き方なども含めて万一に備えておくことが重要でしょう。
出典
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和8年度版)
執筆者 : 三浦大幸
2級ファイナンシャルプランニング技能士/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など
