更新日: 2020.03.31 その他年金
【FP解説】年金の「知らないと損!」 65歳になる前に
そのような理由からか、「さあ、もらおう」とすると、すでに手遅れになっている場合も。「しまった!」と、ほぞをかむ思いをしなくてもすむように、あらかじめ知っておきたい知識の数々をお伝えします。
第12回は、「65歳になる前に」です。
執筆者:和田隆(わだ たかし)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。
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目次
65歳は重要な節目
障害年金の分野では、65歳は重要な節目です。65歳になると、年金の請求ができなくなったり、受給権を失ったりすることがあるからです。65歳になる前にしておくべきことをまとめてみました。
65歳になる日は法律上、65歳の誕生日の前日です。したがって、65歳になる前に手続きをしたい場合は、65歳の誕生日の前々日までにしなければなりません。
障害年金の裁定請求には、「本来(障害認定日)請求」「遡及請求」「事後重症請求」「初めて1級または2級の請求」の4種類があります。
また、障害年金に準じるものとして、「特別障害給付金」「特別支給の老齢厚生年金の障害者特例」などがあります。65歳になる前に適切な対応が必要な人は次の人です。
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65歳になる前に請求する
<「事後重症請求」または「特別障害給付金」の請求を予定している人>
「事後重症請求」は、障害認定日には障害等級に該当しなかった人がその障害が重症化したとして行います。また、障害認定日当時のカルテが保存されていないなどの理由で、障害等級に該当していたことを証明できない人もこの請求を行います。
「特別障害給付金」は、かつて初診日に国民年金に任意加入していなかったために、障害基礎年金を請求できない人に対する救済措置です。
どちらも、65歳になる前に請求しなければなりません。このため、何らかの持病がある人や障害を持っている人は、65歳になる前に医師に症状をよく診てもらい、障害等級に該当していないか検討しておくことが大切です。65歳になった後で障害等級に該当していたと分かっても、どうにもなりません。
65歳になる前に医師の診察を受ける
<「初めて1級または2級の請求」を予定している人>
「初めて1級または2級の請求」は、請求が65歳以後でも構いません。ただし、65歳になる前に1級または2級の障害状態になっていたという証明、つまり、診断書が必要になります。
このため、65歳になる前に医師の診察を受け、障害の程度を確認しておいてもらわなければなりません。
「直近1年要件」が使えない人は要注意
<障害年金の請求を予定している人で直近1年要件が使えない人>
障害年金を受給するには納付要件があり、「直近1年要件」または「3分の2要件」のどちらかを満たす必要があります。納付要件は初診日の前日で判断します。
「直近1年要件」は「初診日の属する月の前々月(初診日が平成3年5月1日前にある場合、初診日の属する月前の直近の基準月の前月)までの1年間のうちに保険料の滞納がないこと」とされており、「3分の2要件」は「初診日の属する月の前々月までの被保険者期間があるときは、その被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上であること」とされています。
ところが、初診日が65歳以降である場合は、「直近1年要件」が使えず、「3分の2要件」のみが適用されます。保険料をあまり納めておらず、「3分の2要件」を満たせない可能性のある人は、初診日が65歳以降にならないように早めに受診しておくと良いでしょう。
過去に障害者等級が2級以上になったことがない人も要注意
<障害年金を受給中だが、過去に2級以上になったことがない人>
障害等級が現在3級で、過去に2級以上になったことがない人も要注意です。
障害年金は、障害の状態が重くなると見直しにより、より上級の障害等級に認定されるのですが、過去に2級以上になったことがない人は、65歳以降にこの見直しの対象外になるのです。
そのため、65歳になる前に医師に症状をよく診てもらい、2級以上の障害等級に該当していないか検討しておくべきです。
支給停止中の人は失権に
<障害年金の受給権者だが、現在は支給停止中の人>
3級不該当で65歳になると失権します。ただし、3級不該当から3年を経過していない人は3年を経過するまでは失権しません。
障害厚生年金の受給者だった人だけではなく、障害基礎年金の受給者だった人も同じ扱いです。65歳になる前に医師に症状をよく診てもらうべきです。
障害者特例を受給中の人は気付きにくい
<特別支給の老齢厚生年金の障害者特例を受給中の人>
「特別支給の老齢厚生年金」を受給している人には障害者特例があります。厚生年金の被保険者でなく、かつ、障害等級3級以上に該当する程度の障害の状態にある場合、定額部分も受給できるという制度です。
この制度では、障害者特例を受給中に障害状態確認届を提出する必要がありません。このため、1級または2級に該当する障害状態になっていても気付きにくいのです。65歳になる前に医師に症状をよく診てもらうべきです。
65歳になった後で悔やむことがないように、しっかり準備しましょう。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士