更新日: 2020.06.25 その他年金
年金改革法の成立で、「在職老齢年金」はどう変わる?
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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在職老齢年金とは?
在職老齢年金とは、「働きながら年金をもらう場合、その一部もしくは全額が調整される(差し引かれる)」というものです。一般的な方であれば、退職後は完全にリタイア生活に入ることから、主な収入源は年金のみとなります。
しかし、働きながら年金をもらうことも可能です。ただし、その場合、公的年金以外の収入が給与として入ることから、年金額の一部もしくは全額を調整する(賃金と厚生年金の合計額が月28万円を超えていると年金が減る)形です。
ただし、調整の対象となるのは「老齢基礎年金」以外の年金、つまり「老齢厚生年金」または「退職共済年金」となることに注意が必要です。
■「65歳まで」の調整方法
在職して厚生年金の被保険者である方の中で「65歳まで」については、受給されている老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じて年金額が調整されます。その調整方法は以下のとおりです。
1.在職中であっても総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が28万円に達するまでは年金の全額を支給。
2.総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が28万円を上回る場合は、総報酬月額相当額の増加分に対して、年金額を停止。
3.総報酬月額相当額が47万円を超える場合は、さらに総報酬月額相当額が増加した分だけ年金を支給停止。
(参考:日本年金機構「60歳台前半(60歳から65歳未満)の在職老齢年金の計算方法」(※1))
■「65歳以降」の調整方法
在職して厚生年金の被保険者である方の中で、65歳以上70歳未満の方であれば、65歳から支給される老齢厚生年金は、受給されている老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じて年金額が支給停止となる場合があります。ちなみに計算式は以下のとおりです。
・基本月額
加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額
・総報酬月額相当額
(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計) ÷12
この「標準報酬月額」「標準賞与額」は、70歳以上の方の場合には、それぞれ「標準報酬月額に相当する額」「標準賞与額に相当する額」となります。
(参考:日本年金機構「65歳以後の在職老齢年金の計算方法」(※2))
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今回の改革で年金制度はどう変わる?
今回の見直しでは、「年金の受給開始年齢を60〜75歳に拡大する」ことや「20歳以上のすべての会社員が個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入可能になる」ことが盛り込まれていますが、一番注目すべきは「在職老齢年金の見直し」でしょう。
これは、現在の制度では定年後も働く方にとって、もらえる年金額が少なくなることから、全体的な見直しがなされたといえるでしょう。
在職老齢年金支給停止の判定金額が変わる
今までの制度であれば、在職老齢年金支給停止の判定金額が、「65歳まで」と「65歳以降」で異なっていました。しかし、今回の改革で判定基準が一律「47万円以下」か「47万円超」かで判断することとなります。
したがって、今まで「65歳まで」の方であれば、判定基準が「28万円以下」か「28万円超」となっていたことから、基準が緩やかになるということです。
まとめ
今回の年金改革法により、在職老齢年金の支給停止の判定金額が変わりますが、実施されるのは2022年4月1日の予定です。
もし、ご自身が在職老齢年金の支給調整を受けることが分かっているのであれば、場合によっては年金受給額についてのみ考えた場合、働かないほうが有利になることもあり得ますので、事前にご自身の年金額をきちんと把握しておくことが大切です。
(※1)日本年金機構「60歳台前半(60歳から65歳未満)の在職老齢年金の計算方法」
(※2)日本年金機構「65歳以後の在職老齢年金の計算方法」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員