更新日: 2020.08.27 その他年金

加入期間が短くても、障害厚生年金は受給できる? 一体どれくらいもらえるの?

加入期間が短くても、障害厚生年金は受給できる? 一体どれくらいもらえるの?
会社員として勤務している時にケガや病気によって障害が残った場合、厚生年金保険制度からの障害厚生年金を受けられることがあります。
 
自身の厚生年金加入記録を基にその年金額が計算されますが、会社員となったばかりの若い人で厚生年金加入期間が短い場合、障害厚生年金は少なく計算されてしまうのでしょうか。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

厚生年金加入記録を基に計算する報酬比例の年金

公的年金制度の障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金があります(図表1)。
 
障害基礎年金は障害状態の重いほうから障害等級1級、2級があり、1級か2級に該当した場合が対象となります。一方、障害厚生年金は1級、2級だけでなく、より軽い3級の場合でも対象です。
 
障害基礎年金が障害等級に応じて定額(2020年度の場合、1級は年間97万7125円、2級は年間78万1700円)で支給されるのに対し、障害厚生年金は受給する本人の厚生年金加入記録に基づき、報酬比例で計算、支給されます。
 
障害厚生年金は個々人によって年金額が異なり、在職中の給与や賞与が高くて厚生年金保険料が高い人ほど、そして厚生年金加入期間が長い人ほど受給額も高くなることになっています。
 

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厚生年金加入期間が短くても300月にみなして計算

障害厚生年金を受けるためには初診日(病気やケガで初めて医師等の診療を受けた日)時点で厚生年金被保険者であることが最低条件ですが、障害厚生年金の受給額の計算において、初診日から1年6ヶ月(原則)経過した、障害認定日となる月までの厚生年金加入月数が含まれます。
 
そうなると、会社員になったばかりで給与も低く、厚生年金加入期間も短いような人が障害厚生年金を受けることになった場合、年金額がかなり少なくなると考えられます。しかし、厚生年金加入月数が300月(25年)ない場合については、300月にみなして年金額を計算することになります。
 
例えば、【図表2】のように、社会人になったばかりの6ヶ月目に初診日があり、障害認定日までの厚生年金加入月数が合計24月、平均標準報酬額が25万円、障害等級が2級だった場合では、このまま計算すると障害厚生年金は年間3万4614円です。
 
しかし、300月にみなすと43万2675円で計算されることになります。24月の実加入月数で計算するより多くなり、計算する月数が24月から300月へと12.5倍になりますので、年金額も12.5倍です。障害等級2級ですので、この43万2675円と障害基礎年金78万1700円との合計121万4375円で受給することになります(図表2)。

もし、配偶者がいれば配偶者加給年金が障害厚生年金に加算され、子どもがいれば子の加算が障害基礎年金に加算されることになります。
 

3級の障害厚生年金には最低保障も

3級の障害年金を受給する場合は障害厚生年金のみで、障害基礎年金を受給できません。また、配偶者や子どもがいることによる加算もありません。厚生年金加入月数が短くて、障害基礎年金がないとなると、厚生年金加入月数を300月で計算しても、障害年金の合計受給額は少なくなってしまいます。
 
先述の【図表2】の厚生年金加入記録の場合では、300月にみなしても43万2675円です。そこで3級の障害厚生年金については、計算の結果、年間58万6300円(2020年度)に満たない場合は、58万6300円が最低保障されることにもなっています。
 
障害厚生年金は報酬比例の年金ですが、老齢厚生年金と異なって若いうちに受給する可能性もあるため、以上のように年金額が少なくなり過ぎないよう制度設計がされているといえるでしょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー


 

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