年金担保貸付が廃止。年金生活者はどうすればいい?代わりになる制度は?
配信日: 2020.09.02
唯一の、公的機関が行う公的年金を担保にした貸付事業ですが、令和4年3月末で申込は終了となり、年金担保貸付制度は廃止されます。
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
年金生活者を守るために作られた制度
年金は、年金生活者の生活費に充てられるものです。年金生活者の生活を守るために、本来、年金を担保にした借入れは違法です。ところが、どうしても資金が必要な年金生活者が悪質な業者からでも借入れをし、生活が困窮してしまう事例が発生しました。
それを防ぐ目的で、公的な機関が公的年金を担保に貸付けをする事業が制定されました。
独立行政法人福祉医療機構による年金担保貸付事業は、法律で認められた唯一の公的年金を担保に借入れできる公的機関の事業です。
借入れは、10万から最大200万円(生活物資の場合最大80万円)年金の0.8倍以内、1回当たりの返済額の15倍以内でおおむね2年6ヶ月で完済できる程度と、無理のない範囲で借入れするように融資額に制限がされています。
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年金生活者の困窮を防いでいるはずが
返済のときは、独立行政法人福祉医療機構が年金を受け取り、返済額を差し引いた残りを利用者が受け取ります。返済額は最低1万円で1万円単位です。
貸付利率は平成30年以降2.8%、さらに保証人が立てられなければ公益財団法人年金融資福祉サービス協会の信用保証制度を利用し、保証料の支払いが発生します。借りた分を返せば良いのではありません。
もともと年金収入に余裕がある年金生活者は、手元資金があるので借入れをする可能性も少なく、返済する場合も毎月の余裕で返済できます。しかし、余裕がなくて借りた場合は、生活に充てる年金を返済に充てなければならないので、返済が始まると困窮してしまいます。
貸付条件は1回だけ変更はできますが、返済は待ってくれません。返済分がキチンと差し引かれ、残りの年金しか受け取れません。自己破産しても年金担保の返済もなくなりません。
自立相談支援機関と生活福祉資金貸付制度の利用を
年金担保事業に代わる事業として、自立相談支援機関と生活福祉貸付制度があります。
家計に関する支援が必要な場合、自立相談支援機関に相談ができます。一定の要件を満たす場合は、生活福祉資金貸付制度を利用することができます。
自立相談支援機関は、生活に困りごとや不安を抱えている者に対し、相談内容により、どのような制度やサービスが必要か一緒に考え、具体的に問題の解決に向けた計画を立て支援を行います。また、家計改善事業(家計管理に関する支援、滞納の解消や給付制度の利用に向けた支援、債務整理や、貸付けのあっせん)の利用の案内を行います。それにより、状況借入金を最小限にできます。窓口は、お住まいの地域の自立相談支援機関です。
生活福祉資金貸付制度は、日常生活を送る上で、自立生活に資するために、一時的に必要と見込まれる費用を貸付ける制度です。窓口は市区町村社会福祉協議会です。
利用対象者は、以下のとおりです。
・低所得世帯:必要な資金を他から借入れることが困難な世帯(市町村民税非課税程度)
・障害者世帯:障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者(現在、障害総合支援法によるサービスを利用している等、これと同程度と認められる者を含む)の属する世帯
・高齢者世帯:65歳以上の高齢者の属する世帯(日常生活上、療養または介護を要する高齢者等で、一定の収入要件あり)
目的別に貸付上限や金利が違いますが、低所得が対象の制度のため、無利子・連帯保証人がいれば無利子、連帯保証人がなくても1.5%(不動産担保の場合は最大3%)です(令和2年7月現在)。
年金担保融資は令和4年3月末で申込受付が終了します。それまでは利用可能ですが、利用する前にお近くの自立相談支援機関の窓口に相談してみてください。他に利用できる制度があれば利用して、計画的に最小限の借入れをしましょう。
(参考・引用)
厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要」
厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律 参考資料集(令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布)」
独立行政法人 福祉医療機構「年金担保貸付事業・労災年金担保貸付事業」(PDF)
自立相談支援機関 相談窓口一覧(令和2年5月25日現在)
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者