更新日: 2021.03.18 その他税金
所得税の計算方法は? 一体どのくらいかかっている?
今回は、意外と知らない所得税の計算についてです。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
所得税の仕組み
所得税は1年間の所得から経費と所得控除を差し引いた課税所得に対し、それに応じた税率をかけて算出します。所得はその性質によって10種類に分けられます。
代表的な例でいえば、自営業者の売り上げは事業所得に該当しますし、サラリーマンの毎月の給与は給与所得に該当します。一方、所得控除とは、所得の合計額から一定額を差し引く制度で、税金の計算上、所得税の負担を調整してくれるものです。
例えば、所得が2500万円以下の方に適用される基礎控除、支払った社会保険料に応じて受けられる社会保険料控除、給与所得者が受けられる給与所得控除などがあります。
なお、給与所得者が受けられる給与所得控除は所得から差し引かれる所得控除ではなく、収入から差し引かれる控除で、サラリーマンの経費に相当するものです。
実際に所得税を計算してみましょう
では、年収500万円のサラリーマンAさんの事例を基に計算してみましょう。
・年収500万円
・社会保険料控除や配偶者控除などの合計額は232万円
まずは下記の表に当てはめ、給与所得から控除される給与所得控除を算出します。
■給与所得控除額(令和2年分)
給与等の収入金額 (源泉徴収票に記載の支払金額) |
給与所得控除額 |
---|---|
162万5000円まで | 55万円 |
162万円超から180万円まで | 収入金額×40%-10万円 |
180万円超から360万円まで | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超から660万円まで | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超から850万円まで | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円(上限) |
※国税庁 「給与所得者と税」を基に筆者作成
Aさんの給与所得控除額は、500万円×20%+44万円=144万円となります。給与収入の500万円から144万円を引くと、Aさんの給与所得額は356万円となり、さらにここから所得控除を差し引きます。
Aさんの基礎控除や配偶者控除など各種控除の合計額は232万となるため、課税所得金額は356万円-232万円で124万円です(1000円未満は切り捨て)。この課税所得金額に対して下記の表に基づき税率をかけて、そこから控除額を差し引き、最終的な所得税を算出します。
■所得税の税額表(令和2年分)
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000円から194万9000円まで | 5% | 0円 |
195万円から329万9000円まで | 10% | 9万7500円 |
330万円から694万9000円まで | 20% | 42万7500円 |
695万円から899万9000円まで | 23% | 63万6000円 |
900万円から1799万9000円まで | 33% | 153万6000円 |
1800万円から3999万9000円まで | 40% | 279万6000円 |
4000万円以上 | 45% | 479万6000円 |
※国税庁 「給与所得者と税」を基に筆者作成
Aさんの税率は5%で控除額はないため、最終的な所得税額は下記となります。
124万円×5%=6万2000円
ここからさらに所得税額からの税額控除を差し引き、2.1%の税率をかけたものが復興特別所得税として所得税に上乗せされます。今回、Aさんは所得税の控除についてはないものと仮定するため、最終的な所得税と復興所得税を加算した金額は下記のとおりです。
6万2000円+(6万2000円×2.1%)=6万3300円
※100円未満切り捨て
毎月引かれている所得税の額と違うのはなぜ?
実際に自分の所得税を計算すると、毎月の給与明細や毎年受け取る源泉徴収票に記載されている所得税の金額と、計算した所得税の金額が一致しないことに気づくでしょう。これは、生命保険料控除をはじめとする控除の存在に答えがあります。
こうした控除は年の最後に確定した金額が差し引かれるため、それまでの間は控除が反映されず、毎月の所得税が概算で算出されているためです。最終的な所得税の金額は、年末調整や確定申告で確定されます。
多くの場合、この概算の所得税は多めに見積もられているため、大抵は年末調整や確定申告で払い過ぎたお金が還付されます。
所得税の計算は自分でもできる!
所得税の計算方法は難しく思えますが、自分の所得に関する情報を整理し、順を追って計算していけば算出することが可能です。お金に関する感覚を鋭くするためには自身の所得税の金額はもちろん、計算方法を知っておくに越したことはありません。
この機会に、自身の支払っている所得税について考えてみてはいかがでしょうか。
出典・参考
国税庁 所得税のしくみ
国税庁 給与所得者と税
国税庁 No.1410 給与所得控除
執筆者:柘植輝
行政書士