更新日: 2021.11.22 控除

サラリーマンの経費が対象となる「特定支出の控除」とは、具体的にどんな費用?

執筆者 : 柘植輝

サラリーマンの経費が対象となる「特定支出の控除」とは、具体的にどんな費用?
一定の条件の下、サラリーマンも「給与所得者の特定支出控除」によって業務上の支出を経費として控除の対象とすることができます。
 
特定支出控除とはどういった制度なのか、経費として計上できる支出にはどんな費用があるのか、サラリーマンの経費について解説していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

給与所得者の特定支出控除とは

給与所得者の特定支出控除とは、サラリーマンなど給与を受けている方(給与所得者)がある一定の範囲に属する支出を行ったとき、合計額がその年における給与所得控除額×2分の1を超える場合は確定申告をすることで、その超える部分について経費として給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる制度です。
 

対象となる支出は?

給与所得者の特定支出控除によって所得金額から差し引くことができる支出とは、次の7つの分野に属するものになります。


(1)通勤費

(2)勤務する場所を離れて職務を行うため、通常必要となる旅費

(3)転勤に伴う転居のため、通常必要であると認められる転居費

(4)職務に直接必要な技術や知識の習得を目的として、研修を受けるための研修費

(5)職務に直接必要な資格を取得するための資格取得費

(6)単身赴任などの場合で、勤務地または居所と自宅の間の移動のために通常必要なる帰宅旅費

(7)次に掲げる支出(支出の合計額が65万円を超える場合、65万円まで)で、その支出が職務の遂行に直接必要なものとして給与の支払者より証明がされた必要経費
・書籍代
・制服や作業着など衣服代
・得意先や取引先などに対する接待や贈答などの交際費

要は、仕事に必要であっても、会社が支出してくれない費用については経費として扱うという制度です。
 

給与所得者の特定支出控除の注意点は?

給与所得者の特定支出控除は、一部のサラリーマンにとって非常に役立つ制度ではありますが、注意点があります。控除対象の支出だと思っていたら実は対象外だった、といったことが起こらないように、しっかり確認しておきましょう。
 

給与の支払者から補てんがないこと

特定支出控除の対象となる支出があったとしても、それについて給与の支払者(会社など雇用主)から費用の補てんがあり、補てんされた分について所得税が課されていない場合は対象外になります。
 
例えば、通勤にかかる費用について会社から非課税の交通手当が支給されている場合、その通勤費は特定支出控除の対象外です。また、教育訓練給付金、母子(父子)家庭自立支援教育訓練給付金が支給される部分についても同様に対象外となります。
 

確定申告時に給与の支払者の証明が必要

特定支出控除の適用を受けるには確定申告が必要です。しかし、対象となる支出があるからといって、確定申告をすればそのまま認められるわけでもありません。
 
確定申告の際は、その支出が特定支出控除の対象であることについて、給与の支払者(会社など雇用主)からの証明書を申告書に添付する必要があります。
 
証明書は、該当する支出に応じた所定のフォーマットを国税庁のホームページからダウンロードできるため、それを使用して給与の支払者の証明を得る形になります。詳細については、自身の住所地を管轄する税務署にご相談ください。
 

業務上の支出が多いサラリーマンは特定支出控除の利用の検討を

サラリーマンであっても業務で必要となる支出のうち、給与の支払者からの補てんが得られない部分について、給与所得者の特定支出控除を利用することで自営業者の経費のように確定申告で控除を受けられる場合があります。
 
業務に関連する支出が多いサラリーマンにとっては、特定支出控除は大変効果の大きい制度となります。もし、利用を検討するのであれば、不明点について税務署に問い合わせするなど確認の上、給与の支払者に相談するとよいでしょう。
 
出典
国税庁 No.1415 給与所得者の特定支出控除
国税庁 給与所得者の特定支出に関する証明書
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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