更新日: 2021.12.24 その他税金
どうしよう、税金を期限までに納付できない! どんな場合に猶予が認められる?
税金は必ず納めなければなりませんが、経営や生活に大きな打撃を受け、納税が困難となっている場合は、納税の猶予が認められることがあります。
どのような人が、どのような場合に、納税の猶予が認められるのか見てみましょう。
執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)
田久保誠行政書士事務所代表
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
国税の猶予ってどのような制度?
国税をその納期限までに納付していない場合には、納付するまでの日数に応じて延滞税がかかるほか、督促状の送付を受けてもなお納付されない場合には、財産の差し押さえなどの滞納処分を受けることがあります。
ただし、国税を一度に納付することによって事業の継続や生活が困難となるときや、災害で財産を損失した場合などの特定の事情があるときは、税務署に申請することにより、最大1年間財産の換価(売却)や差し押さえなどの猶予が認められる場合がある制度です。
猶予には「納税の猶予」と「換価の猶予」の2種類があります。
■納税の猶予
災害、病気、事業の休廃業などによって国税を一時に納付することができないと認められた場合や、本来の期限から1年以上たって納付すべき税額が確定した国税を一度に納付することができない理由があると認められた場合に、申請に基づいて納税が猶予される制度です。
■換価の猶予
国税を一時に納付することにより、事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあると認められた場合に、申請に基づいて差し押さえ財産の換価(売却)が猶予される制度です。
新型コロナウイルス感染症の影響により納税困難となった場合はどうなるの?
新型コロナウイルス感染症の影響により、国税を一度に納付することができない場合、下記のすべての要件に該当するとき、税務署に申請することにより原則として1年以内の期間に限り、換価の猶予が認められます。
1.国税を一度に納付することにより、事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあると認められること。
2.納税について誠実な意思を有すると認められること。
3.猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと。
4.納付すべき国税の納期限から6ヶ月以内に申請書が提出されていること。
また、担保の提供が明らかに可能な場合を除いて原則担保は不要です。さらに、すでに滞納がある場合や、滞納となってから6ヶ月を超える場合であっても、猶予が受けられる場合もあります。そしてこの猶予が認められると、以下のようになります。
1.原則として1年間納税が猶予されます(状況に応じてさらに1年間猶予される場合があります)。
2.猶予期間中の延滞税が軽減されます。ちなみに令和3年中の場合は1.0%/年となります(通常8.8%/年)。
3.財産の差し押さえや換価(売却)が猶予されます。
上記以外の個別の事情がある場合はどうなるの?
これは一例ですが、以下のような個別の事情がある場合は、延滞税なしで納税の猶予が認められることがあります。
1.災害により財産に相当な損失が生じた場合
例:新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸し資産を廃棄した場合
2.ご本人またはご家族が病気にかかった場合
例:納税者ご本人または生計を同じにするご家族が病気にかかった場合、国税を一時に納付できない額のうち医療費や治療等に付随する費用
3.事業を廃止し、または休止した場合
例:納税者の方が営む事業について、やむを得ず休廃業をした場合、国税を一時に納付できない額のうち、休廃業に関して生じた損失や費用に相当する金額
4.事業に著しい損失を受けた場合
例:納税者の方が営む事業について、利益の減少等により、著しい損失を受けた場合、国税を一時に納付できない額のうち、受けた損失額に相当する金額
上記の納税の猶予が認められると、
1.原則として1年間納税が猶予されます(状況に応じてさらに1年間猶予される場合があります)。
2.猶予期間中の延滞税が軽減、または免除されます。
3.財産の差し押さえや換価(売却)が猶予されます。
まずは相談してみよう
もし納税が難しい場合は、税務署に相談するようにしましょう。もっとも問題になるのは何もしないことです。納税が遅れると延滞税が課せられ、さらに支払いが困難な状況に陥ってしまいます。
また、同様の措置は地方税にもありますので、お近くの市区町村役場等にお問い合わせください。
出典
国税庁「新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ」
財務省「新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者の皆様へ」
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表