更新日: 2022.02.16 確定申告
個人事業主必見、青色申告で受けられる特典と始め方は?
さまざまなメリットのある「青色申告」は、節税とともに、事業の発展にもつながります。ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)
CFP🄬認定者・相続診断士
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/
個人事業主やフリーランスの義務? 「確定申告」
個人の所得に対して課税される「所得税」は、1月1日から12月31日までの1年間で得た収入から経費、各種所得控除を差し引いた所得金額に税率をかけて税額を計算します。所得は、給与所得や事業所得、不動産所得など性質によって10種類に分かれています。原則として、すべての人がそれぞれの所得について確定申告をする必要があります。
要件をみたした会社員の場合は、例外的に勤務先での年末調整で税額が決定されるため確定申告しなくてもよいとされています。
一方、個人事業主やフリーランスなどの事業所得を得る人は、1年間で得た収入(売上)や支出(経費)について申告し、納税しなければなりません。確定申告を苦手と感じる方や、悩みのタネという人も多いでしょう。とは言え、家計と同様に、入ってくるお金と出ていくお金について把握しておくことは、事業を行ううえで不可欠です。日頃から管理を習慣化することで確定申告の作業も効率化することができます。
また、きちんと確定申告を行うことは、節税にもつながります。その代表的な選択肢として、「青色申告」はぜひ活用したい制度です。
どうせなら「お得」な方がいい! 「青色申告」という選択
「青色申告制度」は、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人が所得金額の計算などにおいて有利な扱いを受けられる制度です。青色申告の対象となるのは、事業所得、不動産所得、山林所得がある人です。
では、青色申告制度のメリットを見てみましょう。
メリット1 青色申告特別控除
条件により、控除を受けることのできる金額は異なります。
(1)簡易な記帳を行う場合の控除額は10万円
(2)以下の要件をクリアする場合には控除額55万円
1、正規の簿記での記帳(複式簿記)
2、貸借対照表と損益計算書を添付
3、期限内申告
4、事業所得もしくは不動産所得を得る事業であること
さらに、e-Tax(インターネットを利用したデータ送信による提出)もしくは、電子帳簿保存法に対応する会計ソフトを用いて記帳し、かつ、電子帳簿保存の承認申請書を税務署に提出した場合には、控除額10万円が上乗せされます。
つまり、財務諸表と言われる貸借対照表や、損益計算書の作成できる複式簿記での記帳を行い、期限内にe-Taxで申告すれば、最大65万円の控除が可能です。所得税の税額計算のベースとなる課税所得金額が下がることで、家族構成などにより異なりますが、税負担は数万円から数十万円抑えられるでしょう。
メリット2 青色事業専従者給与
家族が従業員として働いている場合には、適正な範囲内であれば必要経費に算入できます。
メリット3 純損失の繰り越しと繰り戻し
事業で損失が生じて赤字になった場合、その後、順調に伸びて黒字となり税負担が生じても、翌年以降3年間にわたって所得金額(純損失)を繰り越すことができます。また、思いがけず黒字から赤字になった場合でも、前年に繰り戻すことができ、前年に納めた所得税の還付を受けることができます。
メリット4 家事関連費用の必要経費算入
家事関連費用のうち、電気代や水道光熱費、家賃など事業に使ったことが明らかな部分について必要経費として認められます。
メリット5 貸倒引当金の繰り入れ
取引先の経営不振など資金の回収が困難となりそうな場合、貸し倒れにそなえて事前に必要経費として計上しておくことが認められています。
メリット6 特別償却や割増償却
事業用に資産を取得した場合、通常は耐用年数に応じて減価償却で経費処理しますが、「少額減価償却資産の特例」により30万円未満であれば、一括償却が認められます。
青色申告者になるためには
青色申告者になるためには、「青色申告承認申請書」を事業を開始した日から2ヶ月以内に納税地の税務署に提出します。個人事業の開始にあたり開業から1ヶ月以内に提出する「個人事業の開業届」とともに申請すれば一度ですみます。承認を受けると青色申告ができます。
承認を得ていない(承認申請書を提出していない)と白色申告となり、これらのメリットを享受することができません。新たに青色申告の申請をする場合は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の税務署に提出します。
日々の積み重ねがポイント
お得なのは分かっていても「複式簿記での記帳」となると、「書類作成が面倒」「難しい」という印象を持ってしまうのかもしれません。ただ、大変なのは慣れるまでで、日々の会計管理が整えば、それほど難しくはありません。
複式簿記は、正しく記帳されていれば貸方と借方が等しくなるため、不正が起こりにくく、また誤りを発見しやすいのが特長です。損益計算書や貸借対照表は、現状分析や次年度への計画づくりにも有効なツールです。
青色申告制度を選択することで、節税しつつ、事業と向き合い発展へつながるとも言えます。ぜひチャレンジしてみてください。
なお、くれぐれも確定申告は「期限までに」提出するようにしましょう。無申告加算税や延滞税が課されるとともに、青色申告の承認を取り消されることもありますので注意が必要です。
出典
税務署 「はじめてみませんか? 青色申告」(令和3年5月)
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士