更新日: 2022.03.09 控除

医療に関係する費用なのに「医療費控除」で認められていない内容とは?

医療に関係する費用なのに「医療費控除」で認められていない内容とは?
1年間にかかった医療費が10万円以上となった場合、確定申告を行うことで医療費控除の適用を受け、所得税の一部について還付を受けることができます。
 
ただ、医療費控除の対象となるかどうかについて判断が難しいものもあります。
 
通常、医療費控除の対象となるものは「医療に関係する費用」とされていますが、中には病院やクリニックで受けた施術費用などでも、医療費控除の対象として認められないものもあります。それはいったいどのようなものなのでしょうか。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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医療費控除の対象となるもの

ではまず、医療費控除の対象となるものについて確認しておきましょう。医療費控除の対象となるものには、以下のものが当てはまります。

1.医師による診療の対価として支払った治療費
2.治療や療養に必要な薬代
3.鍼や灸などの施術の対価として支払うもの
4.介護保険制度を利用した際に支払った自己負担額
5.医師による診療を受けるために病院へ行く際の交通費
6.治療に必要な義足や杖、補聴器などの購入費用
7.入院時の部屋代や食事代
など

 

医療費控除の対象とならないもの

上記に挙げたものが主な医療費控除の対象です。どれも医療に関係する費用ですので納得がいくのではないでしょうか。
 
しかし、この中には条件によっては医療費の対象とならないものがあります。
 

■健康診断の費用や医師等に対する謝礼金

医師による治療の対価として支払った治療費は、原則として医療費控除の対象です。しかし、健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは医療費控除の対象とはなりません。
 
また、美容整形など容姿をよくする目的で受けた費用も対象外です。同時に歯科矯正費用についても、治療と認められない限り対象とはなりません。ほくろの除去費用についても同様です。
 
また、差額ベッド代についても、医療費控除の対象外となる点は覚えておきましょう。
 

■病気を予防するために服用する薬代

医療費控除の対象として認められる薬代は、あくまでも医師が診察した結果、治療に必要だとして処方した薬代です。
 
したがって、日頃から病気を予防するために飲んでいるサプリメント代や、自身の健康を促進するために飲んでいるものなどは、医療費控除の対象とはなりません。
 
ただし、かぜをひいた際に自分で購入した市販のかぜ薬代は、医療費控除の対象です。
 

■鍼や灸などの施術は治療目的であることが条件

治療目的で行う鍼や灸などの施術治療は医療費控除の対象ですが、疲れを取るためや体調を整えるだけの目的の場合は、医療費控除の対象外です。
 

■交通費はあくまでも公共交通機関もしくはタクシー利用に限られる

病院への通院の際に必要となる交通費は、公共交通機関もしくはタクシーを利用した際に発生する費用に限られます。
 
自家用車で通院した際のガソリン代や駐車場代は、控除の対象とはなりませんので注意が必要です。
 
また、タクシー代についても、公共交通機関を利用できないなどの理由がある場合にのみ、医療費控除の対象となります。
 
長期で入院している際に、年末年始に外出許可をもらって自宅に帰るケースがありますが、その際の交通費についても、医療費控除の対象とはなりません(※2)。
 

■療養の世話に対する対価

治療を受けるにあたり、お世話になった看護師さんなどに支払った療養上の世話の対価は、医療費控除の対象です。
 
また、家政婦(夫)を雇って病院に付き添ってもらうなどした際の費用についても医療費控除の対象になりますが、その額は契約で決められた所定の金額が基準になります。したがって、心付けなどの費用は医療費控除の対象とはなりません。
 

■特定保健指導を受けた際の対価

メタボリック症候群などの検査結果によって特定保健指導(動機付け支援)を受けることがあります。その際に指導料を支払ったとしても、それは医療費控除の対象外です。
 
さらに、指導を基にスポーツクラブに通い始めた場合の施設利用料についても、当然に医療費控除の対象外です。
 

まとめ

医療費控除の対象となるのは、医療に関係した費用ですが、最終的に控除の対象となるかどうかは、その目的や内容によって判断されます。判断に迷った際には、さまざまな例が国税庁のホームページ(※3)に掲載されていますので、参考にしてみましょう。
 
それでも判断に迷う場合は、税務署に問い合わせて確認してみることをおすすめします。
 
医療費の自己負担割合は増加傾向にあります。今後は後期高齢者でも一定以上の収入がある場合は、その人の自己負担割合が現行の1割から2割に改定されることが決まっています。
 
また、高額医療費制度についても改定がなされており、収入が多ければ多いほど補てんされる金額は少なくなる傾向にあります。
 
医療費控除は、そういった中では今後、節税効果の高い控除として注目されていく可能性がありますので、控除の仕組みやどのようなものが対象となるのか、一度確認しておきましょう。
 
出典
(※1)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1122 医療費控除の対象となる医療費
(※2)国税庁 長期入院中の者の年末・年始の帰宅旅費
(※3)国税庁 所得税目次一覧/(所得控除)●医療費控除
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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