更新日: 2022.03.10 控除

災害減免法によって減免される税額はいくら? シミュレーションを紹介

執筆者 : 大泉稔

災害減免法によって減免される税額はいくら? シミュレーションを紹介
2022年1月と2月、日本海側では不安定な天候とともに、すさまじい豪雪が降った日がありました。
 
災害などで家屋が損壊された方は、災害減免法により所得税の減免を受けることができる可能性があります。本稿では、所得税の災害減免法について、雑損控除と比べながらみていきたいと思います。
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

災害減免法、対象になるのは?

災害減免法は、災害により、住宅や家財の損害金額がその時価の2分の1以上ある場合が対象ですが、保険金等の補てんがある場合には、損害金額から保険金額を差し引きます。
 
また、災害に遭った年の所得金額が1000万円以下という制限もあります。
 
なお、災害によって生活に通常必要な資産が損害を受けた場合、雑損控除の確定申告も可能です。災害減免法と雑損控除、どちらか有利なほうを選んで申告できます。
 
ちなみに、横領や盗難によって受けた損害は雑損控除では所得控除の対象ですが、災害減免法では対象外です。
 

災害減免法は税額の減免

災害減免法は確定申告すると、税額が減免(税額控除)されます。具体的には、以下のとおりです。

■所得の額が500万円以下の場合:所得税の全額免除
■所得の額が500万円を超え750万円以下の場合:所得税が2分の1に軽減
■所得の額が750万円を超え1000万円以下の場合:所得税の4分の1の軽減

雑損控除は所得控除で、その年の所得から控除しきれなかった場合には、翌年以後3年間にわたり繰り越して控除できますが、災害減免法には繰越控除はありません。
 
災害減免法と雑損控除のどちらかを選択する場合、雑損控除は繰越控除も視野に入れたほうがよいでしょう。
 

シミュレーション

以下の前提条件(架空の家族)にて、本人の災害減免法と雑損控除のシミュレーションをしてみました。所得税には復興特別所得税を含みます。

<前提条件>

家族構成:4人家族(本人=夫、専業主婦で無職の妻、大学生の子ども、高等学校生の子ども) 
本人の年間所得を600万円(1)

以下、いわゆる人的控除です。
 
配偶者控除38万円、大学生の子どもの扶養控除63万円、高等学校生の扶養控除38万円、本人の基礎控除48万円
 
人的控除の合計額は187万円(2)です。
 
続いて、いわゆる物的控除です。
 
生命保険料控除は4万円と仮定、社会保険料控除は68万円とします。
物的控除の合計額は72万円(3)です。
 
最後に課税総所得金額の計算を行います。
 
(1)600万円 - (2)187万円 - (3)72万円 = 341万円(4)

所得税額は341万円×20%-42万7500円=25万4500円
復興特別所得税額は25万4500円×2.1%≒5300円(100円未満切り捨て)
納付する所得税額は、所得税額と復興特別所得税額の合計25万4500円+5300円=25万9800円です。

では、災害減免法と雑損控除のシミュレーションです。
 
■災害減免法
本人の年間所得は600万円ですから、災害減免法では税額の2分の1が軽減されますので、納める所得税額は25万9800円÷2=12万9900円です。
 
■雑損控除
続いて雑損控除の場合です。いずれの場合も、災害関連支出はなしとします。
雑損控除の額は損害金額-年間所得の10%で求めることができます。

・ケース1 損害金額が100万円の場合

雑損控除の額は100万円-600万円×10%=40万円(5)
所得税の額は((4)341万円-(5)40万円)×10%-9万7500円=20万3500円
復興特別所得税の額は20万3500円×2.1%≒4200円(100円未満切り捨て)
納付する所得税額は、所得税額と復興特別所得税額の合計20万3500円+4200円=20万7700円です。

・ケース2 損害金額が200万円の場合

雑損控除の額は200万円-600万円×10%=140万円(6)
所得税の額は((4)341万円-(6)140万円)×10%-9万7500円=10万3500円
復興特別所得税の額は10万3500円×2.1%≒2100円(100円未満切り捨て)。
納付する所得税額は、所得税額と復興特別所得税額の合計10万3500円+2100円=10万5600円です。

・ケース3 損害金額が300万円の場合

雑損控除の額は300万円-600万円×10%=240万円(7)
所得税の額は((4)341万円-(7)240万円)×5%=5万500円
復興特別所得税の額は、5万500円×2.1%≒1000円(100円未満切り捨て)
納付する所得税額は、所得税額と復興特別所得税額の合計5万500円+1000円=5万1500円です。

以上のように、損害金額が100万円の場合には災害減免法の申告が有利ですが、損害金額が200万円または300万円ですと、雑損控除のほうが所得税の額が少なくなります。
 

まとめに代えて

上述のシミュレーションでは、損害金額が300万円の場合、所得税が20万円ほど少なくなりますので有利になります。
 
しかし、そもそもの損害額300万円と比べれば、少なくなった所得税額はその1割にもおよびません。
 
万が一の損害に備え、保険等でカバーすることも検討したほうがよいでしょう。
 
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき (雑損控除)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除
国税庁 災害により被害受けられた方へ(平成30年6月)
国税庁 災害等にあったとき
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.2260 所得税の税率
国税庁 個人の方に係る復興特別所得税のあらまし
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役

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