更新日: 2022.03.13 確定申告
会社員の税金の支払い方はどうなっているか? 源泉徴収、年末調整、確定申告のプロセスとその意味を解説 その3 <確定申告>
個人事業主やフリーランスと違い、給与所得者にとっては確定申告が義務ではなく、特殊な場合にだけ必要となります。この記事では、特殊な場合とは何かについて説明し、給与所得者対象の確定申告の活用方法について解説したいと思います。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
確定申告とは?
確定申告とは、1月1日~12月31日の1年間の所得を取りまとめて税金を計算し、国に納める税額を申告・納税する手続きのことをいいます。確定申告は原則、翌年の2月16日~3月15日までに行わなければなりません。
確定申告を行う義務があるのは、主に個人事業主やフリーランスの方、不動産収入や株取引による所得、一時所得などがある方です。はじめに述べたように、給与所得者の場合は源泉徴収と年末調整により、所得税の納税、精算の手続きが済んでいるので、特殊な場合を除いて確定申告を行う必要はありません。
給与所得者にとって確定申告が義務になる場合とは?
給与所得者にとって確定申告が義務となるのは、以下のようなケースです。
(1)給与の年間収入金額が2000万円を超える場合
(2)1ヶ所から給与の支払いを受けていて、かつ、給与所得および退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合
(3)2ヶ所以上から給与の支払いを受けていて、次の条件に当てはまる場合
給与の全部が源泉徴収の対象となっており、かつ、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得および退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える場合
年収が2000万円を超える場合だけでなく、2000万円以下でも給与以外の副業などで20万円以上の所得がある場合や、給与を2ヶ所以上から受け取っている場合で「主たる給与」以外の給与所得、およびその他の所得の合計額が20万円を超える場合は、給与所得者の方も確定申告が必要になります。
義務ではないが、給与所得者でも確定申告をしたほうがいい場合とは?
年末調整をきちんと済ませ、上記のような特殊なケースに当てはまらない方でも、還付金を受け取るために確定申告をしたほうがいい場合があります。この場合は、確定申告ではなく税金の還付を受けるための「還付申告」となります。
還付申告は翌年の1月1日から申告が可能で、5年以内であればいつでも行うことができます。「確定申告」だから3月15日まででないと受け付けてくれないということはありませんので、税務署が混まない4月以降に申告するのもひとつの方法です。
具体的には次のケースが挙げられます。
(1)中途退職で年末調整を受けていない場合
この場合は税金が納め過ぎになっていることがあるので、確定申告をすれば税金の還付を受けられる可能性があります。
(2)年末調整の対象にならない所得控除を申告する場合
年末調整の対象にならない所得控除とは、雑損控除、寄附金控除(ふるさと納税控除含む)、医療費控除の3種類の控除をいいます。これらの控除に当てはまる場合、還付申告を行えば税金が還付されます。
(3)年末調整で所得控除の申告を忘れた場合
生命保険料控除など年末調整までに必要な書類が間に合わなかったり、うっかり手続きを忘れたものがあった場合でも慌てる必要はありません。翌年以降に還付申告をすれば還付金が戻ってきます。
(4)初年度の住宅ローン控除を受ける場合
返済期間10年以上の住宅ローンを利用して、一定の住宅を購入、新築または増改築を行った場合には住宅ローン控除の対象になりますが、初年度の場合は確定申告をしないと控除が受けられません。
還付申告なので義務ではありませんが、還付金を受け取れるので、こちらも申告したほうがいい場合となります。なお、2年目以降の住宅ローン控除は年末調整での申告が可能です。
まとめ
今回は、給与所得者にとっての確定申告について解説しました。これまで3回にわたって給与所得者の源泉徴収、年末調整、確定申告の意味と、その活用方法について述べてきましたが、最後に要点をまとめると次のようになります。
1. 源泉徴収
給与所得者の所得税は源泉徴収により、給与から天引きされる。源泉徴収は、国にとっては安定した税収をタイムリーに確保するための手段であり、給与所得者にとっては手間のかかる確定申告を行わずに納税ができるという、双方のメリットがある制度である。
ただし、源泉徴収で差し引かれる税額は仮計算によるものなので、後日、精算をする必要がある。
2. 年末調整
給与所得者にとって、年末調整で所得税の納税・精算は終了する。年末調整は会社が給与所得者に代わり、各種控除を反映した税額計算を行ってくれるものであり、12月の給与で源泉徴収と年末調整の差額が精算される。
ただし、特殊な場合においては給与所得者でも確定申告が義務となることがある。
3. 確定申告
給与所得者で確定申告が義務化するのは、以下のようなケースなどに限られる。
(1)2000万円以上の給与収入がある場合
(2)副業などで給与所得以外に一定の所得がある場合
(3)2ヶ所以上から給与を受領し、一定金額以上の給与所得について年末調整が行われていない場合
また、義務ではないが確定申告をしたほうがいい場合として次のようなケースがあり、還付申告によって還付金を受け取れる可能性がある。
(1)中途退職により年末調整を行っていない場合
(2)年末調整の対象となっていない所得控除(雑損控除、ふるさと納税控除を含む寄附金控除、医療費控除)の申告をする場合
(3)年末調整で忘れた所得控除の申告をする場合など
これで、給与所得者の税務の大筋の流れはご理解いただけたと思います。それぞれの制度の役割を理解し、有効活用することをお勧めします。
出典
国税庁 給与所得者の確定申告
国税庁 No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー