更新日: 2022.04.29 控除
【納税不要?】居住不動産の売却で3000万円控除が可能! 夫婦で2倍!
夫婦共有名義であればそれぞれに適用されるので、6000万円の控除を受けることが可能です。
ここでは、3000万円控除が可能となる要件について説明します。
執筆者:宮本建一(みやもと けんいち)
2級ファイナンシャルプランニング技能士
居住用不動産を売って利益が出ると譲渡所得税が発生
不動産を売却して、当初取得した金額より高い値段で売れると、売却益が出ます。この売却益が、不動産を売却した際の所得(譲渡所得)と考えがちですが、実はそうではありません。
譲渡所得税を計算する前に譲渡所得の計算方法について説明します。
・譲渡所得とは
譲渡所得とは、一般的に土地や建物、株式、ゴルフ会員権などを譲渡することによって生じる所得です。
・譲渡所得の計算方法
通常、譲渡所得は以下の算式で求めることができます。
譲渡所得金額=総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
算出式の取得費、譲渡費用について
取得費
取得費=今回売却する不動産を購入した価額取得代金+(建築代金、設備費、改良費)-減価償却費
・減価償却費
建物は年数が経つと価値が減少していくため、購入価格から減額します。この減額する費用を減価償却費といいます。一般的に、減価償却費は次のように計算します。
減価償却費=取得価格×0.9×償却率×経過年数
償却率は建物の構造などで異なります。
【図表1】
建物の構造 | 居住用住宅 | |
---|---|---|
耐用年数 | 償却率 | |
木造 | 33年 | 0.031 |
軽量鉄骨 | 40年 | 0.025 |
鉄筋コンクリート | 70年 | 0.015 |
(参考:国税庁「減価償却費」の計算について)
譲渡費用
不動産を譲渡するためにかかった費用(例:印紙税、仲介手数料など)
・譲渡所得税の算出
譲渡所得税は次のように計算します。
譲渡所得税=譲渡所得×税率
税率について
国税庁によると所有期間ごとの税率は図表2のとおりとなります。
【図表2】
所有期間 | 税率(所得税・住民税・復興特別所得税の合計) |
---|---|
5年以下 | 39.63% |
5年超~10年以下 | 20.315% |
10年超 | 6000万円以下の部分 14.21% 6000万円超の部分 20.315% |
所有期間:売却した年の1月1日現在の期間
注意点として、所有期間は売却した年の1月1日時点で計算するので、図表3の例のように、実際の所有期間は5年超にもかかわらず、税率での所有期間が5年以下と判断されるケースがあります。
【図表3】(例)
取得年月 | 2017年2月 |
売却年月 | 2022年3月 |
所有期間 | 5年1ヶ月 |
2022年1月1日現在の所有期間 | 4年11ヶ月 |
適用税率 | 39.63%(5年以下に該当) |
3000万円特別控除とは?
不動産を譲渡したときに発生する譲渡所得から控除できるもののひとつに、3000万円特別控除があります。
・3000万円特別控除の定義
3000万円の特別控除とは、居住用財産を売却したときに、所有期間にかかわらず譲渡所得から3000万円控除できる特例をいいます。
ただし、マイホームを売却することが条件となり、居宅以外、例えば別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋を譲渡したときには該当しないので、注意が必要です。
・3000万円特別控除の要件
3000万円の特別控除を受けるにはいくつかの要件があります。国税庁によると次のとおりとなります。
・譲渡する居住用財産に住まなくなった日から3年を経過する日の属する12月31日までに売ること
・売った年の前年、前々年にこの特例またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと
・売った年、その前年および前々年にマイホームの買い替えやマイホームの交換の特例を受けていないこと
・売った家屋や敷地等について収容等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
・災害によって滅失した家屋の場合、住まなくなって3年を経過する日の属する12月31日までに売ること
・売り手と買い手が親子や夫婦など特別な関係でないこと
3000万円特別控除を受けようと検討する場合、
・住まなくなった年の3年前から税制面で控除などを受けていないか
・譲渡をする場合、住まなくなって3年を経過する日の属する12月31日を越えていないか
をチェックする必要があります。
・共有名義なら2倍の控除
3000万円特別控除の対象者は、居住用財産を譲渡した一定の要件を満たす人です。譲渡した居住用財産が夫婦共有名義であれば、夫婦それぞれが3000万円特別控除を受けられます。
例えば、居住用財産を譲渡した際の所得が5000万円で夫名義であれば、5000万円から3000万円を引いた2000万円に対して税金が掛かります。
一方、夫婦名義(持分2分の1ずつ)であれば2人分、つまり6000万円控除を受けることとなり、税額がゼロとなります。注意点として、共有名義でおのおの3000万円の特別控除を受けたときは、翌年にそれぞれが確定申告を行う必要があります。
まとめ
3000万円特別控除について説明しました。
さまざまな要件はありますが、居住用財産を譲渡するときに3000万円の控除を受けられるのは大きな違いです。総務省統計局が5年ごとに調査している「平成30年住宅・土地統計調査のはなし」によると、総住宅数は6063万戸、増加率は5.3%であり、調査ごとに増加しています。
居住用財産を売却する機会があれば、ぜひ3000万円特別控除が受けられるのかを確認されることをおすすめします。
出典
国税庁 土地や建物を売ったとき
総務省統計局 平成30年住宅・土地統計調査のはなし
執筆者:宮本建一
2級ファイナンシャルプランニング技能士