更新日: 2022.05.06 控除

大学生が知っておきたい、アルバイトと税金・社会保険の関係とは?

執筆者 : 新美昌也

大学生が知っておきたい、アルバイトと税金・社会保険の関係とは?
大学生になって、初めてアルバイトを始める人も多いと思います。中には、日本学生支援機構の給付型奨学金を受給している方で、奨学金だけでは十分ではないので、「学費や生活費を稼ぐため」にアルバイトをせざるを得ない方もいるでしょう。
 
しかし、アルバイトをして稼ぎすぎると、自分だけではなく親の税金の負担が増えます。さらに、給付型奨学金の受給額にも影響が出てきます。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

給与収入が年間103万円を超えると所得税がかかる

給与収入にかかる所得税は、個人の1月から12月までの1年間の、すべての給与収入(複数の勤務先があれば、その合計の金額)から給与所得控除と各種所得控除を引き、残りの課税所得に税率(5%~45%)をかけて算出します。なお、交通費は、日給や時給に含まれる場合は収入とみなされます。
 
アルバイトなど、給与所得者に適用される給与所得控除額は55万円、すべての人に適用される基礎控除額は48万円なので、給与収入が年間103万円以下は非課税となります。

<アルバイト代が年120万円の計算例>

課税所得:123万円-103万円=20万円
所得税額:20万円×5%(※1)=1万円

さらに、納税者自身が勤労学生であるときは、27万円の所得控除(勤労学生控除※2)を受けることができますので、給与所得だけの人の場合は、給与収入130万円まで所得税がかかりません。
 
なお、勤労学生控除を受けるには、次の3つの要件をすべて満たすことが必要です。

(1)給与所得などの勤労による所得があること
(2)合計所得金額が75万円以下で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
(3)特定の学校の学生、生徒であること

 

給与収入が年間103万円を超えると親の税金が高くなる

給与収入が年間103万円を超えても、課税される所得金額194万9000円まで所得税率5%(※1)なので、もっと稼ごうと思った方もいるのではないでしょうか。
 
しかし、給与収入が年間103万円を超えると親の税金が高くなるので注意が必要です。
 
親が受けられる所得控除のひとつに扶養控除があります。所得税法上の控除対象扶養親族(配偶者以外・16歳以上)となる人がいる場合に、一定の金額(38万~58万円※3)の所得控除が受けられます。
 
例えば、19歳以上23歳未満の方の控除額は63万円、16歳以上18歳未満の方の控除額は38万円です。年間の合計所得金額が48万円(給与収入103万円)を超えると、親の扶養に入ることができませんので、親の扶養に入っている人は稼ぎすぎに注意が必要です。
 
63万円の控除がなくなるということは、親の課税所得が63万円増えることを意味します。親の所得税率が10%とすると、6.3万円の所得税の負担が増えます。場合によっては、所得税率が10%から20%に上がってしまうかもしれません(※1)。
 
給与収入が年間103万円を超える場合には、親に相談したほうがよいでしょう。
 

給与収入が年間130万円を超えると社会保険料の負担も増える

さらに、給与収入が年間130万円を超えると社会保険料の負担も増えますので注意が必要です。
 
親の健康保険に扶養者となっている場合、アルバイトの年収が130万円以上となると扶養から外れてしまい、自分で国民健康保険の保険料を負担しなければなりません。
 
なお、従業員数501人(※)以上の会社に適用される短時間労働者の「106万円の壁」については、昼間部学生は適用対象外となっています。休学中や夜間学生は対象となります。
(※)2022年10月~従業員数101人、2024年10月~従業員数51人以上(※4)
 
また、20歳になると国民年金に加入する必要があります。学生本人の収入が【128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等以下】を満たせば、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」を利用できます。
 

給与収入がおよそ年間100万円を超えると住民税がかかる

所得税だけではなく住民税にも注意する必要があります。住民税には、定額負担の「均等割」と所得金額に応じて負担する「所得割」があります。均等割は自治体によって違いますが、通常5000円です。
 
次に該当する方は、住民税がかかりません。

1.1月1日現在、生活保護法による生活扶助を受けている方
2.障害者・未成年者・寡婦・ひとり親の方で、前年の合計所得が135万円以下の方
3.前年の合計所得が、次の計算式により得られた金額以下の方(某区の場合)

 (1)35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の人数)+10万円+21万円(※)
 (2)同一生計配偶者・扶養親族がいない場合は、45万円(※)。

(※)住む地域により、金額は異なる。

例えば某区の場合、大学生など成年の学生は年間の給与収入100万円以下、高校生など未成年は204.4万円以下まで住民税非課税です。
 
大学生には以前、成年と未成年がいましたが、成年年齢が、2022年4月から、現行の20歳から18歳に引き下げられますので、年間の給与収入100万円を超えると住民税が課税され得ます。
 
高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金および授業料等減免)を受けている方は、【市町村民税の所得割の課税標準額×6%-(調整控除の額+税額調整額)】の計算式に基づいて判定されますが、その際、本人の所得も考慮されるますので、アルバイトを頑張りすぎると支給区分に影響が出ますので注意しましょう。
 

出典

(※1)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.2260 所得税の税率
(※2)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1175 勤労学生控除
(※3)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1180 扶養控除
(※4)日本年金機構 令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。