更新日: 2022.07.19 その他税金
どっちがお得なの? 暦年贈与と相続時精算課税制度の比較!
一定額までの贈与について、贈与税が非課税となるので、結果として相続税を軽減できます。
どちらも贈与税に関する制度ですが、どちらの方がよりお得なのでしょうか?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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暦年贈与と相続時精算課税制度の比較
暦年贈与と相続時精算課税制度は贈与税の非課税制度ですが、併用ができません。
自身の状況に応じて、使い分けるためにそれぞれの特徴を理解しておきましょう。
【図表1】
暦年贈与 | 相続時精算課税制度 | |
---|---|---|
非課税限度額 | 毎年110万円 | 累計2500万円 |
対象となる財産 | すべての財産 | すべての財産 |
贈与者の対象者 | 制限なし | 贈与の年の1月1日時点で 60歳以上の父母または祖父母 |
受贈者の対象者 | 制限なし | 贈与の年の1月1日時点で 20歳以上の子や孫 |
非課税限度額を超えた税率 | (贈与額−110万円)×10〜55%(累進課税) | (贈与額−2500万円)×一律20% |
申告の有無 | 不要 | 必要 金額に関係なく贈与税申告書と相続時精算課税選択届出書を提出 |
相続税との関係 | 相続発生から3年以内の 贈与財産は相続財産に加算 |
時期に関係なくすべての贈与財産を相続財産に加算 |
出典:国税庁 埼玉りそな銀行HPより作成
暦年贈与と相続時精算課税制度ではどっちがお得?
暦年贈与と相続時精算課税制度では、どちらの方がお得なのでしょうか? この問題について考えるときに、贈与税と相続税の両税に着目する必要があります。
被相続人が5000万円の財産を保有していた場合に毎年200万円の非課税枠を使って、子ども1人に贈与したと仮定して比較してみましょう。贈与を10年間続けて、11年目で相続が発生したものとします。
暦年贈与の場合
図表1のとおり、暦年贈与の非課税限度額は110万円です。毎年200万円贈与した場合、暦年贈与110万円を超える90万円については累進課税の贈与税が発生します。
基礎控除後の課税価格200万円以下にかかる税率は10%ですので、90万円にかかる贈与税は9万円です。
11年目で相続が発生するので、10年目までは200万円を贈与し、11年目に残りの相続財産について相続税が発生します。
【図表2】
贈与額 | 贈与税 | |
---|---|---|
1年目 | 200万円 | 9万円 |
2年目 | 200万円 | 9万円 |
3年目 | 200万円 | 9万円 |
4年目 | 200万円 | 9万円 |
5年目 | 200万円 | 9万円 |
6年目 | 200万円 | 9万円 |
7年目 | 200万円 | 9万円 |
8年目 | 200万円 | 9万円 |
9年目 | 200万円 | 9万円 |
10年目 | 200万円 | 9万円 |
合計 | 2000万円 | 90万円 |
※筆者作成
10年の暦年贈与が完了した時点で残りの相続財産は3000万円です。
暦年贈与の場合、相続発生から3年以内の贈与財産は相続財産に加算されますので、相続財産は以下のように計算されます。
200万円×3年+3000万円=3600万円
相続税には基礎控除があり、基礎控除額を超えた財産にのみ相続税が課税されます。
基礎控除額は以下のように求められます。
3000万円+(600万円×法定相続人の数)
今回は、子ども1人ですので、基礎控除額は以下のように計算されます。
3000万円+(600万円×1)=3600万円
相続財産3600万円は基礎控除額3600万円以下ですので、相続税はかかりません。したがって、税負担は贈与税90万円のみとなります。
相続時精算課税制度の場合
相続時精算課税制度の非課税枠である2500万円を13年に分けて、毎年200万円ずつ贈与する予定であったと仮定します。しかし、想定外にも11年目に相続が発生します。
【図表3】
贈与額 | 贈与税 | |
---|---|---|
1年目 | 200万円 | 0万円 |
2年目 | 200万円 | 0万円 |
3年目 | 200万円 | 0万円 |
4年目 | 200万円 | 0万円 |
5年目 | 200万円 | 0万円 |
6年目 | 200万円 | 0万円 |
7年目 | 200万円 | 0万円 |
8年目 | 200万円 | 0万円 |
9年目 | 200万円 | 0万円 |
10年目 | 200万円 | 0万円 |
合計 | 2000万円 | 0万円 |
※筆者作成
毎年200万円ずつ贈与して10年で贈与できた総額は2000万円です。非課税枠である2500万円には達していないので、贈与税は発生しません。
ただし、相続時精算課税制度を利用すると、贈与した時期に関係なく、贈与した金額が相続財産に加算されます。
したがって、相続財産は2000万円+3000万円(贈与できなかった分)=5000万円となります。
基礎控除額3600万円を差し引くと課税対象額は1400万円となります。
相続税は課税対象額1000万円以下に対して10%が適用されるので、この場合の相続税は140万円となります。
今回のケースでは、暦年贈与を利用した方がお得であることがわかります。
贈与開始が早いほど暦年贈与がお得
上述のケースで、贈与財産が1億円や10億円など金額が大きくなっても、暦年贈与がお得であることに変わりはありません。
一方で、相続財産が大きい場合で、贈与開始時期が遅く、予想以上に早く相続が発生した場合には、2500万円の非課税枠を使える相続時精算課税制度がお得になります。
この場合、暦年贈与では非課税枠での財産の贈与が進まず、ほとんどの財産を相続で承継することになり、多額の相続税がかかります。
したがって、暦年贈与と相続時精算課税制度でどちらがお得かを左右するのは、贈与開始の時期ということになります。
暦年贈与は、毎年110万円という非課税枠しかありませんが、贈与の期間が長いほど大きな金額を非課税枠で贈与できるからです。
贈与者となる祖父母や父母が元気なうちから贈与を開始することで、より多くの財産を次の世代に移転することができます。
出典
国税庁 No.4152 相続税の計算
国税庁 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 相続時精算課税の選択
埼玉りそな銀行 相続時精算課税制度ってどんな制度?
埼玉りそな銀行 賢く活用!暦年贈与のポイントと注意点
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部