更新日: 2022.07.20 その他税金

内縁関係だと損? 事実婚の税制上におけるデメリットとは

内縁関係だと損? 事実婚の税制上におけるデメリットとは
事実婚は、婚姻届を提出せずに、事実上の夫婦生活を送ることをいいます。
 
事実婚を選択する理由は、姓を変えたくない、法律婚の手続きが面倒、入籍の必要性を感じないなど、さまざまな考えがあるでしょう。
 
事実婚だと法律上の婚姻関係にあたらないので、配偶者が受けられる税制上の優遇制度が適用にならないことがあります。
 
この記事では、どのような税制上の優遇を受けられないのか、まとめました。
FINANCIAL FIELD編集部

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事実婚だと税制上で不利になることは?

事実婚の場合、次の税金の優遇制度が適用になりません。

●所得税
●相続税
●贈与税

 
それぞれの内容を解説します。
 

所得税

事実婚の夫婦は所得税における、次の所得控除が適用になりません。
 

●配偶者控除
●配偶医療費控除

 
所得控除とは、条件にあてはまる場合に、合計所得金額から一定額を差し引ける制度のことです。所得金額が少なくなれば、所得税の金額も減らせます。
 
それぞれの控除に関して解説します。
 

配偶者控除が適用にならない

事実婚だと、所得税の配偶者控除を受けられません。
 
配偶者控除とは、納税者に合計所得金額が48万円以下(※1)の配偶者がいるときに、納税者の所得に対して控除が適用になる制度です。
 
※1 給与収入の場合は103万円以下
 
控除額は、納税者の収入や配偶者の年齢によって異なります。
 
具体的な金額は、図表1のとおりです。
 
【図表1】

    

納税者本人の合計所得額 控除額
一般の控除対象配偶者 老齢控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円

出典:国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1191配偶者控除
 
また、配偶者の合計所得金額が48万円超え133万円以下の場合、配偶者控除が適用になりませんが、合計所得金額に応じて控除が受けられる、配偶者特別控除を受けられます。
 
配偶者特別控除も、事実婚の場合は適用になりません。
 

医療費控除が適用にならない

医療費控除も、事実婚だと適用になりません。
 
医療費控除とは、納税者本人だけでなく、同一生計の配偶者や家族の医療費を支払った際に、医療費が一定金額を超える場合に受けられる所得控除のことです。
 
医療費控除の金額は、次のように計算します。
 
医療費控除の金額(※2)=支払った医療費の合計額-保険金の金額-10万円(※3)
 
※2 控除額の上限は200万円
※3 その年の所得金額の課税標準が200万円未満の場合は、課税標準の5%の金額
 
例えば、次のような費用は医療費控除の対象になります。
 

●医師や歯科医による診療費や治療費
●入院費
●通院や入院の際の交通費(車のガソリン代は不可)
●風邪薬や下痢止め薬などの市販薬の購入費

 
医療費が10万円を超える場合は、事実婚だと法律婚よりも多い税金を支払わなければいけない場合があります。
 

相続税

相続税においては、事実婚の場合、大きな税制上の優遇を受けられません。
 
具体的には、次の税制優遇制度があります。
 

●配偶者の税額軽減
●小規模宅地の特例
●遺産に係る基礎控除

 
それぞれを解説します。
 

配偶者の税額軽減を受けられない

事実婚だと、配偶者の税額軽減が受けられません。
 
配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が取得した遺産に対して、次のどちらか多い金額まで配偶者に相続税が課税されないという制度です。
 

●1億6千万円
●配偶者の法定相続分相当額

 
遺産の金額が大きい場合は、内縁関係だと法律婚よりも多額の税金を支払わなければいけないというわけです。
 
相続においては、法律婚のほうが税制上のメリットが大きいことが分かります。
 

小規模宅地の特例を受けられない

また、小規模宅地の特例を受けられない点も、相続における事実婚のデメリットです。
 
小規模宅地の特例とは、被相続人の居住用や事業用に使用していた宅地等に使用できる特例のことで、最大80%の評価減が適用されます。
 
事実婚だと、被相続人が残した居住用または事業用の宅地を、配偶者が引き続き利用する場合、多額の税金が課せられる場合があります。
 

遺産に係る基礎控除の適用を受けられない

被相続人が死亡すると、法律婚の配偶者には遺産に係る基礎控除が適用されますが、事実婚の場合は、遺産に係る基礎控除が適用されません。
 
「遺産に係る基礎控除」とは、被相続人が残した遺産にかかる相続税の課税価格の合計額から差し引ける控除金額のことです。控除金額は、法定相続人の数によって異なります。
 
法定相続人とは、法律で定められた相続人です。配偶者は常に相続人になります。
 
遺産に係る基礎控除額の計算式は次のとおりです。
 
遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

また、被相続人の死亡によって受けとる生命保険金(※4)や死亡退職金は相続財産とみなされ、それぞれ相続税が課せられますが、次の計算式で求めた金額の分だけ非課税になります。
 
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
 
つまり、事実婚だと配偶者は法定相続人にならないため、遺産に係る基礎控除や、生命保険金・死亡退職金の非課税額の計算にカウントされないというわけです。
 
※4 被相続人が保険料を負担していた場合
 

贈与税

事実婚の場合、贈与税の配偶者控除が受けられません。
 
贈与税の配偶者控除が適用されると、婚姻関係が20年以上ある夫婦間で居住用不動産、またはその取得費用の贈与があった場合、110万円の基礎控除とは別に、2000万円まで控除が受けられます。
 
居住用不動産を所有しており、内縁関係の配偶者に贈与する予定のある方は、事実婚だとデメリットがあることが分かるでしょう。
 

事実婚か法律婚か、将来のことも考えて選択しましょう

事実婚だと、所得税・相続税・贈与税において、税制上の優遇が受けられないことがあります。
 
内縁関係が始まって数年のうちは、税制上の不都合をあまり感じないこともあるかもしれませんが、住宅の購入、相続など大きなイベントが発生する際に、事実婚と法律婚で大きな差が生まれます。
 
事実婚を選択する場合は、将来のことも見据えて検討する必要があるといえるでしょう。
 

出典

国税庁 No.1191 配偶者控除
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減

国税庁 No.4152 相続税の計算

国税庁 No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部