ふるさと納税のせいで『号泣』 自治体の悲鳴とは!?
配信日: 2018.05.10 更新日: 2019.01.11
その一方で、ふるさと納税の税額控除によって税収が減り、公共サービスに支障をきたしかねない状況になっている区市町村等もあります。
ふるさと納税によってどのくらい税収減が起きているのかを調べてみました。
Text:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/
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ふるさと納税で控除された税額は1767億円
ふるさと納税には、寄付した額の一定割合を税額控除できる仕組みがあります。そのため区市町村等にとっては、居住している住民がふるさと納税をすればするほど控除される税額が増え、入ってくる予定の税収が減ってしまいます。
ふるさと納税によって全国で控除された額は下記のとおりです。
平成29年度の数字は、平成28年1月1日から12月31日までの寄付金のうち税額控除された分で、全国で1767億円も税額控除されています。前年からは765億円(76%)も増えており、2年前と比べたら実に9.6倍にもなります。
控除適用者数は225万人で、前年からは95万人(73%)増えています。
当初は3万人しかいなかったことを考えれば、多くの人がふるさと納税を利用するようになってきたといえますが、給与所得者だけでも5744万人(国税庁平成28年分民間給与実態統計調査調べ)いることを考えたら、まだまだ増えていきそうです。
税額控除の7割は3大都市圏
ふるさと納税の税額控除を都道府県ごとわけ、控除額別に上位と下位の都道府県を表にしてみました。
「控除額の対全国比」は全国の控除額1767億円に対する比率、「適用者数の対全国比」は全国の控除適用者225万人に対する比率、「1人あたりの控除額」は控除額を適用者数で割ったものです。1人あたりの控除額の全国平均は7万8420円です。
東京都が466億円で突出して多く、日本全体の26%にもなります。東京都の場合、48万の都民がふるさと納税をして税額控除の手続きをしたことで、東京都および都内区市町村の税収が466億円減ったことになります。
2番目に控除額が多いのは神奈川県の188億円、3番目が大阪府の151億円となっています。
上位には3大都市圏の都府県が多く入っており、上位3都府県と愛知県・千葉県・埼玉県・兵庫県・京都府を合計すると1260億円になります。日本全体の7割を超える控除額であり、都市から多くの税源が流失している実情がよくわかります。
一方で、控除額の少ない都道府県は下記の表のとおりです。
最も控除額が少ないのは島根県の3億円で、日本全体からみたらわずか0.17%の規模しかありません。控除適用者数も5131人しかいなく、1人あたりの控除額も5万8799円で全国平均を2万円も下回っています。
2番目に控除額が少ないのは僅差で隣の島根県、以下、秋田県、高知県、青森県と続きます。これらの県は控除額が少ないので、現状ではふるさと納税による税源流出は限定的です。
表に挙げた控除額の多い10都道府県で控除額は1353億円、全国比は76.6%になるのに対し、少ない10県では控除額が44億円、全国比で2.5%にしかなりません。都道府県によって所得や人口に大きな違いがありますが、ふるさと納税による税額控除で税源が流失しているのは、都市を抱えた一部の都道府県に集中しているといえます。
ふるさと納税で地方創生することが、ふるさと納税の理念でしょうから、都市部の人がふるさと納税を積極的に利用することは制度の主旨にあっていると思います。
ただ、現状のような急激な変化があると、税収が増えるほうも減るほうも対応がかなり大変なはずです。もう少し制約があってもよいのかもしれません。
Text:松浦 建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
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