今から確認したい!「公的年金受給」と「給与所得がある場合」の確定申告の考え方
配信日: 2022.12.01
今回は、公的年金と給与所得の双方を得ているケースを想定して確定申告の作成方法を紹介します。
執筆者:古市守(ふるいち まもる)
CFP®・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
確定申告が必要なケースとは
公的年金を得ている場合で、確定申告が必要なケースは次の3つです。
●公的年金等の合計額が400万円超
●公的年金以外の、給与や個人年金等の所得が20万円超
●上記の所得が20万円以下だが、源泉徴収税額があり医療費控除等による還付予定がある
これら3つのどれかに当てはまる場合は、確定申告をする必要があります。公的年金等の合計額が400万円超の場合は比較的少ないことから、それ以外の2つのケースについて見ていきます。
給与や個人年金等の所得が20万円超のケース
この中で特に確認しておきたいのが、公的年金を受給しながら、給与や個人年金等の合計所得が20万円を超えているケースです。公的年金を得ている多くの方が該当するのがこのケースかもしれません。というのも、この20万円を超える場合は、「給与収入ベースで75万円を超える場合」にほぼ当たります。
給与収入から給与所得控除額の最低額である55万円を引くと、75万円を超える場合は給与所得が20万円を超えてきます。従って、「月額で平均7万円程度」の給与収入を得ている場合は、確定申告が必要なケースに該当することになってくるでしょう。
また、生命保険契約などの個人年金を得ている場合も該当します。個人年金の収入額から、必要経費である個人年金保険の保険料を差し引いた所得額が20万円を超える場合は、該当することとなります。個人年金についても、「雑所得」扱いとして処理をする点に注意が必要です。
源泉徴収税額があり、還付予定があるケース
公的年金以外の給与や個人年金等の所得が20万円以下で源泉徴収額があり、納める税金がある場合、確定申告は不要ですが、還付を受ける場合は確定申告が必要となります。また、通院や入院による医療費の支払いがある場合は、医療費控除を適用することで還付となるケースもあるでしょう。
確定申告の作成方法
最後に、確定申告書の作成方法を説明します。給与所得や公的年金支払いに関する厚生労働省からの源泉徴収票を、また個人年金の支払いがある場合は、生命保険会社などから送付される「支払金額等のお知らせ」などを準備します。さらに、スマートフォンで実施する場合は、マイナンバーカードとマイナンバーカード読み取り対応のスマートフォンも必要です。
準備ができたら、国税庁ホームページにある「確定申告書等作成コーナー」にアクセスをして手続きを行います。e-Tax利用設定がありますが、設定後に順次出てくる項目に従って入力していくこととなります。
確定申告書作成の事前準備と金額の入力に分けて解説します。事前準備の主な手順は、以下のとおりです。
●雑所得画面にて、公的年金や生命保険の支払金額等の情報を入力
●住宅に関する控除や外国税額控除がある場合はチェック
●e-Tax(マイナンバーカード方式か、ID・パスワード方式かの選択)もしくは書面での提出かを選択
●マイナポータルアプリをダウンロード
●マイナンバーカードを読み取りパスワードを入力
●スマートフォンにマイナンバーカードをかざして読み取る
●e-Tax利用の事前設定
また、具体的な金額の入力は以下のとおりです。
●公的年金等の入力
●雑(その他)所得の入力
●医療費控除に関する事項を入力
●その他控除に関する事項を入力
●住民税に関する事項を入力
これらを入力することにより、納税額や還付額が表示されるので、還付の場合は受け取り方法を入力することとなります。さらに氏名や住所、提出先税務署を記載し、本人のマイナンバーを入力するとともに、配偶者控除や扶養控除などの対象者がいる場合はその方のマイナンバーを入力することとなります。
そして、帳票表示や印刷画面の確認を通じて、マイナンバーカードをスマートフォンで読み取らせることで送信が可能です。この間、何度かパスワードの入力が必要になり、やや手間はあるかもしれません。しかし、わざわざ税務署へ行かなくても確定申告を行うことができるという利便性はあります。
今回は利便性が高いスマートフォンでの作成方法を紹介しましたが、パソコンでも作成可能です。また、確定申告手続きの内容は、国税庁の税に関する動画「Web-TAX-TV」が便利ですので、気になる方は確認してみてはいかがでしょうか。
出典
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
国税庁 Web-TAX-TV 年金収入がある方の確定申告
執筆者:古市守
CFP®・1級ファイナンシャル・プランニング技能士