更新日: 2019.08.30 その他税金
給与に交通費が含まれている場合、交通費分にも所得税がかかってるの?何か対策方法はありますか?
その反面、多くの派遣社員や一部の正社員には交通費が別途支給されておらず、給与に交通費を含んだ形で給与が支払われています。
そこで、給与に交通費が含まれていることについて、会社から証明書を出してもらえるか問題となることがあります。実際に会社から書類を発行してもらうことができるのでしょうか。
交通費込みの時給で働く派遣社員Aさんの事例をもとにご説明します。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
交通費込みの給与で働くAさん
Aさんは現在、交通費込みの時給1400円で派遣社員として働いています。
派遣先と自宅との往復によって通勤交通費が毎日1000円かかっていますが、「交通費は時給の中に含まれているため、別途交通費を支給することができない」と派遣先から説明を受けていました。
また、Aさんと派遣元となる会社の間において具体的に交通費がいくらという取り決めなどはなされていませんでした。
しかし、交通費は一カ月で2万円近くにもなり、一人暮らしのAさんにとっては大きな負担になっていました。
そのうえ、所得税の計算において交通費が考慮されておらず、Aさんの不満は募るばかりでした。
そこで、Aさんは確定申告において交通費の存在を証明しようと考え、派遣元となる会社へ「通勤交通費証明書」について発行を求めました。
ところが、派遣元となる会社には「通勤交通費証明書の発行は行っていません。」と断られてしまいました。
派遣元となる会社は、Aさんの給与に交通費を含んで支給しています。
にもかかわらず、それについて何ら証明しようとせず、書類の発行を拒む派遣元の会社に問題はないのでしょうか。
派遣元となる会社に通勤交通費証明書の発行義務はありません
まず、前提として交通費を支給するかどうかは会社の自由な裁量に任せられています。
当然、時給の中に交通費を含んで支払うことについても何ら問題はありません。
そして、交通費は時給と分けて支給されることで、一定の例外を除き、基本的に所得税が非課税となるのです。
ところが、交通費が別途支給されておらず、時給の中に含まれてしまっていると、時給のうち交通費に相当する分にも所得税がかかってしまいます。
とするのであれば、時給の中に交通費が含まれていることについて会社に証明する義務があるように思えます。
ところが、実際の法律において会社にそのような義務は課されていません。
また、今回のように、具体的な交通費の額について取り決めがなされていない場合には、派遣元において交通費を証明することができないという事情もあります。
そのため、派遣元の会社はAさんから「通勤交通費証明書」の発行を求められたとしても、それに応じる義務はないということになるのです。
交通費は支給形式によって取り扱いが異なります
時給に交通費が含まれていたとしても「通勤交通費証明書」の発行は基本的に会社の義務ではありません。
もちろん、会社によっては「通勤交通費証明書」を発行してくれることもあるのですが、すべての会社がそのように対応してくれるわけではないでしょう。
また、仮に「通勤交通費証明書」が発行されたとしても管轄税務署の取り扱いなどにより、必ずしも交通費分を取り戻すことができるわけではありません。
同じ時給であれば交通費の別途支給されている方が税法上有利なのは確かです。
雇用形態に関係なく、働く際には給与の高さだけで仕事を決めるのでなく、交通費の支給の有無なども考慮して仕事を決めると良いでしょう。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー