更新日: 2023.04.25 控除
医療費控除は「所得」によっては「5万円」の控除を受けられる!? 理由と判断基準を解説
本記事では、家計の主たる収入を夫が得ていて、妻の総所得金額等が200万円未満の場合、夫が受けられない医療費控除を、なぜ妻が受けられるのか、その理由と判断基準について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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医療費控除とは
医療費控除とは、毎年1月1日から12月31日までの間に支払った医療費がある場合に適用を受けられる所得控除です。医療費控除の金額は以下の算式で計算します。
(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円=医療費控除額
算式を見ると最後に10万円を差し引いた残額が医療費控除額となっていることから、「医療費控除は医療費が10万円以上ないと受けられない」となるのです。
総所得金額等が200万円未満の人は10万円ではない
ただし、「10万円」はあくまでも原則であり、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、例外として「総所得金額等×5%」の金額になります。
そのため、もしも夫の医療費の総額が9万円で医療費控除が受けられない場合であっても、妻が専業主婦などで総所得金額等が80万円であれば、医療費控除の下限は10万円ではなく80万円×5%=4万円になります。
よって、妻では9万円-4万円=5万円の医療費控除が受けられるのです。また、この条件は主たる収入を得る妻と、専業主夫などの夫の場合でも当てはまります。
総所得金額等が200万円未満になるのは年収約297万円
総所得金額等が200万円未満になるのは、給与収入のみの人の場合には年収約297万円です。この年収であれば扶養内のパートに限らず、正社員であっても該当する場合があるので注意しておきましょう。せっかく受けられる医療費控除を逃すのはもったいないからです。
なお、夫も年収約297万円以下の場合には10万円未満の医療費で医療費控除を受けられますが、医療費控除の下限金額の算式が「総所得金額等×5%」となっていることから、年収が低いほど医療費控除を受けられる金額が大きくなるということになります。年収が約297万円に近い人よりも、遠い人のほうが医療費控除の金額は大きくなる点に注意しましょう。
年収の壁ごとの総所得金額等と医療費控除の下限金額
妻が扶養内のパートで働いている場合について、年収の壁ごとの総所得金額等と医療費控除の下限金額を図表1で確認しましょう。
図表1
年収の壁 | 壁の概要 | 総所得金額等 | 医療費控除の下限金額(総所得金額等×5%) |
---|---|---|---|
103万円 | ・妻に所得税が発生する ・夫で配偶者控除がなくなる |
48万円 | 2万4000円 |
106万円 | ・妻の勤務先が従業員101人以上であれば社会保険料が発生する | 51万円 | 2万5500円 |
130万円 | ・社会保険料が発生する | 75万円 | 3万7500円 |
150万円 | ・配偶者特別控除が満額ではなくなる | 95万円 | 4万7500円 |
201万円 | ・配偶者特別控除がなくなる | 約132万円 | 約6万6000円 |
国税庁 No.1410 給与所得控除を基に筆者作成
扶養内のパートに多い年収130万円を見ると、医療費控除の下限金額は3万7500円となっており、10万円よりはるかに少ない医療費でも医療費控除を受けられるようになっています。年収130万円であれば、所得税と住民税の両方が発生している人がほとんどであるため、積極的に確定申告を受けるとよいでしょう。
まとめ
医療費控除は1年間にかかった医療費のうち、原則として10万円を超える部分の金額が対象になります。しかし、年収約297万円までであれば10万円ではなく「総所得金額等×5%」になるため、医療費の総額が10万円未満であっても妻では医療費控除が受けられる可能性がある点に注意しましょう。
出典
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.1410 給与所得控除
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー