固定資産税が「6倍」に!? 実家は「空き家」になっていませんか?
配信日: 2023.05.31
しかし、今後は管理されていない空き家は軽減されないことを盛り込んだ「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が国会で審議中です。この改正案では、相続などで取得した建物が適切に管理されていない「特定空家等」に加え、この予備軍である「管理不全空家等」に認定されると、特例が受けられなくなります。
本記事では、固定資産税と都市計画税の仕組みと特例制度を解説します。相続などで受け継いだ空き家がある人は知っておいた方がよい内容なので、ぜひ参考にしてください。
執筆者:二角貴博(ふたかど たかひろ)
2級ファイナンシャルプランナー
固定資産税の仕組み
固定資産税は、建物や土地・事業用の資産(償却資産)に課税される税金です。建物や土地が、原則として都市計画区域内の「市街化区域」にあれば、都市計画税も併せて課税されます。それぞれの税率は次のとおりです。
●固定資産税 原則1.4%
●都市計画税 最大0.3%
なお、税率や条件は、自治体により異なる場合があります。
宅地の軽減特例
人の住んでいる住宅や空き家の敷地には、住宅用地の特例措置が適用されています。敷地部分の面積によって、図表1のとおり課税の基礎となる宅地の課税標準額が軽減されます。
図表1
宅地区分(1戸当たり) | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|
小規模住宅用地(200平方メートル以下) | 課税標準額の1/6 | 課税標準額の1/3 |
一般住宅用地(200平方メートル超) | 課税標準額の1/3 | 課税標準額の2/3 |
東京都主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)住宅用地とは何ですか。また、住宅用地に対する特例措置とは何ですか。より筆者作成
例えば、1戸当たりの住宅の敷地面積が200平方メートルまでであれば、固定資産税の課税標準額は6分の1、都市計画税の課税標準額は3分の1に軽減されます。
しかし、次に述べる「特定空家等」や「管理不全空家等」に認定されてしまうと、この特例は適用されなくなるので注意が必要です。
空き家のリスク
「特定空家等」や「管理不全空家等」に認定されると、最終的には自治体による建物の取り壊しなどの行政代執行を受け、かかった費用を請求される場合があります。
まず、「特定空家等」とは次のような状態のものとされています。
(1)倒壊など防災上著しく危険な状態
(2)ごみによる異臭の発生など、衛生上著しく有害な状態
(3)適切な管理がされず著しく景観を損なっている状態
(4)その他、立木の枝の越境やすみついた動物のふん尿など、周辺の生活環境を乱している状態
また、「管理不全空家等」とは放置すれば特定空家等になるおそれのある空き家のことをいいます。
さらに、「特定空家等」に認定された後、取り壊しなどの行政代執行に至るまでの流れは次のとおりです。
(1)空き家の調査
(2)「特定空家等」に認定
(3)助言・指導
(4)勧告
(5)命令
(6)行政代執行
まず自治体から所有者に対し、適切に管理をするように助言や指導が行われます。改善が見られない場合は勧告や命令となり、それにも従わなければ最大50万円以下の過料に処される可能性があります。最終的には、所有者の代わりに行政代執行が行われ、空き家の処分にかかった費用も請求されてしまうのです。
空き家対策は早めの情報収集が大切
空き家を放置しておくと、固定資産税などが上がることに加え、取り壊し費用が請求されるリスクがあります。これを避けるためには、お住まいの自治体に設置されている相談窓口を活用しましょう。
空き家の解体や活用に役に立つ助成制度や、売却する際に適用される税制上の特例などの説明を受けることができます。何をしたらよいか分からない、といった初歩的なことでもよいので、まずは自治体に相談して情報収集をしてみてはいかがでしょうか。
出典
政府広報オンライン 年々増え続ける空き家! 空き家にしないためのポイントは?
総務省 固定資産税
総務省 都市計画税
東京都主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
執筆者:二角貴博
2級ファイナンシャルプランナー