更新日: 2019.01.10 控除
離れて暮らす親の医療費などを子どもが支払った場合に子どもが所得控除を受けるための条件とは?
所得控除をフルに活用して税負担を軽減しましょう。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
所得控除とは
所得控除は、所得税額を計算するときに各種所得の合計額から差し引くことができる金額です。所得控除をフル活用することにより、所得税・住民税の軽減になります。
所得控除には、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄付金控除、障害者控除、寡婦・寡夫控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除があります。
それぞれ、所得控除を受けるには適用要件がありますが、医療費控除など一部の所得控除は、「自己と生計を一にする」配偶者やその他の親族が負担すべきものを支払った場合も自分の所得から控除できます。つまり、生計を共にする家族の分も控除できます。医療費控除の他、扶養控除、社会保険料控除などがあります。
「生計を一にする」とは
親などと同居している場合は、明らかに互いに独立した生活をしていない限り、「生計を一にする」ものとして扱われます。では、別居の場合はどうでしょうか。別居の場合でも、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
例えば、一人暮らしの親のために生活費の一部を毎月継続的に仕送りをしている場合などです。この場合、子どもが親の社会保険料や医療費などを負担した場合、自身の所得から控除できます。
仕送りで活用できる主な所得控除
まず、「扶養控除」が活用できます。親の所得が38万円以下なら親を扶養対象にできます。年金暮らしの親の場合、公的年金には年金収入から差し引くことができる大きな公的年金控除があります。
公的年金控除額は、65歳未満の方は最低70万円(収入金額を限度とする)、65歳以上の方は最低120万円(収入金額を限度とする)です。65歳以上の親の年金が月10万円程度であれば親を扶養対象にできます。扶養控除額は、親が69歳までは38万円、70歳以上は48万円(同居なら58万円)です。
次に活用できるのが「社会保険料控除」などです。社会保険料とは、具体的には国民年金保険料や国民健康保険料、介護保険料などです。社会保険料控除の控除額は、原則として、その年に支払った金額です。なお、介護保険料は年金が18万円以上の人は年金から天引きされるので、子どもが支払うことができません。
最後に活用したいのが「医療費控除」です。親の年金が少ない場合、入院などした場合、医療費を負担する余裕がなく、親の医療費を子どもが支払うケースがあると思います。この場合、親の医療費と自分の医療費を合算して10万円(または合計所得金額の5%のいずれか低い方)を超えた金額を所得から控除できます(最高200万円)。
医療費控除の対象として意外と知られていないのが介護保険施設に支払った食費や居住費も医療費控除の対象となる点です。
具体的には、介護老人保健施設や介護療養型医療施設、介護医療院は施設サービスの対価(介護費、食費及び居住費)として支払った額の全額、特別養護老人ホームは施設サービスの対価(介護費、食費及び居住費)として支払った額の2分の1に相当する金額が医療費控除の対象となります。
その他、医師の発行する「おむつ使用証明書」のある場合のおむつ代や、病院などに通院するために交通機関を利用した場合の交通費も控除対象です。なお、医療費控除を受けるには確定申告が必要ですので注意しましょう。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。