年収400万円の夫が「住宅ローン控除」を受けるなら、その他の控除証明書は「すべて妻」にすると「2万4000円」の節税に!? 共働き夫婦の年末調整について解説
配信日: 2023.10.09
本記事では、住宅ローン控除を受ける場合の年末調整の注意点について解説します。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
年末調整で提出する控除証明書の役割
年末調整では、生命保険料や地震保険料などの所得控除を受けるため、控除証明書を添付するかと思います。
控除額は、例えば生命保険料の控除証明書に「年間の支払い保険料10万円」と記載されている場合、4万円の生命保険料控除を受けることができます。控除による節税額は所得税率10%の人の場合で、住民税(一律10%)と合わせて8000円となります。
所得控除と住宅ローン控除との関係
所得税の計算は、給与から給与所得控除を差し引いた後、所得控除を差し引いて課税所得を算出します。そして課税所得に所得税率を乗じて所得税を計算した後、税額控除である住宅ローン控除を差し引いて税額が確定します。
住宅ローン控除の金額は、原則として住宅ローン年末残高の0.7%となっていることから、残高が3000万円なら21万円にもなります。年収400万円の人の所得税は大体10万円前後になるため、住宅ローン控除のみでも所得税は0円になるのです。
つまり、所得控除があろうとなかろうと夫には所得税が発生しないので、妻に課税所得があるのであれば、そちらで所得控除を受けたほうがお得ですよねというお話です。
例えば、夫の所得分で受けようとしていた生命保険料控除が12万円あるとします。妻の所得からの控除は0円の予定でした。これを妻に移行した場合には、所得税と住民税合わせて2万4000円の節税につながります。
夫名義の控除証明書も妻で使える
そこで1つ疑問が生じます。夫名義の控除証明書も妻の所得控除にしてよいのでしょうか?
結論を先にいうと、問題ありません。所得控除を受けられるのは、その保険料を支払った人だからです。例えば、夫名義の生命保険料を妻が支払っていた場合、控除証明書は夫名義で届きますが、妻の年末調整に提出することは可能です。
また、保険料が夫の口座から引き落とされている場合であっても、生活費を夫婦で協力して負担しているのであれば、実質的にはどちらのお金から出たのかは明確ではありません。妻が保険料分を夫に渡せば、それは妻が支払っていると考えられるように、家族分の控除証明書は家族の誰かで使えるという理解で問題ありません。
まとめ
年末調整で提出する各種控除証明書は、夫分は夫、妻分は妻で提出する人が多いかもしれません。ただ、夫婦どちらかに住宅ローン控除があるのであれば、それだけで所得税は0円になる可能性が高いです。
妻にも課税所得が発生している状況であれば、妻で所得控除を受けたほうが節税になる可能性が高いので、夫分の控除証明書も妻で提出することをおすすめします。
出典
国税庁 No.1140 生命保険料控除
国税庁 No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)
国税庁 妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士