更新日: 2024.01.15 確定申告

事業や不動産で損失が出たとき、税負担を抑えることができる? 確定申告の際におこなう「損益通算」ってなに?

執筆者 : 北山茂治

事業や不動産で損失が出たとき、税負担を抑えることができる? 確定申告の際におこなう「損益通算」ってなに?
事業や不動産で損失が出たとき、確定申告の際に損益通算することで、税負担を抑えることができます。
北山茂治

執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)

高度年金・将来設計コンサルタント

1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。

人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。

HP: https://www.kitayamafpsr.com

損益通算とは

損益通算できるものは、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」です。損益通算は、歴年(1月1日から12月31日まで)の10種類の所得のうち、利益(プラスの所得)と損失(マイナスの所得)を合算することをいいます。
 
例えば、給与所得のほうが、年の途中で起業または副業(事業所得レベル)を始めてその年の事業が赤字になったとき、その事業所得の赤字を給与所得の黒字で相殺することができる制度です。
 

損益通算できる所得

この損益通算できる所得は、4つの所得だけです。不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得です。それぞれの頭の文字をとって、「不、事、山、譲」を「富士山上」と語呂合わせで覚えましょう。
 
ただ、不動産所得と譲渡所得のなかには、損益通算できないものもありますので注意しましょう。
 

損益通算できない不動産所得の損失

土地等の所得に係る借入金の利子の部分です(建物の取得に係る借入金の利子の部分は損益通算できます)。
 

損益通算できない譲渡所得の損失

・上場株式等の譲渡損失
申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等との損益通算は認められます。

・一般株式等の譲渡損失

・非課税動産の計算上生じた譲渡損失

・通常の生活に必要ない資産(別荘、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、ゴルフ会員権など)の譲渡損失

・土地建物等の譲渡損失
マイホームを買い換えた際の譲渡損失における損益通算、および繰越控除の特例の適用を受けられる場合を除きます。

・個人に対して時価の2分の1未満の著しく低額で譲渡した譲渡損失
 

損益通算できない他の所得

・利子所得、退職所得

利子所得と退職所得は、赤字になることがない所得なので、当然損益通算の対象にはなりません。
 

・給与所得、配当所得、一時所得、雑所得での損失

これらの所得は赤字になることはありますが、「これらの所得は万が一赤字になってもゼロとみなすことになっています」ので損益通算の対象にはなりません。
 

損益通算の順序

下記の(1)(2)を第1次通算、(3)(4)を第2次通算、(5)(6)を第3次通算と呼びます。

(1) 利子、配当、不動産、事業、給与、雑の各所得(経常所得の金額……以下経常所得グループという)のなかで損益通算を行います。

(2) 譲渡所得、一時所得の金額(以下譲渡・一時所得グループという)のなかで損益通算を行います。

(3) (1)の「経常所得グループ」で出た損失の金額は、「譲渡・一時所得グループ」から控除します。

(4) (2)の「譲渡・一時所得グループ」の損失の金額は、「経常所得グループ」から控除します。

(5) (3)・(4)の損失は、山林所得と退職所得から控除します。

(6) 山林所得の損失は、「経常所得グループ」から控除することになります。次に「譲渡・一時所得グループ」から控除します。最後に退職所得から控除します。

(7) 第1次・第2次・第3次通算で総所得金額等または純損失が算出されます。
 
いかがでしょうか。損益通算の特徴と仕組みを理解して、税負担を抑えられるようにしましょう。
 

出典

国税庁 No.2250 損益通算
 
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント

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