更新日: 2024.02.08 その他税金
「ボーナスを出せなかったので気持ちだけでも」と社長が自腹で3万円のお年玉をくれましたが、これって収入になるの?税金は?
今回は、「ボーナスが出せなかった代わりに社長からお年玉を受け取った」というケースを例に、税金などの扱いについてどう考えるべきなのか、まとめてみました。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
社長個人からのお年玉であれば贈与となる可能性がある
社長から受け取ったお年玉が会社とは関係なく、社長個人のポケットマネーで、その金額が3万円程度であれば税金はかからないと考えられます。
現金を含む、個人間での財産の受け渡しは贈与に該当します。贈与によって取得した財産は贈与税の課税対象となりますが、贈与税は1年間で受けた贈与の合計額のうち、基礎控除額の110万円を超えた部分にかかります。
お年玉以外で、その年に他の贈与を受けていた場合でも、合計額が110万円以下であれば贈与税は非課税となり、申告の必要もありません。また、贈与で受けた財産は収入(所得税の課税対象)としては扱われないため、所得税の申告も不要です。
そもそもお年玉は非課税だが、必ず認められるわけではない
税金に詳しい人なら「お年玉はそもそも非課税では?」と疑問が浮かぶでしょう。実際、その認識は間違っていません。
国税庁「第21条の2[贈与税の課税価格]関係」によると、個人から受ける年末年始の贈答や祝い物のための金品については、贈与に該当するものでも、社交上必要であれば贈与者と受贈者の関係を踏まえ、社会通念上相当と認められる範囲では非課税とされています。
しかし、今回の例は「ボーナスを出せなかった代わり」として、会社の社長から受け取ったお年玉です。それに加えて、社長と従業員という関係性もあり、一般的にお年玉を渡す家族や親せきといった関係とは異なります。
こうした事情によっては、お年玉でも「社交上必要」なもの、および関係性から「社会通念上相当」として、非課税と認められるにはふさわしくないとされる可能性もあり得ます。
そのため、お年玉といって渡されたとしても、贈与税の課税対象となる場合があることにも留意しておいた方がいいでしょう。
場合によっては社会保険料がかかることも
名目上はお年玉でも、賞与として所得税や社会保険料の対象となる可能性もあります。例えば、お年玉が実質的には賞与であり、渡した目的が会社の社会保険料の負担の削減だった場合です。
厚生年金保険や健康保険などの社会保険料は、通常の給与だけではなく賞与にもかかり、保険料はそれぞれの保険料率を乗じた金額となりなます。
賞与にかかる厚生年金保険料と健康保険料の例で考えてみましょう。仮に3万円のお年玉が賞与だと見なされると、厚生年金保険の保険料率は18.3%で、5490円の保険料がかかります。
健康保険についても保険料率を10%(令和5年度、東京都の例)とすると、保険料は3000円となります。
厚生年金保険と健康保険の保険料は労使折半となるため、会社と従業員(被保険者)が負担するのは合計でそれぞれ4245円です。
賞与の代わりということであれば、社長のポケットマネーで渡したお年玉とはいいつつ、お金の流れを含めて実質的には賞与となる可能性も否定できません。社会保険料の負担を減らすために、お年玉として賞与が支給されたと判断され、社会保険料が生じることも考えられます。
社長から受け取ったお年玉の扱いに疑問を感じたら税務署に相談を
勤務先の社長から受け取ったお年玉とはいっても「ボーナスは出せなかったから」と言われている場合、お金の流れを加味すると贈与ではなく、賞与と見なされて課税対象となる可能性もあります。
ただし、税金については個別の事情によっても対応が異なるので、どのような扱いとなるのかを判断するのは難しいというのが実情です。
賞与の代わりにお年玉としてお金を受け取り、税金の扱いで疑問や不安を感じたときは、自身の住所地を管轄する税務署に相談をしてみてください。
出典
国税庁 第21条の2 《贈与税の課税価格》関係
協会けんぽ 令和5年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
執筆者:柘植輝
行政書士