芸術の秋。時には投資の対象に?時には節税対策に?美術品にまつわるお金の話(前編)
配信日: 2018.10.17 更新日: 2019.05.17
ところで、こうした絵画や骨とう品などの美術品は、その美しさを楽しむだけでなく、投資の対象となったり、時ときには節税対策にもなることをご存知ご存じでしょうか。
そこで今回は、そうした美術品とお金の関係について、改あらためて考えてみたいと思います。
美術品の価格はどうやって決まる?
絵画などの美術品は、どうやって価格が決まり、売買されるかご存じでしょうか。
以前、筆者は国内では最大手といわれる画商に勤務していたことがあるのですが、美術品にはほかの製品などと違って原価がないですし、価格を決める際の仕組みは非常に複雑だと感じていました。
大ざっぱにいってしまえば、その作家の市場における価値の高さ、つまり市場でどれほどの価値を得ているかということに尽きるかもしれません。
価値のある作品と認められるためには学術的に高い評価を得る必要があり、美術学者や有名美術館のキュレーターの評価などは価格に大きな影響をおよぼします。
市場にまだ出回っていない新人作家の場合には、ある1つのギャラリーなどが発表価額として値付けすることから始まり、最初に買い手がつくまでを「プライマリーマーケット(一次市場)」と呼ぶことがあります。
その後、さらにその作品が売られて取引される場が「セカンダリーマーケット(二次市場)」で、市場に流通するにしたがって価格が定まっていくことになります。
この二次市場では一次市場で作品を購入したコレクターやギャラリーのほか、二次市場を中心にあつかう画商、ギャラリー、百貨店、オークションなど多くの業者がかかわり、中でも美術品の値段が設定されるうえで大きな役割を果たしているのが、「アートオークション」という換金市場を中心にした取引です。
国内の「交換会」と呼ばれる業者間オークションのほか、クリスティーズやサザビーズといった、大手オークションハウスの名前をきいたことがあるかと思います。アジア市場、欧州市場、アメリカ市場など、地域ごとに作家銘柄が分かれているものを、こうした大手オークションハウスが、ニューヨークやロンドンなどの主要な美術品市場で国際的に取引を行っています。
これらのアートオークションは、株でいうと証券取引所のようなものです。美術品もほかの資産と同じく換金性がなければ資産と呼ぶことができませんので、美術品を集中的に換金できる換金市場として非常に重要な場といえます。
ときには、ある作家の作品を多く仕入れたため、値段を上げたいと考える画商などによって、オークションで画商自身が高額で競り落とすなどして価格操作がはかられる場合もありますが、時間がたてば妥当な価格に落ち着くことが多いようです。
「美術品投資」について
投資に興味のある方は、「美術品投資」について耳にされたことがあるかもしれません。
資産として美術品を考えた場合、株式や債券などの金融資産と違って、それ自体では配当や利回りを生みません。しかし、経済の動きや人気の変動で作品価値が大きく上下し、売値が買値よりも高くなり、キャピタルゲインが得られることがあります。
また、美術品を売る場合は、少なくても数ヶ月、ときには数年かかることもあり、このような特徴から美術品投資は不動産投資に似ているといわれることもあります。
ほかにも、美術品投資のメリットとしては、資産の減価償却を利用して節税もできる、といった点があげられるでしょうか。
ただし、もちろんリスクもあります。保有した作品をいざ売ろうとしたら市場で売れなかったということは多く、美術年鑑などに載っている著名作家であったはずが、何らかの理由で作家の価値が下落したり、値がつかなくなったりすることがあります。
リスクを軽減するための手段としては、購入する前に現在のトレンドをよく調べ、時価の確認をしておくことです。また、1人の作家の作品だけでなく、複数の作家銘柄を組み合わせて資産の分散をはかる必要があります。
一時的な要因で上下する価格も、比較的長い周期で相場が動いている美術品市場においては、作品を5年、10年と保有しているうちに作品価値の上昇率が上がることがありますので、長期に保有することもリスクの軽減につながります。
まとめ
鑑賞の対象として語られることの多い美術品は、今回お伝えした販売経路や投資などのお金に関することはあまり知られていないかもしれません。
この秋、美術館や百貨店で絵画などを鑑賞される際には、どういった経緯でこの美術品がここへ来たのかということに思いを馳せてみても面白いかもしれません。
次回は、美術品を資産として購入し減価償却を利用する方法など、美術品と税制についてお伝えしたいと思います。
Text:藤丸 史果(ふじまる あやか)
ファイナンシャルプランナー