年金の受給を開始しました。「確定申告」の有無について友人が話していたのですが、私は必要ですか?
配信日: 2024.02.21 更新日: 2024.02.22
今回は、令和5年に年金の受け取りがスタートした方をはじめ、年金以外の収入があった方など、年金受給者の確定申告についてチェックします。
執筆者:下中英恵(したなかはなえ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者
“東京都出身。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。
富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は日本東京において、資産運用・保険・税制等、多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っています
http://fp.shitanaka.com/”
年金受給者の確定申告不要制度とは
所得税の確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間の所得と、その所得に対する所得税(復興特別所得税を含む)を計算して、納めた税金との過不足を精算するための手続きです。
老齢年金は雑所得として課税の対象で、一定以上の金額については受給時に所得税が源泉徴収されているため、年金受給者も確定申告を行う必要があります。ただし、一定の条件にすべて該当している方は「確定申告不要制度」の対象となり、確定申告を行う必要はありません。
年金受給者の場合、まずは自身が確定申告不要制度の対象となるのか、以下の条件を確認しておきましょう。
●公的年金等の収入金額の合計が400万円以下で、その全部が源泉徴収の対象
●公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
ここでいう公的年金等とは、老齢基礎年金や老齢厚生年金、老齢共済年金のほか、恩給(普通恩給)や過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金、確定給付企業年金などを指します。
令和5年の収入が公的年金等のみの方は、まず収入の合計金額が400万円以下という条件に当てはまるか確認してください。
また、公的年金等に係る雑所得以外の所得とは、生命保険や共済などの契約に基づく個人年金、給与所得、生命保険の満期返戻金などです。
令和5年に給与を受け取った後、退職して年金の受給が始まった方や、退職金の支給があった方などで、年金以外の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要となります。
確定申告が必要なケース
年金受給者で確定申告不要制度の対象者であっても、所得税の還付や税額控除を受けたいと考えている方は確定申告が必要です。確定申告によって所得税の還付や税額控除を受けられる可能性があるのは、例えば以下のようなケースです。
●住宅ローンを利用してマイホームの取得や増改築などを行い、住宅ローン控除により所得税の税額控除を受ける場合
●年間で一定額以上の医療費を支払い、医療費控除を受ける場合
●災害や盗難に遭い、雑損控除を受ける場合
●ふるさと納税や寄附を行い、寄附金控除を受ける場合
など
なお、所得税の確定申告が不要な方でも、収入が公的年金等に係る雑所得のみで生命保険料控除や損害保険料控除、医療費控除などの適用を受ける場合や、公的年金等に係る雑所得以外の所得がある場合は、住民税の申告が必要となるケースもあります。
ただし、所得税の確定申告を行った方は、税務署から確定申告書等の情報が自治体に送られるため、住民税の申告書の提出は不要です。住民税についての詳細は、住んでいる地域の市区町村役場の窓口や自治体のホームページで確認してみましょう。
まとめ
令和5年分の所得税の確定申告の期間は、令和6年2月16日から3月15日までとなっています。
令和5年から年金の受け取りを開始した方は、年金受給者の確定申告について分からないことが多いかもしれません。直前になって慌てないために、まずは自分が確定申告を行う必要があるのか、必要な場合は所定の手続きなどについて早めに確認することが大切です。
国税庁のホームページでは確定申告特集も開設されているので、あらかじめチェックしておくといいでしょう。
出典
政府広報オンライン ご存じですか? 年金受給者の確定申告不要制度
国税庁 令和5年分 確定申告特集
執筆者:下中英恵
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者