離れて暮らす子どもから「自分の扶養に入ってほしい」と連絡がありました。「節税になる」とのことですが、実際どのくらい節税効果があるのでしょうか?

配信日: 2024.02.28

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離れて暮らす子どもから「自分の扶養に入ってほしい」と連絡がありました。「節税になる」とのことですが、実際どのくらい節税効果があるのでしょうか?
別居中の親族を「扶養家族」として申請することで、所得税・住民税の節税ができる場合があります。また、扶養に入る人の状況によっては社会保険料の免除もでき、より家計の改善につながります。条件が該当する人は積極的に活用してみましょう。
山田圭佑

執筆者:山田圭佑(やまだ けいすけ)

FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

別居している家族を扶養に入れるための条件とは?

国税庁によれば、「扶養親族」とは、その年の12月31日において以下の条件にすべて当てはまる人を指します。
 

1. 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)、都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)又は、市町村長から養護を委託された老人であること
2. 扶養者と生計を一にしていること
3. 被扶養者のその年の合計所得金額が48万円以下であること
4. 青色申告者の事業専従者として給与の支払を受けていない又は白色申告者の事業専従者でないこと

 
これらの条件を全て満たす人がいる場合、図表1の通り、税金の扶養控除を使うことができ、納める所得税と住民税を減らすことができます。
 
図表1

図表1

国税庁ホームページなどを基に筆者作成
 
今回は、子が親を扶養に入れるパターンですので、条件のうち2と3が大きな焦点となります。一つひとつ条件を確認していきましょう。
 

「生計を一にしている」とは

「生計を一にしている」とは、同居・別居を問わず、家族と生活費を共有していることを指します。
 
国税庁のサイトでは、「別居している場合であっても、……常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、『生計を一にする』ものとして取り扱われます」と記載されています。このように別居中の親であっても、子が定期的に仕送りを行うなど、生活費や療養費の負担をしている場合であれば子と親が「生計を一にしている」と判断されます。
 
会社勤めの人が親を扶養に入れることを申告する場合は、年末調整のタイミングで「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を職場に提出する必要があります。年末調整に間に合わない場合は、次のタイミングである確定申告で扶養者の追加に関する申請を行いましょう。
 
また、必須ではありませんが「生計を一にしている」ことを証明するものとして、親へ定期的に生活費などを仕送りしていることが、客観的に証明できる書類を用意しておくと安心です。銀行振り込みなどで仕送りをしている場合は、通帳の該当部分をコピーしておくか、振り込みの明細書控えを保管しておきましょう。
 

「その年の合計所得金額が48万円以下」とは

「その年の合計所得金額が48万円以下」について、本ケースの親の収入が年金のみである場合は、
 
「受け取る年金額」-「公的年金等控除額」=「公的年金等にかかる雑所得の金額」
 
として所得金額を算出します。年金以外の所得年間1000万円以下の場合の公的年金等控除額は図表2のようになります。
 
図表2

図表2

企業年金連合会ホームページより筆者作成
 
これにより、「その年の合計所得金額が48万円以下」を満たす人の年金収入上限額を計算すると、以下のとおりになります。
 
65歳以上の場合は158万円
65歳未満の場合は108万円

 
年金以外の収入がある場合は、その所得金額も足していく必要がありますので、きちんとシミュレーションしましょう。
 

節税できる金額をシミュレーション

ここでは、70歳の別居している親を、年収700万円程度(給与所得のみ)の子が自分の扶養に入れることで、どれだけ節税できるかをシミュレーションします。なお、所得税は20%、住民税は10%として計算します。
 

(所得税)
所得控除額48万円(同居老親等以外)×20%=9万6000円
 
(住民税)
所得控除額38万円(同居老親等以外)×10%=3万8000円
 
(合計)
9万6000円+3万8000円=13万4000円

 
別居の老親1名を扶養に入れることで、年間13万円以上の節税効果があることがわかります。「扶養親族」の条件が合致している家族が多ければ、複数名を扶養に入れることで、さらに節税額を大きくすることが見込めます。
 

まとめ

別居していても、親などの親族を自分の扶養に入れることで大きな節税効果があることを紹介しました。
 
「扶養親族」の条件は変わりますが、「社会保険上の扶養」に別居の家族を入れることも並行して可能です。この場合、親が支払っている国民健康保険料の負担もなくなりますので、家族の家計をさらに改善させることができます。
 
一方、高齢の親を自分の扶養に入れることで、医療費負担などが増加するなどのデメリットが発生することも考えられます。実際に親族を扶養に入れる手続きをする前には、ファイナンシャル・プランナーなどに相談し、十分なシミュレーションをしておくことをおすすめします。
 

出典

国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 家族と税
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
 
執筆者:山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

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