更新日: 2024.07.26 確定申告
60歳で定年退職するけど、退職金に「確定申告」は必要? 確定申告すると「得になる人」について解説
本記事では退職金に確定申告は必要なのか、したほうが得になるのはどういう人なのか、そして退職金が2000万円の場合にどれくらい税金がかかるのか解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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退職金とは
退職金とは、従業員が退職する際に企業から支給されるお金のことです。
退職金は法的に義務付けられたものではありませんので、退職金制度がなくても違法というわけではありません。とはいえ、日本では多くの企業に退職金制度があります。
退職金があるのかどうか、どれくらい支払われるのかについては、企業が定める退職金規程などを確認しましょう。
退職金の確定申告は基本的には不要
退職金の確定申告は基本的には不要です。退職金は通常、企業に「退職所得の受給に関する申告書」を出すことで、退職所得控除を考慮したうえで所得税・復興特別所得税・住民税が源泉徴収および特別徴収されます。
申告書は多くの場合、企業から従業員に対して提出を求められます。一般的に、会社員は企業の指示に従って申告書を提出すれば、処理は進んでいくと考えてよいでしょう。
退職金の確定申告をしたほうが得になる人
退職金の確定申告は基本的には不要ですが、場合によっては確定申告をしたほうがお得になる人もいます。
例えば、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に出していない場合、退職所得控除の計算がされません。そして、受け取る退職所得の全額に一律で20.42%の所得税・復興特別所得税が源泉徴収されます。
この場合、確定申告により払い過ぎた税金の還付が受けられますので、確定申告をしたほうが税金上お得といえるでしょう。
また、通常、会社員は年末調整で正しい納税額を確定させますが、年の途中で退職して年末調整がされていない場合、所得税が精算されません。このように年の途中で退職し、年末調整をしていない人も確定申告をすると税金が還付される可能性があります。
他にも、医療費控除や寄附金控除を受ける場合、住宅ローン控除がある場合なども、退職金の確定申告をしたほうが、所得税が還付されてお得になるかもしれません。
退職金が2000万円の場合にかかる税金
退職金を一括で受け取る場合は退職所得控除が適用され、課税退職所得に対して税金の計算がなされます。退職金が2000万円だった場合の税金額を計算します。負担する所得税と復興特別所得税は次の順序で計算が可能です。
(1)勤続年数から退職所得控除額を算出
(2)退職金から退職所得控除額を控除し、さらに2分の1にする=課税退職所得金額
(3)(2)の金額に応じて所得税額を計算する
(4)(3)の金額に応じて復興特別所得税の額を計算する
(5)(3)と(4)の合計が所得税と復興特別所得税
退職所得控除の金額は次のとおりです。
・勤続年数20年以下:40万円×勤続年数(80万円未満は80万円)
・勤続年数20年超:800万円+(勤続年数-20年)×70万円
このように、退職所得控除の金額は勤続年数によって変わります。勤続年数が38年以上の場合、退職所得控除が2000万円を超えるため、2000万円の退職金に所得税はかかりません。
仮に、勤続年数が30年だった場合、退職所得控除は1500万円ですので、課税退職所得金額は500万円(2000万円-1500万円)の半分の250万円です。そして、課税退職所得金額の250万円に対する所得税額は次のとおりです。
250万円×10%-9万7500円=15万2500円
所得税額(基準所得税額)に2.1%を乗じたものが復興特別所得税ですので、その金額は3203円になります。つまり、所得税と復興特別所得税の合計では15万5703円です。また、住民税は基本的には10%ですので、課税退職所得金額に10%を乗じた25万円程度になります。
まとめ
退職金に確定申告は原則として不要ですが、したほうが得になる人もいます。退職金の税金は控除が大きいとはいえ、特に退職金の金額自体が大きかったり、勤続年数が短かったりするとその負担は軽いとは言い切れません。
退職金は老後を支える大切な資金ですので、使い道だけでなく税金についてもしっかり考えておきましょう。
出典
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 退職金と税
総務省 令和4年度第3回個人住民税検討会
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー