更新日: 2024.10.21 控除

父が病気のため通院することになりました。私の扶養に入っていると「医療費」の自己負担限度額が増えるって本当ですか?

父が病気のため通院することになりました。私の扶養に入っていると「医療費」の自己負担限度額が増えるって本当ですか?
生計を維持していたり親の収入が少なかったりといった理由で、親を自身の健康保険の扶養に入れる場合もあるでしょう。もし、親が扶養に入っている状態で高額療養費制度を利用する場合、自己負担限度額が高くなる可能性があるようです。
 
今回は、健康保険における扶養の条件や、親が健康保険の被扶養者のときに、高額療養費制度を利用する際の自己負担限度額の基準などについてご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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所得税法の扶養と健康保険の扶養は異なる

扶養に入れた親の保険について考えるときは、所得税法上の扶養と健康保険での扶養は条件が異なり、扱いも別になる点に注意が必要です。
 
国税庁によると、以下の条件すべてに当てはまっていれば、親は所得税法上の扶養親族として扱われます。


・配偶者以外の親族または都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人であること
・納税者本人と生計を一にしていること
・年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと

一方、健康保険の扶養条件は、保険加入者の状況などによって異なります。全国健康保険協会の場合だと、扶養と判断される条件は以下のいずれかです。


・被保険者の直系尊属、配偶者、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている場合

・被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
(1)被保険者の三親等以内の親族
(2)被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
(3)(2)の配偶者が亡くなった後における父母および子

さらに、収入条件も所得税法上とは異なっており、同一世帯なら年収130万円未満(被扶養者が60歳以上か障害厚生年金を受けられる程度の障害の持ち主なら180万円未満)かつ本人の年収の半額以下であることです。
 
世帯が異なる場合は、年収130万円未満(被扶養者が60歳以上かおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害の持ち主なら180万円未満)かつ被保険者からの援助による収入額よりも少なければ被扶養者と判断されます。
 
それぞれ条件が異なるため、所得税法上の扶養に入っていても健康保険では扶養に入れないケースや、その逆のケースもあり得ます。所得税法上の扶養には入れたからといって必ずしも健康保険の扶養には入れるとは限らないでしょう。
 

親が健康保険の扶養に入っているときの高額療養費制度

高額療養費制度とは、一定基準以上の医療費を支払った場合に、自己負担限度額を超えた金額をあとから払い戻してもらえる制度です。自己負担限度額は、被保険者の所得によって決まります。
 
被扶養者に親がいると、親の収入が低かったとしても被保険者である子どもの所得を基に判断されます。被保険者が70歳未満の場合における限度額は表1の通りです。なお、報酬月額は給与を基に計算されます。
 
表1

所得 自己負担限度額
・標準報酬月額83万円以上
・報酬月額81万円以上
25万2600円+(総医療費-84万2000円)×1%
・標準報酬月額53万~79万円
・報酬月額51万5000円以上~81万円未満
16万7400円+(総医療費-55万8000円)×1%
・標準報酬月額28万~50万円
・報酬月額27万円以上~51万5000円未満
8万100円+(総医療費-26万7000円)×1%
・標準報酬月額26万円以下
・報酬月額27万円未満
5万7600円
・被保険者が市区町村民税の非課税者など 3万5400円

出典:全国健康保険協会 協会けんぽ「高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)」を基に筆者作成
 
収入が高ければ限度額も高くなるため、負担額も多くなるでしょう。もし、親が病気になったり通院が必要になったりしたときは、親と健康保険を別にすると、親の収入を基に決められるため自己負担額も減ります。
 
そのため、親の医療費を負担する際は、被扶養者から外れてもらうことも自己負担額を軽くするための方法の一つです。
 
例えば、子どもの標準報酬月額が30万円で総医療費が100万円だったとすると、自己負担限度額は8万7430円になります。しかし、親が個人で健康保険に加入しており、収入が月額20万円の年金のみだったと仮定しましょう。
 
この場合、父親の自己負担限度額は5万7600円です。子どもの扶養に入っていた方が、自己負担限度額は2万9830円高くなります。
 

自己負担額を減らしたいなら健康保険だけ別にすることも選択肢の一つ

親が健康保険上で自分の扶養に入っていると、高額療養費制度の自己負担限度額は自身の所得を基に決められます。所得が多いほど高くなるため、自分が親の医療費を負担している場合は負担額も多くなるでしょう。
 
自己負担限度額を低くするためには、親に扶養から外れて、別の健康保険に加入してもらう方法があります。親が通院になったときは、扶養から外れられないか相談してみましょう。
 

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)No.1180 扶養控除
全国健康保険協会 協会けんぽ 被扶養者とは?
全国健康保険協会 協会けんぽ 高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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