子どもがアルバイト先で「年収103万円を超えないほうがいい」と注意されたそう。いわゆる「103万円の壁」のことだと思いますが、関係するのは“配偶者”だけではないの? 税金への影響も解説

配信日: 2024.12.20

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子どもがアルバイト先で「年収103万円を超えないほうがいい」と注意されたそう。いわゆる「103万円の壁」のことだと思いますが、関係するのは“配偶者”だけではないの? 税金への影響も解説
「年収103万円の壁」の引き上げが政府でも本格的に議論され始め、この言葉を耳にする機会も多くなってきました。
 
そもそも103万円の壁は、所得税の支払いが発生する基準となる年収として注目されますが、実は別の基準に関しても重要なラインであることを知っていますか?
 
本記事では、103万円の壁を超えたときに発生する影響について解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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103万円の壁の1つ目の意味は所得税の支払いが発生するかどうか

103万円の壁の1つ目の意味は、所得税の支払いが発生し始める年収額であるという点です。一般的にはこちらの意味で103万円の壁という言葉が使われます。
 
103万円から所得税の支払いが発生する理由は、所得を算出するときに給与から差し引く控除が関係しています。給与所得者には次の2つの控除が認められています。


・基礎控除:48万円
・給与所得控除:55万円

給与が基礎控除と給与所得控除の合計額である103万円を超えると、その超えた部分に対して所得税が課税される仕組みです。
 

103万円の壁のもう1つの意味は扶養親族から外れるかどうか

103万円の壁のもう1つの意味は、扶養親族から外れる年収額であるという点です。「扶養」と聞くと配偶者の収入についての壁を思い浮かべるかもしれませんが、子どもなどの扶養親族についても103万円の壁は無関係な話ではありません。
 
扶養親族の判定は、次の要件に12月31日時点で全て当てはまるかどうかで判断されます。


・配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人であること
・納税者と生計を一にしていること
・年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと
・白色申告者の事業専従者でないこと

国内に住む扶養親族が16歳以上である場合、扶養する給与所得者には扶養控除が認められますが、上記の要件から外れると扶養控除が使えなくなります。
 
例えば、アルバイトをしている子どもの年収が103万円を超え、扶養親族から外れるケースなどが考えられます。子どもの年収は増えますが、結果的に親の納めるべき税金が増える可能性があり注意が必要です。
 

特定扶養控除が使えなくなるといくら税金が上がる?

扶養控除が使えなくなることによる税金への影響額を計算してみましょう。扶養控除の中でも、扶養親族が19歳から23歳である場合は特定扶養控除が適用され、扶養する給与所得者は63万円の所得控除が受けられます。
 
例えば、この特定扶養控除が適用されなくなった場合について試算すると、課税される所得額が330万円~694万9000円までの場合、所得税の税率は20%となるため、特定扶養控除が使えないことによる影響額は63万円×20%=12万6000円となります。
 
子どもの収入が103万円を少し超えるくらいでとどまってしまうのであれば、子どもの収入を103万円以内に調整して特定扶養控除を利用したほうが、世帯としては得をするケースもあります。家族全体の収入を見るときには、子どもがどのくらい稼ぐ予定なのかも考えましょう。
 

103万円の壁は扶養控除にも影響が出る場合があることに注意しよう

103万円の壁には、所得税の支払いが発生する年収であるという側面と、扶養親族から外れる年収であるという側面の両方があります。扶養親族から外れると、扶養する給与所得者が適用を受けている扶養控除が使えなくなる可能性がある点に注意しましょう。
 
子どものアルバイト代が103万円を超えるとき、給与額によっては扶養控除が利用できなくなるマイナスの影響の方が大きいこともあり得ます。家族全体で最も所得を増やそうと考えるのであれば、総合的に見て判断しましょう。
 

出典

厚生労働省 『年収の壁について知ろう』
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.2260 所得税の税率
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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