これまで住んだ家を売って新しい家を買う予定なのですが、家を売る際に「損失」が出そうです。譲渡損失は仕方のないことでしょうか?
配信日: 2024.12.22
執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)
高度年金・将来設計コンサルタント
1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。
人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。
マイホームを買い換えた場合の「譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」
新たにマイホーム(新居宅)を購入した場合に、売ったマイホーム(旧居宅)の譲渡による損失(譲渡損失)が生じたときは、その損失をその年の所得から控除できます(損益通算といいます)。さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった損失は、3 年以内に繰り越して控除ができます(繰越控除といいます)。
この特例の適用期限は令和5年12月31日まででしたが、2年間延長され、令和7年12月31日までとなっています。
特例の適用を受けるための要件
売るマイホームの条件と買うマイホーム条件の両方を満たしている必要があります。
(1) 売るマイホーム(旧居宅)の要件
マイホームを売った年の1月1日において、所有期間が5年を超えて、かつ以下のイからニに該当する場合
イ:現に自分が住んでいる家屋や敷地
ロ:以前に住んでいた家屋や敷地
ハ:上記イまたはロの家屋を取り壊した場合の家屋およびその敷地でも該当する場合があります
ニ:家屋が災害により滅失した場合も該当する場合があります
(2) 買うマイホーム(新居宅)の要件
イ:譲渡の年の前年の1月1日から売却の年の翌年12月31日までの間にマイホーム(日本国内)で床面積が50平方メートル以上のものを取得すること
ロ:マイホームを取得した年の翌年12月31日までの間にそこに住むこと(見込みも可)
ハ:マイホームを取得した年の12月31日に、償還期間10年以上の住宅ローンがあること
特例の適用除外
以下の場合は、この特例が適用できないので注意してください。
(1) 損益通算および繰越控除の両方が適用できない場合
A:売ったマイホーム(旧居宅)の売主と買主が親子や夫婦などの場合
B:売ったマイホーム(旧居宅)を売却した年の前年、および前々年に次の特例を適用している場合
・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例
・居住用財産の譲渡所得の3000万円の特別控除 など
(2) 繰越控除が適用できない場合
A:売ったマイホーム(旧居宅)の敷地面積が500平方メートルを超える場合
B:繰越控除を適用する年の12月31日において、買うマイホーム(新居宅)に10年以上の住宅ローンがない場合
C:合計所得金額が3000万円を超える場合(収入ではありません)
なお、この特例と住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)は併用できます。
手続き
(1) 損益通算の場合
確定申告書に次の書類を添付する必要があります。
・「居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)」
・「居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の対象となる金額の計算書」
・旧居宅に関する書類
・新居宅に関する書類
(2) 繰越控除の適用を受ける場合
次のことが必要です。
・損益通算の適用を受けた年の、上記(1)の書類の添付された期限内申告書を提出していること
・損益通算の適用を受けた翌年から繰越控除を適用する年まで、連続して確定申告書を提出すること
・住宅ローンの残高証明書を添付すること。
詳細な条件については、国税庁ホームページの「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例)」を参照してください。
不動産の譲渡は、譲渡益が出るときもあれば、譲渡損失が出ることもあります。双方の特例をしっかり理解していることが大事です。
出典
国税庁 No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント