「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」を同時に併用できないって本当? どちらを利用したほうがいいの?

配信日: 2024.12.30

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「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」を同時に併用できないって本当? どちらを利用したほうがいいの?
医療費控除とセルフメディケーション税制とは同時に適用することはできず、どちらか一つを選択する必要があります。
 
本記事では、医療費控除とセルフメディケーション税制について説明します。
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。

現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。

ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。

FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。

2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。

現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。

早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。

サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

医療費控除と確定申告における注意事項

1. 医療費控除の概要

医療費控除は、納税者が1年間に支払った医療費が一定の金額を超えた場合に受けられる所得控除です。医療費は、納税者本人やその配偶者、扶養家族など生計を一にするものが病院・診療所に支払った診療費や、医薬品の購入費などが対象となります。
 

2. 控除額の計算

医療費控除の金額は、以下の計算式で求められます。
 
医療費控除額 = 実際に支払った医療費 - 保険などで補てんされた金額 - 10万円(または総所得金額の5%、どちらか少ないほう)
※ただし、控除額の上限は200万円です。
 

3. 対象となる医療費の例

診療費、入院費、治療のための薬代
通院のための交通費(バスや電車、タクシーの費用)
一定の介護サービスの利用費用など
 

4. 確定申告の注意事項

(1)領収書の提出が不要:以前は領収書の提出が求められましたが、現在は不要です。ただし、医療費の明細書を作成し、5年間保管する必要があります。
(2)補てん金の計上:保険金や高額療養費制度で補てんされた金額は差し引いて計算することが重要です。
(3)適用範囲の確認:対象となる医療費と対象外の医療費(予防接種や美容整形など)を区別し、対象の費用のみを計上することが必要です。
 

セルフメディケーション税制と確定申告における注意事項

1. セルフメディケーション税制の概要

セルフメディケーション税制は、健康の維持や予防のために特定の市販薬を購入した場合に、その費用が控除対象となる制度です。健康診断や予防接種などの取り組みを行っている人が、特定の一般用医薬品購入費用について控除を受けることができます。
 

2. 控除額の計算

セルフメディケーション税制での控除額は以下のように計算します。
 
控除額 = 対象医薬品の購入金額 - 1万2000円(上限8万8000円)
 

3. 対象となる医薬品

薬局やドラッグストアで購入できるスイッチOTC医薬品(処方箋なしで購入可能)などが対象です。対象の医薬品はパッケージに「セルフメディケーション税制対象」などの記載があり、健康保険適用外の一般薬のみが対象です。
 

4.確定申告の注意事項

(1)証明書類の提出:セルフメディケーション税制を利用するには、医薬品の購入金額の明細書と、健康診断や予防接種の受診を証明する書類が必要です。
(2)医療費控除との併用不可:医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できません。どちらか有利なほうを選択して申告します。
(3)保管期間の確認:明細書や証明書類の保存期間は5年間で、税務署から求められた場合に応じられるように、備えておく必要があります。
 

まとめ

医療費控除は年間の医療費が10万円(または総所得の5%)を超える場合に申請でき、入院費や通院費も対象となります。
 
セルフメディケーション税制は、日常的に使う市販薬の購入費用に焦点をあてた制度で、1万2000円を超える購入費用が控除対象です。一般的にいうと入院費、通院費が大きい人は医療費控除を、薬のみで医療費の少ない人はセルフメディケーション税制を選択したほうが控除額は大きくなります。
 
申請時は各控除の条件を満たしているか、必要書類がそろっているかを確認し、控除額が多くなるほうを選択することがポイントです。
 

出典

国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費
国税庁 No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

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